猫ちゃんの異世界、旅日記。

椿姫哀翔

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ロング帝国 ルーク

5話

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「あの、オークとハイオークとブラックベアの子供のお肉はぼくが持って帰ります。」
「え!?ぜ、全部か…?」
「いえ、オークとハイオークは、1体の4分の1ぐらいのお肉で大丈夫です。ブラックベアの子供は小さいので半分ください。あと、子供のブラックベアの毛皮もください。1体分でお願いします。」
「分かった。明日来た時に金と一緒に渡すな。」
「はい、お願いします。」

ハルは、ライオットに自分の欲しい分を伝えて、ハドソンと解体作業場を後にした。


「さて、宿に行くか。」
「はい、お願いします。」

ハルとハドソンは、ギルドを出て、5分ほど歩いた場所にある宿に行った。

「ここが、カリン亭だ。」
「可愛い…。ありがとうございます。」

カリン亭は、ギルドの前の道を真っ直ぐ町中の方に進んで行くとあった。
木造で出来ていて、屋根はブラウン、壁はクリーム色だった。

「こんにちは。」
「え、ハドソンさん?」
「ほら、来い。」
「あら、いらっしゃい。」
「こんにちは、お久しぶりです。」
「あらー、ハドソンさんじゃないの。久しぶりねー。今日は、どうしたの?」
「はい、こいつに宿を紹介しようと思いまして。」
「この子?」
「はい。」

ハドソンは、ハルを連れて中に入り、宿の女将に声を掛けた。
女将は、紹介してもらったハルを見て、首を傾げた。

「申し訳ないけど、この子、まだ冒険者になれないでしょ。そんな子がここにいたら他の冒険者に色々言われるわよ。」
「ハル、自己紹介して。」

困った顔で女将が言うのを聞いてハドソンはハルに自己紹介するようにと声を掛けた。

「はい。
初めまして、ハルと言います。数日前に13歳になりまして、先程冒険者登録をしてきました。今はFランクです。これ、ギルドカードです。」

ハルは、しっかり女将の目を見て自己紹介をして、ギルドカードを見せた。

「あら、まあ!そうだったのね。ごめんなさいね、確認もしないで見た目で判断してしまって…。」
「いえ。女将さんは、ぼくの心配をしてくれただけなんですから大丈夫ですよ。」
「そう言ってくれるとありがたいわ。」
「あの、お部屋空いてますか?」
「ええ、空いてるわよ。」
「でしたら、1部屋貸してください。」
「もちろん。良いわよ!」
「ありがとうございます。あ、あの、」
「なにかしら?」
「ぼく、家族と旅してるんですけど、家族も一緒でもいいですか?猫ちゃんなんですけど……。」
「猫?」
「はい、この子です。」

ハルは、お店の中に入るためにアキをリュックに入れていたので、リュックから出して女将に会わせた。

「この子がぼくの家族で、アキちゃんと言います。」
「にゃー」
「あら、可愛い。そうなのね。」
「動物を宿に入れるのはダメですか…?」
「大丈夫よ。」
「え、本当ですか!?」
「ええ、テイマーの子もテイムしている魔獣と一緒にこの宿に居るからハル君もアキちゃんと一緒で良いわよ。」
「ありがとうございます!」
「鳴き声が凄かったり、おトイレ覚えてなかったりするかしら?」
「いえ、ぼくと話す時に鳴き声をあげることはありますけど、むやみやたらに鳴くことは無いです。おトイレも覚えています。」
「そう。なら、3階の部屋でも大丈夫そうね。3階は1人部屋だから、同室の人に気を使うとか無くて良いでしょうから。」
「はい、お願いします。」
「そう。じゃあ、アキちゃんを部屋から出して食堂に来る際は、首輪をしっかりして、離れないように紐で繋いどいてね。」
「え、紐で繋ぐんですか?」
「そう、ハル君とアキちゃんの為よ。食堂には酔っ払いが沢山居るから絡まれたり、『こいつを寄越せ』とか言ってくるバカが居るかもしれないからね。」
「なるほど。分かりました。」
「そしたら、3階の1番手前の308号室を使って。」
「ありがとうございます。」
「素泊まりは1泊、2,300フィスで、朝食と昼食かお弁当が付くと1泊3,000フィスだよ。」
「分かりました。とりあえず、食事付きで2週間分お願いします。」
「了解。じゃあ、42,000フィスだよ。」
「はい。これで。」
「ちょうどだね。ありがとう。
はい、鍵ね。無くすと金貨1枚払って貰うからね。」
「分かりました。無くさずに持ちます。」

ハルは、きちんと説明を聞き、金貨4枚と銀貨2枚を女将に渡した。

「改めて、よろしくお願いします。」
「こちらこそよろしく。私は、女将のモリーよ。旦那がライル。食堂で食事を作ってるわ。あと、娘のルーシーが居るわ。明日の朝にでも挨拶出来ると思うわ。」
「はい、よろしくお願いします。」
「食堂、朝は6時から9時まで空いていて、お昼は12時から15時まで空いていて、夜は、18時から23時まで空いてるからその間にごはん食べに来てね。」
「はい、分かりました。」

「ハドソンさん、ここまで色々ありがとうございました。」
「いやいや。またな!」
「はい、また。」

ハルは宿がちゃんととれるか見守っててくれたハドソンに向かってお辞儀をして感謝を伝えた。
ハドソンはそのままハルに手を振って帰って行った。

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