猫ちゃんの異世界、旅日記。

椿姫哀翔

文字の大きさ
上 下
58 / 89
ロング帝国 ルーク

4話

しおりを挟む


「あ、」
「どうかしたか?」
「あ、いえ…。」

防音室を出た後、急にハルが声をあげた。

「なにかやり忘れたことでも思い出したか?」
「はい、」
「なんだ?」
「あの、魔獣の買い取りとかって、出来ますよね?」
「あぁ、出来るな。」
「お願いしたかったんですよね。」
「ちなみに、森で狩ったやつか?」
「はい。他にもありますけど。」
「………、悪いが、部屋に戻ってもいいか?」
「へ?」
「あまり知られない方が良いかなと思ったんだが。」
「そうですね。お願いします。」

ハルとハドソンは、防音室に戻って行った。

〔ハル、大丈夫なの?〕
〔なにが?〕
〔あの部屋、隠れてるの居るでしょ?〕
〔もう、居ないよ。〕
〔え、ウソ?〕
〔ホント。上に報告するのに出てったっぽいから引き返そうと思ったの。〕
〔へー。〕
〔アキちゃんが気付かないとか珍しいね。〕
〔ずっとハルに抱っこされて、撫でられてたから、周りに気を張るのを一切止めてた。
ハルがしてたし、私は、ハルのなでなでに全力で挑もうと思ってね。〕
〔なるほど。それで、ぼくのなでなではどうでしたか?〕
〔今までで1番気持ちよかった!〕
〔なら、良かった…。〕

コンコン

防音室に戻ってきた2人は、ハドソンがドアをノックして、中に入っていった。

「ローガン、もうひとつ仕事だ。」
「ハドソン…?なんだ?」
「ハルが買い取りをお願いしたいって。」
「買い取り?」
「はい。魔獣の買い取りなんですけど。」
「じゃあ、クエスト消費も一緒にして処理するか…。」
「いいんですか?クエスト受けてないですけど…。」
「あぁ。クエストやってる時に、違う魔獣を倒したり、薬草などを集めたりした場合、クエストがあればクエストしたことにして処理する事が出来るからそれと同じ感じでやるよ。」
「ありがとうございます。」
「で、どのくらいある?」
「そうですね、ゴブリンの耳とオーク、ブラックベアですかね。」
「「はぁ?」」
「ん?」
「いやいやいや、ちょっと、まて、」
「なんでしょうか?」
「ゴブリンの耳は分かるよ。その辺にうじゃうじゃ居るからな。でも、オーク、特にブラックベアは、魔の森じゃないと居ないぞ。」
「そうですね。」
「そうですね。じゃない!なんで!?」
「なんで?魔の森で倒したからです。」
「なんで、魔の森に居たんだ?」
「親に、出稼ぎに行ってこいって言われて入れられた森が皆さんが言う魔の森って所だったからですね。」
「………。」
「ローガン、早く処理してやれ。宿とれなくなっちまう。」
「……。分かった。こっちに来てくれ。」

ローガンは、放心状態のまま、防音室を出て、1階に降りて、解体場にハルとハドソンを連れてきた。

解体作業場は、かなり広いスペースの部屋だった。
小型魔獣を解体するための台が水道付きで6台置いてあり、中型魔獣を解体するための台も水道付きで4台ある。
大型魔獣は、床にシートを敷いて解体をするために、だだっ広い空間がある。近くに水道もある。

「ローガン?どうした?」

解体作業場の責任者であるライオットが未だ呆然としているローガンを気にかけて声を掛けてきた。

「ライオットさん、お久しぶりです。」
「おぉ、ハドソンか。どうした?」
「はい、この子、今日ギルドに登録したんですけど、この町に来る前に通った森で魔獣を倒したそうなので、買い取りをお願いされたので、此処に来たんです。」
「そうか。よろしくな、俺はライオット。」
「はじめまして、ハルと言います。この子はアキちゃんです。」

ハルは、ハドソンの後ろに隠れるようにして居たが、ライオットに挨拶をされたため、1歩前に出て、アキを抱っこして、挨拶をした。

「で、倒した魔獣は?」
「はい、今出します。大きいので、あっちの広い所で良いですか?」
「あぁ…。」

ライオットは、言われた通りに大型魔獣を解体する場所にハルを連れて来た。

「今、シート敷くから待ってろ。」

清潔なシートを敷いて、準備が出来た。

「いいぞ。」
「はい。」

ハルは、ゴブリンの耳を全てとオーク2体、ハイオーク1体、ブラックベアの大人1体、子供3体を出した。

「お願いします。血抜きだけはしてあります。」

「「「…………」」」

目の前でハルのマジックバックから出てくる魔獣を見て、ハドソンもローガンもライオットも口をあんぐりと開け、呆然と見ていた。
何事かと仕事の手を止めて見ていた他の職員も目を点にして口をあんぐりと開けている。

「あのー……。」

「「「………」」」

「すぅー、あのっ!!」

ビクッ

3人は、ハルの大声にびっくりして、ようやく現実に戻ってきた。

「血抜きはしてあるのでお願いします。」
「あ、あぁ…、分かった…。」
「ハル、こんだけあるとなると、料金は後日でも良いか?」
「後日ですか?」
「あぁ。この札を渡しとくから明日には用意出来ると思うから、また明日来てくれ。」
「分かりました。お願いします。」

しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

RD令嬢のまかないごはん

雨愁軒経
ファンタジー
辺境都市ケレスの片隅で食堂を営む少女・エリカ――またの名を、小日向絵梨花。 都市を治める伯爵家の令嬢として転生していた彼女だったが、性に合わないという理由で家を飛び出し、野望のために突き進んでいた。 そんなある日、家が勝手に決めた婚約の報せが届く。 相手は、最近ケレスに移住してきてシアリーズ家の預かりとなった子爵・ヒース。 彼は呪われているために追放されたという噂で有名だった。 礼儀として一度は会っておこうとヒースの下を訪れたエリカは、そこで彼の『呪い』の正体に気が付いた。 「――たとえ天が見放しても、私は絶対に見放さないわ」 元管理栄養士の伯爵令嬢は、今日も誰かの笑顔のためにフライパンを握る。 大さじの願いに、夢と希望をひとつまみ。お悩み解決異世界ごはんファンタジー!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。 そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は? *カクヨム様で先行掲載しております

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

悪役令嬢は始祖竜の母となる

葉柚
ファンタジー
にゃんこ大好きな私はいつの間にか乙女ゲームの世界に転生していたようです。 しかも、なんと悪役令嬢として転生してしまったようです。 どうせ転生するのであればモブがよかったです。 この乙女ゲームでは精霊の卵を育てる必要があるんですが・・・。 精霊の卵が孵ったら悪役令嬢役の私は死んでしまうではないですか。 だって、悪役令嬢が育てた卵からは邪竜が孵るんですよ・・・? あれ? そう言えば邪竜が孵ったら、世界の人口が1/3まで減るんでした。 邪竜が生まれてこないようにするにはどうしたらいいんでしょう!?

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

処理中です...