猫ちゃんの異世界、旅日記。

椿姫哀翔

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ロング帝国 ルーク

3話

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「悪い、待たせた。」

お茶を持ってるくのに20分程掛かったローガンは、3人分のお茶をそれぞれに出してくれた。

「おせーよ。」
「すまない。ちょっと捕まっちまって。」
「はぁ、まあ良い。」

ローガンは、ハルの向かいにあるソファに座った。

「で、防音室なんて用意してなに話すんだ?」
「まずは、冒険者の説明をしてやれ。そのあとで話す。」
「分かった。」

ハドソンと話してたローガンは、視線をハルに移し、話し始めた。

「まず、冒険者にはランクがある。」
「ランクですか?」
「あぁ。1番上がSランクでその次がAランク。1番下がFランクだ。
ハルは、登録したばかりだから、Fランクになる。
ランクによって、ギルドカードの色も変わる。」
「色?」
「あぁ。ハルのFランクとEランクはブロンズ、CランクとDランクはシルバー、AランクとBランクはゴールド、Sランクはブラックだ。」
「分かりました。」
「ちなみに、ギルドカードを無くすと再発行に金貨3枚掛かるから気を付けろ。無くすなよ。あと、カードにお金入れとけるから。」
「分かりました。
ん?お金入れとける…?」
「あぁ。クエスト成功の報酬なんかをカードにしまえるんだ。」
「しまえる…?」
「ちょっと違うけど、そんな感じって思っとけ。」
「はぁ、分かりました。」
「それじゃ、しばらくはFランクだと思うからFランクの説明をするぞ。」
「はい。」
「Fランクは、冒険者になりたてのペーペーの新人だから、出来るクエストも薬草採取や弱い魔獣の討伐ぐらいだ。」
「そうなんですね。ちなみに、ランクがあがるにはどうすれば良いんですか?」
「Cランクまでは、クエストをこなしていけばなれる。Bランクから上は、試験がある。」
「クエストをこなせば必ずCランクまではいけるんですか?」
「いや。適性があるか等の調査はギルドでやってる。」
「なるほど。Bランクになるための試験とは?」
「ギルド職員と戦ったり、出されたクエストをこなせばなれる。」
「分かりました。」
「こんなとこか。あとなんか聞きたいことあるか?」
「宿ってどこか良いところありますか?」
「宿か…。そうだな…。」
「あそこはどうだ?」
「ん?」
「カリン亭」
「そうだな。あそこなら良いだろう。」
「カリン亭…。」
「あぁ。家族で経営している宿だ。皆優しいし、あそこの夫婦に今の冒険者は育てられたようなもんだから、なにかあればご夫婦に話せばなんとかなるぞ。」
「そんなに凄い人達なんですか?」
「カリン亭は、宿だけじゃなく食堂もやってるんだ。」
「食堂…。」
「あぁ。ほとんどの冒険者はあそこでメシを食ってる。」
「なるほど。」
「女将さんを怒らせると肉が食えなくなったりするからな。」
「え、そうなんですか?」
「あぁ。この町のギルドが他の町と比べて騒がしくないだろ?」
「さあ?」
「知らないのか!?」
「はい。冒険者ギルドなんて、今日初めて入りましたから。」
「いや、だとしても、なんとなくの雰囲気は分かるだろ!」
「いえ…。」
「おい、ハドソン、どーゆーことだ!」
「いや、俺に聞かれても…。」
「おい、ハル!なんで、知らないんだ!」
「そんな事言われても、ぼくが住んでた所には無かったですから。」
「そんな訳…」
「落ち着け、ローガン。」
「これが落ち着いてられるか!」
「落ち着いけくれないと、ハルがもう二度とこの冒険者ギルドに来なくなるぞ。」
「はぁ?そんな訳っ!」

ハルは、大声で怒鳴るローガンに無意識で震えて身体を固くしてた。
アキを膝に載せてるところから、ローガンが怒鳴り出してからアキの顔を自分に向かせ、ぎゅーっと抱き締めている。
ハドソンに指摘されて初めてハルを気にかけて、ようやくハルの状態を確認した。

「っ、す、すまん!」
「っ、いえ、」

ローガンは、固まってるハルを見て思いっきり頭を下げて謝った。
それすらも恐怖なのか未だ身体から力が抜けない。

「ハル、深呼吸してみな。」
「はい、すぅーー、はぁーー、すぅーー、はぁーー」
〔ハル、大丈夫?〕
〔ごめんね、アキちゃん。痛くなかった?〕
〔全然大丈夫だけど、ハルは大丈夫?〕
〔うん、少し落ち着いた。アキちゃんが声掛けてくれて良かった…。〕
〔どうした?〕
〔……、うん…、〕
〔言いたくなければ言わなくても良いよ。言ってラクになるなら言って。〕
〔………、うん、ぼくを魔の森で見つけた時、ボロボロだったでしょ?〕
〔うん。〕
〔森に連れてかれた衛兵に殴られたりしたんだけど、その人とあのローガンさんが凄く似てるの……。〕
〔彼本人じゃなくて?〕
〔うん。あんなにムキムキじゃなかったし、顔に傷も無かった。〕
〔そっか〕

「ハル、落ち着いたか?」

深呼吸していたハルは、急に深呼吸を止め、アキの顔に自分の顔を当ててキツく抱き締めていた。

「あ、はい、もう、大丈夫です。」
「ホントか!?」
「っ、」
「おい、ローガン。」
「わ、わりぃ…。」
「いえ…、」
「ハル、落ち着いたなら、手続きしちゃうか?」
「手続き…」
「ローガン居て、落ち着かないなら出てってもらうが?」
「え、でも、職員が居ないといけないからローガンさんが居るんじゃ…。」
「そうだ。だが、そんな状態じゃ、ちゃんと手続き出来ないだろ。違う職員に変わってもらうかって。」
「いえ、大丈夫です。手続き、すぐ終わりますよね?」
「あぁ。」
「なら、大丈夫です。」
「そうか。なら、このまましちゃうね。」
「はい、お願いします。」

ハドソンは、門からずっと持ってた鞄から、2枚の紙と魔道具を取り出した。

「ローガン、立会人として見とけ。」
「分かった。なにするんだ?」
「ハルに、指名手配犯を捕まえてもらったからその報酬を払う。」
「え、指名手配犯…?」
「あぁ。」
「どうやって、捕まえた…?」
「寝込み襲われそうなところを油断させて攻撃したらしい。」
「………、マジか……。」

ハドソンは、ローガンに説明をしながら魔道具に指名手配書を乗せて処理を始めた。

「ハル、さっき貰ったギルドカード貸してくれ。」
「はい。」
「っ、え!?」
「なんだ?」
「捕まえたのって、」
「あぁ。ヨハンとマルコだ。」
「ウソだろ…。」
「ホントだ。」

魔道具の上に並べられた指名手配書を見て、ローガンの口が塞がらなくなった。

指名手配犯のヨハンとマルコは、最上級犯罪者として、極悪人として指名手配されていた。
2人に掛けられていた懸賞金は、1人、5,000,000フィスである。

1フィス=1円
銅貨1枚=100フィス
銀貨1枚=1,000フィス
金貨1枚=10,000フィス

それぞれ、10枚で上の硬貨に両替出来る。

その間、ハドソンは指名手配書の上にハルのギルドカードを置いて魔力を流し、報酬、金貨1,000枚をハルのギルドカードに入れた。

「はい、出来たぞ。」
「ありがとうございます。」
「ギルドカードは、本人にしか使えないから大丈夫だとは思うが、大金が入ってると周りに伝えるなよ。」
「はい。」
「それから、はい、これ。」
「え?」
「ギルドカード作ったら町に入るのに預かった銀貨を返すって言ってただろ。」
「あぁ。ありがとうございます。」

ハドソンは、ギルドカードと一緒に銀貨1枚を返してくれた。

「さて、帰るか。」
「はい。」
「カリン亭の場所まで連れてってやるよ。」
「そこまでは、」
「場所知らないだろ?」
「まぁ、」
「ほら、行くぞ。」
「はい。」

ハドソンは、呆然としているローガンを置いて部屋から出ていった。

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