57 / 89
ロング帝国 ルーク
3話
しおりを挟む「悪い、待たせた。」
お茶を持ってるくのに20分程掛かったローガンは、3人分のお茶をそれぞれに出してくれた。
「おせーよ。」
「すまない。ちょっと捕まっちまって。」
「はぁ、まあ良い。」
ローガンは、ハルの向かいにあるソファに座った。
「で、防音室なんて用意してなに話すんだ?」
「まずは、冒険者の説明をしてやれ。そのあとで話す。」
「分かった。」
ハドソンと話してたローガンは、視線をハルに移し、話し始めた。
「まず、冒険者にはランクがある。」
「ランクですか?」
「あぁ。1番上がSランクでその次がAランク。1番下がFランクだ。
ハルは、登録したばかりだから、Fランクになる。
ランクによって、ギルドカードの色も変わる。」
「色?」
「あぁ。ハルのFランクとEランクはブロンズ、CランクとDランクはシルバー、AランクとBランクはゴールド、Sランクはブラックだ。」
「分かりました。」
「ちなみに、ギルドカードを無くすと再発行に金貨3枚掛かるから気を付けろ。無くすなよ。あと、カードにお金入れとけるから。」
「分かりました。
ん?お金入れとける…?」
「あぁ。クエスト成功の報酬なんかをカードにしまえるんだ。」
「しまえる…?」
「ちょっと違うけど、そんな感じって思っとけ。」
「はぁ、分かりました。」
「それじゃ、しばらくはFランクだと思うからFランクの説明をするぞ。」
「はい。」
「Fランクは、冒険者になりたてのペーペーの新人だから、出来るクエストも薬草採取や弱い魔獣の討伐ぐらいだ。」
「そうなんですね。ちなみに、ランクがあがるにはどうすれば良いんですか?」
「Cランクまでは、クエストをこなしていけばなれる。Bランクから上は、試験がある。」
「クエストをこなせば必ずCランクまではいけるんですか?」
「いや。適性があるか等の調査はギルドでやってる。」
「なるほど。Bランクになるための試験とは?」
「ギルド職員と戦ったり、出されたクエストをこなせばなれる。」
「分かりました。」
「こんなとこか。あとなんか聞きたいことあるか?」
「宿ってどこか良いところありますか?」
「宿か…。そうだな…。」
「あそこはどうだ?」
「ん?」
「カリン亭」
「そうだな。あそこなら良いだろう。」
「カリン亭…。」
「あぁ。家族で経営している宿だ。皆優しいし、あそこの夫婦に今の冒険者は育てられたようなもんだから、なにかあればご夫婦に話せばなんとかなるぞ。」
「そんなに凄い人達なんですか?」
「カリン亭は、宿だけじゃなく食堂もやってるんだ。」
「食堂…。」
「あぁ。ほとんどの冒険者はあそこでメシを食ってる。」
「なるほど。」
「女将さんを怒らせると肉が食えなくなったりするからな。」
「え、そうなんですか?」
「あぁ。この町のギルドが他の町と比べて騒がしくないだろ?」
「さあ?」
「知らないのか!?」
「はい。冒険者ギルドなんて、今日初めて入りましたから。」
「いや、だとしても、なんとなくの雰囲気は分かるだろ!」
「いえ…。」
「おい、ハドソン、どーゆーことだ!」
「いや、俺に聞かれても…。」
「おい、ハル!なんで、知らないんだ!」
「そんな事言われても、ぼくが住んでた所には無かったですから。」
「そんな訳…」
「落ち着け、ローガン。」
「これが落ち着いてられるか!」
「落ち着いけくれないと、ハルがもう二度とこの冒険者ギルドに来なくなるぞ。」
「はぁ?そんな訳っ!」
ハルは、大声で怒鳴るローガンに無意識で震えて身体を固くしてた。
アキを膝に載せてるところから、ローガンが怒鳴り出してからアキの顔を自分に向かせ、ぎゅーっと抱き締めている。
ハドソンに指摘されて初めてハルを気にかけて、ようやくハルの状態を確認した。
「っ、す、すまん!」
「っ、いえ、」
ローガンは、固まってるハルを見て思いっきり頭を下げて謝った。
それすらも恐怖なのか未だ身体から力が抜けない。
「ハル、深呼吸してみな。」
「はい、すぅーー、はぁーー、すぅーー、はぁーー」
〔ハル、大丈夫?〕
〔ごめんね、アキちゃん。痛くなかった?〕
〔全然大丈夫だけど、ハルは大丈夫?〕
〔うん、少し落ち着いた。アキちゃんが声掛けてくれて良かった…。〕
〔どうした?〕
〔……、うん…、〕
〔言いたくなければ言わなくても良いよ。言ってラクになるなら言って。〕
〔………、うん、ぼくを魔の森で見つけた時、ボロボロだったでしょ?〕
〔うん。〕
〔森に連れてかれた衛兵に殴られたりしたんだけど、その人とあのローガンさんが凄く似てるの……。〕
〔彼本人じゃなくて?〕
〔うん。あんなにムキムキじゃなかったし、顔に傷も無かった。〕
〔そっか〕
「ハル、落ち着いたか?」
深呼吸していたハルは、急に深呼吸を止め、アキの顔に自分の顔を当ててキツく抱き締めていた。
「あ、はい、もう、大丈夫です。」
「ホントか!?」
「っ、」
「おい、ローガン。」
「わ、わりぃ…。」
「いえ…、」
「ハル、落ち着いたなら、手続きしちゃうか?」
「手続き…」
「ローガン居て、落ち着かないなら出てってもらうが?」
「え、でも、職員が居ないといけないからローガンさんが居るんじゃ…。」
「そうだ。だが、そんな状態じゃ、ちゃんと手続き出来ないだろ。違う職員に変わってもらうかって。」
「いえ、大丈夫です。手続き、すぐ終わりますよね?」
「あぁ。」
「なら、大丈夫です。」
「そうか。なら、このまましちゃうね。」
「はい、お願いします。」
ハドソンは、門からずっと持ってた鞄から、2枚の紙と魔道具を取り出した。
「ローガン、立会人として見とけ。」
「分かった。なにするんだ?」
「ハルに、指名手配犯を捕まえてもらったからその報酬を払う。」
「え、指名手配犯…?」
「あぁ。」
「どうやって、捕まえた…?」
「寝込み襲われそうなところを油断させて攻撃したらしい。」
「………、マジか……。」
ハドソンは、ローガンに説明をしながら魔道具に指名手配書を乗せて処理を始めた。
「ハル、さっき貰ったギルドカード貸してくれ。」
「はい。」
「っ、え!?」
「なんだ?」
「捕まえたのって、」
「あぁ。ヨハンとマルコだ。」
「ウソだろ…。」
「ホントだ。」
魔道具の上に並べられた指名手配書を見て、ローガンの口が塞がらなくなった。
指名手配犯のヨハンとマルコは、最上級犯罪者として、極悪人として指名手配されていた。
2人に掛けられていた懸賞金は、1人、5,000,000フィスである。
1フィス=1円
銅貨1枚=100フィス
銀貨1枚=1,000フィス
金貨1枚=10,000フィス
それぞれ、10枚で上の硬貨に両替出来る。
その間、ハドソンは指名手配書の上にハルのギルドカードを置いて魔力を流し、報酬、金貨1,000枚をハルのギルドカードに入れた。
「はい、出来たぞ。」
「ありがとうございます。」
「ギルドカードは、本人にしか使えないから大丈夫だとは思うが、大金が入ってると周りに伝えるなよ。」
「はい。」
「それから、はい、これ。」
「え?」
「ギルドカード作ったら町に入るのに預かった銀貨を返すって言ってただろ。」
「あぁ。ありがとうございます。」
ハドソンは、ギルドカードと一緒に銀貨1枚を返してくれた。
「さて、帰るか。」
「はい。」
「カリン亭の場所まで連れてってやるよ。」
「そこまでは、」
「場所知らないだろ?」
「まぁ、」
「ほら、行くぞ。」
「はい。」
ハドソンは、呆然としているローガンを置いて部屋から出ていった。
0
お気に入りに追加
262
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
RD令嬢のまかないごはん
雨愁軒経
ファンタジー
辺境都市ケレスの片隅で食堂を営む少女・エリカ――またの名を、小日向絵梨花。
都市を治める伯爵家の令嬢として転生していた彼女だったが、性に合わないという理由で家を飛び出し、野望のために突き進んでいた。
そんなある日、家が勝手に決めた婚約の報せが届く。
相手は、最近ケレスに移住してきてシアリーズ家の預かりとなった子爵・ヒース。
彼は呪われているために追放されたという噂で有名だった。
礼儀として一度は会っておこうとヒースの下を訪れたエリカは、そこで彼の『呪い』の正体に気が付いた。
「――たとえ天が見放しても、私は絶対に見放さないわ」
元管理栄養士の伯爵令嬢は、今日も誰かの笑顔のためにフライパンを握る。
大さじの願いに、夢と希望をひとつまみ。お悩み解決異世界ごはんファンタジー!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果
てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。
とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。
「とりあえずブラッシングさせてくれません?」
毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。
そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。
※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★
若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
悪役令嬢は始祖竜の母となる
葉柚
ファンタジー
にゃんこ大好きな私はいつの間にか乙女ゲームの世界に転生していたようです。
しかも、なんと悪役令嬢として転生してしまったようです。
どうせ転生するのであればモブがよかったです。
この乙女ゲームでは精霊の卵を育てる必要があるんですが・・・。
精霊の卵が孵ったら悪役令嬢役の私は死んでしまうではないですか。
だって、悪役令嬢が育てた卵からは邪竜が孵るんですよ・・・?
あれ?
そう言えば邪竜が孵ったら、世界の人口が1/3まで減るんでした。
邪竜が生まれてこないようにするにはどうしたらいいんでしょう!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる