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道中
5話
しおりを挟む「うーん、ねぇ、アキちゃん、」
「にゃう」
「町まではあとどのくらいだと思う?」
「にゃ」
「分からないかー。」
「分かるわけないだろ!馬鹿じゃねーのか!」
「おいっ!」
「じゃあ、貴方達には、分かるんですか?」
ハルは、アキに話し掛けながら歩いていた。
そんな事をしていると、血気盛んな男の方が食ってかかってくる。
もう1人の仲間が止めようとするが、イライラしてるからなのか全然止まらない。
「分かるに決まってるだろ!」
「じゃあ、あとどのくらいで着きますか?着く町の名前と一緒に教えてください。」
「町の名前は『ルーク』だ。日が沈む前には着くんじゃないか?」
「違っ!」
「へぇー、そうなんですね。じゃあ、間違ってたら、お仕置きしてあげますね。」
ハルは、もう1人の『違っ!』と言う言葉を聞いて、ニッコリと笑いながら伝えた。
「は?合ってるし。」
「間違ってたらですって。間違ってたら、貴方だけ、お仕置きです。」
「ちっ、めんどくせぇなー!わーったよ!」
「ふふっ、楽しみですねー。」
ハルはずっとニコニコしながら男達を見ていた。
「ねぇねぇ、アキちゃん、」
「にゃ」
「お仕置きなににしようかー?」
「?」
「ふふっ、わかんないか。」
そのニコニコの顔のままアキを見た。
(顔が怖い…。ニコニコしてるけど、全然目が笑ってない…。
夜、ゴブリン何体か連れて来てって言われて連れて行った後のあのお仕置きだけじゃ満足してないのかな…?)
アキは一瞬、身震いをした。
「っ、おい、間違ってるだろ!」
「は?合ってるだろ!」
「それは、俺たちの足の場合だ!ガキと猫が居るんだ、もっと時間掛かるだろ!」
「マジかよ…。」
「はっ、諦めてお仕置きを受けるんだな。」
「てめぇ、他人事だと思って!」
「だって、今回のお仕置きは、お前だけだって言ってたからな。俺は関係ない。」
「クソッ!」
男達は、小声でハルに聞こえないように言い争いをしていた。
ハルは、魔獣の気配などを知る為に、周りの音を聞き漏らさないように耳に魔力を少し流して良く聞こえるようにしているため、全て聞こえているが、後々面白くなりそうだからとそのまま放置した。
3時間程言い争いしながら、騒ぎながら、歩いていたが、急にハルが止まった。
「どうしたの?」
「うーん、」
「おい!早く行こうぜ!」
男は、お仕置きが嫌なのか、早く行こうとハルを急かす。
「どうか、したんですか…?」
「ん?うーん、貴方達は、どうですか?」
「「なにが?」」
「お腹空きません?」
「は?」
「ぼく、お腹空いちゃって…。」
「へ………?」
「てめぇ!いいから早く行くぞ!」
「もう無理ー。ここなら魔獣の気配しないから良いよね。アキちゃんも、喉乾いたよね?」
「にゃ?」
「よし、休憩にしよ。」
「はぁ?おい!」
「貴方達も座ってください。水はあげますから。」
「ありがとうございます。」
ハルは、道の脇に休憩出来そうな切り株を見つけて座った。
諦めてる男は、大人しく地面に座った。もう1人のうるさい男は文句を言いつつ、疲れてはいたのか、地面に座った。
鞄から、コップを3個とアキの水皿を出して、魔法で水を入れた。
「はい、どうぞー。」
「なうー。」
「ふふっ、アキちゃん凄い飲んでる。喉乾いたよねー。」
「にゃー」
「「は?」」
「おい、魔法の水って、飲めるのか…?」
「あぁ、飲めるには飲める。」
「でも、そんな事してるやつ居ないだろ!」
「そりゃ、魔法の水は不味いからな。それに、あの水出すのに少なからず魔力使うからな。だったら、戦闘に備えて魔力残して持ち歩いてる水か、どっかで川でも見つけて美味しい水を飲む方が確実だ。」
「だよな…。え、じゃあ、」
「あぁ、あのガキはおかしい。」
「かなりの魔力があるって事か?」
「多分な。」
「味覚もおかしいって事か?」
「多分な。」
「マジか…。」
「俺たちの縄にも多分だが、まだ魔力を流しているはずだしな、かなりの魔力は持ってるだろ。」
「……。」
男達は、ハルの異次元な動きに目を見開いて、小声で話し合っていた。
しかし、その声も全部ハルに聞こえている。
「飲まないんですか?」
「「ひっ、」」
「?」
「あ、あぁ、飲む。」
男達は、ビクビクしながらハルからもらった水を飲んだ。
「え、美味っ。」
「なんで?」
「なにがですか?」
「魔法の水は、飲めるけど不味いっていうのが世間の常識だ。けど、この水は、飲めるうえに美味い。」
「なんでだ!?」
「さぁ?」
ガサガサ
「なんだそれ?」
「ん?お腹すいちゃったんで、おやつです。」
パクッ
「んんー、美味っ!」
ハルは、鞄から出したアキに用意してもらったハンバーガーを包みから出して美味しそうに食べた。
それを、男達は、ヨダレを流しながら見ている。
男達は、昨日、夕飯を食べたあとからなにも食べていない。
「お、おい、ガキ!」
「なんでしょうか?」
「そ、それ!」
「それ?」
「その食ってるもん、俺によこせ!」
「何故ですか?」
「俺も腹減ってんだ!」
「そうでしょうね。だって、昨日いつ食べたか知りませんが、今日の朝、食べてませんもんね。」
「あぁ、だから、よこせ!」
「嫌です。」
「何故だ!?」
「なぜって、これはぼくのですし、貴方、自分の今の状況理解してないんですか?」
「は?関係ねーだろ!俺は腹が減ってんだ!いいから、よこせよ!」
「嫌です。」
パクパク、ゴックン
「ああっ!」
「お前、馬鹿じゃね?」
「はぁ?」
「今のこの状況であのガキがくれるわけないだろ。水だけでも貰えて良かったと思えよ。」
「うるせー!俺は、腹減ったんだ!」
「知らねーよ。騒ぐともっと空くから静かにしてれば。」
「はぁ?お前も減ってるだろ!」
「別に。」
ハルは、せっかくのアキお手製ハンバーガーをわーわー言われながら食べた為、イライラして眉間に皺を寄せている。
「うるさい。」
「だからっーーーーーー」
「え?なに?」
いきなり、騒いでいた男の声が聞こえなくなった。
「え、キミ?」
「なんでしょうか?」
「こいつになんかやったの?」
「うるさいかったので、静かにしてもらっただけですよ。」
「っ、」
「さて、休憩も終わりましたし、片付けて行きますか。」
「にゃー。」
「お、アキちゃんも、元気になったね。」
「にゃう。」
「よし、じゃあ、行こう。」
ハルは、片付けをして、歩き出した。
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