猫ちゃんの異世界、旅日記。

椿姫哀翔

文字の大きさ
上 下
47 / 89
道中

3話

しおりを挟む


ハルとアキが眠りに着いた真夜中。

「おいおい、あんな所に美味そうな獲物が居るぞ。」
「あぁ、あのガキ、ヤバい性癖のヤロー共に売っちまえばそれなりの金額になりそうだな。」
「あぁ…、こんな所で寝てなければ、クズ親父共にヤられないで済んだのになー。」
「な、てか、なんでこんな所に寝てんだ?」
「さー?親にでも捨てられて町に向かってる最中だったりしてな。」
「あははっ、それ、有り得るわ!」
「だろ!じゃあ、おねんねしてる間に、いただきますか。」
「おう!」

ハル達が寝ている場所から、300m程離れた場所から舌なめずりをしながらハル達を見ている男が2人。

「ひひひ、」
「うへへへ、」

コンッ

「あ?なんだ?」
「どうしたっ!」
「いや、この先に進めねーんだよ。」
「は?」
「ほら、お前も来てみろよ!」

ザザッ

コンッ

「ホントだ。なんでだ!」
「知らねーよ!」

男達は、ハルが寝ている木から50m程離れた場所で急に前に進めなくなった。

ザザッ
ガッ
ドゴッ

「おい、そんな音出すなよ!」
「じゃあ、どうしろってんだ!」
「そんなの、俺に聞くな!」

進めなくなった場所で2人の男は喧嘩をし始めた。

「んんっ…、」
「しっ、」
「なんだよ!」
「バカッ!あのガキ起きそうだぞ!」
「っ、」


「………。」


「「ハァー……。」」
「少し離れて、作戦立てるぞ。」
「あぁ、」

2人はハルを見つけた300m手前まで戻ってきた。

「で、どうする?」
「多分だが、あの見えない壁みたいのは、結界だな。」
「は?あのガキがそんな事出来るのか!?」
「いや、ガキの側に結界石があった。それだろう。」
「マジか!?」
「あぁ、多分な。」
「じゃあ、どうするんだ。」
「多分だが、木の後ろ側は、結界が薄いはずだ。そこを狙う。」
「ホントだな?」
「結界石は、50m四方を囲めるが、綻びがある場所があるんだ。そこを探して狙う。木の後ろ側が怪しい。」
「なるほど。それで行こう。」
「あぁ、なるべく静かにな。さっき起きそうだったから、眠りが浅いのかも。」
「ちっ、めんどくせぇな。」
「金の為だ。」
「わーってるよ!」

それから2人は、50m手前の結界が張ってある所まで戻ってきた。

「よし、この結界を触りながら裏側に回るぞ。」
「あぁ。逆方向に向かって、綻びが他にあるか探すか?」
「そうだな、それが良いだろう。じゃあ、別れるぞ。慎重にな。」
「あぁ、こいつは金だ。」
「そうだ。行くぞ。」
「おう。」

2人は、別れて結界を触りながら裏側に回った。

「………」
「………」

無言で慎重に結界を触りながら裏側まで来た。

「ちっ、他には綻び無かったな。」
「あぁ。だが、ココが弱いな。」
「あぁ。ちょっと何かはめればひと1人分は開くよな。」
「あぁ、やっぱり、裏側が弱かったな。」
「よし、何か差し込めそうなもの持ってるか。」
「ナイフで良いか?」
「あぁ、貸してくれ。」
「ほらよ。」
「サンキュ。」

木の後ろ側にあった結界の綻びにナイフを差して隙間を作った。

「よし、入れ。」
「おう。」

1人が中に入り、そのあとナイフをそいつが持ち、外に居たもう1人が中に入って来た。

「ふぅ、行くぞ」
「あぁ。」

2人は、使ったナイフをそのまま手に持ち、もう1人が鞄から出した麻袋を手にし、ハルに近づいて行った。

「はぁ、はぁ、」
「ひひ、はは、」

あと一歩でハルに手が届く時、

「はぁ、はぁ、」

サッ

「あぎっ」
「おい、変な声出してんな!」

1人が変な声を出し、もう1人が小声で怒った。

「ガキ、起きてねぇよな?」
「起きてますけど。」
「「っ!」」

ガッ!
ザザッ!
サッ
ザシュッ

「ぎゃあああ!」
「ふぅ、」

ハルは、男の手が届く寸前で目を開け、刀で手を伸ばしてた男の腕を軽く切り付けた。
目を覚ましてると教えてあげ、勢い任せに麻袋を被せてこようとしたもう1人の男も刀で腕を切り付けた。

「て、てめぇ、いつから、気付いてっ……!」
「『美味そうな獲物が居るぞ。』からですかね。」
「っ、さ、最初から気付いてっ!」
「えぇ、こちらから行くのは面倒臭いので来るのを待っていたんです。」
「ま、まさか、」
「ちなみに、結界の綻び作ったのぼくですから。」
「はっ!?結界石じゃないのかよ!?」
「えぇ、この石は、ただの飾りです。」
「かざり…。」
「えぇ、まんまと結界石だと勘違いしていただけて光栄です。」

ハルは、満面の笑みを男達に向けてネタばらしをした。
笑顔で、鞄から出した縄を使い、2人を締め上げた。

「っ、」
「っ、おい!痛てぇからもうちっと優しくしろや!」
「分かりました。では、選択肢をあげます。」
「選択肢…?」
「えぇ。朝になってから町に行こうと思うんですが、一緒に町に行って、門番さんに捕まえてもらうか。」
「てめぇ、ふざけたこと抜かしてんじゃねぇぞ!さっさとこの縄外せや!」
「もう1つは、貴方達が先程仰ってた、『ヤバい性癖のヤロー共』に売るのと、どちらが良いですか?」
「どっちも嫌に決まってんだろ!」
「そうですか。分かりました。」
「っ、逃がしてくれんのか!?」
「にゃー」
「ん?アキちゃん?どうしたの?」
「「「ギャギャギャ」」」
「っ、ゴブリンっ!」
「アキちゃん、そのゴブリン、どうしたの?」
「なーう」
「んー?」
「なうなうフシャー!」
「うーん…、あ、分かった、このゴブリン使って、この人達の事、お仕置きしよって事かな?」
「にゃー!」
「そっか、そっか、分かった。じゃあ、そうしようねー。」
「は?てめぇ、何言ってんだ、ああん!」
「あ、あの、お、俺は、門番に引き渡されてもいいから、や、やめて、くれっ…。」
「いえ、お2人は仲間みたいなので、同じお仕置きと罰を与えます。」

そう言い、ハルは縄で縛った2人をハル達が寝てたのとは違う木の近くに置いて、縄を外して、3m四方に結界を張った。
そのあと、アキが連れて来たゴブリン3体をその周りに連れて行き、その周りにも5m四方で結界を張った。

「おい、やめてくれ!」
「お、お願い、しますっ、」
「さて、アキちゃん。」
「にゃぅ?」
「今から好きな回数鳴いて?」
「?」

ハルは、アキに鳴いてと頼んだがアキはイマイチ意味が分からず首を傾げた。

「ふふっ、可愛い。にゃーって鳴いてごらん。」
「にゃー。にゃー。にゃー。」
「そうそう。もう少し鳴いても良いよ?」
「にゃー。にゃー。」
「もういいの?」
「にゃぅ。」
「そっか、じゃあ、今アキちゃんは、6回鳴いたから、」
「ちょ、待て!何をするか知らねーが、その猫が鳴いたのは5回だろ!」
「いえ、最後に『にゃぅ』と鳴いたので6回です。」
「それは、ただの返事だろ!」
「えぇ、ですが、決めるのはぼくなので、6回です。」

ハルは、そう言い、アキの方を見ていたが結界を張った男達の方に向き直り、結界に手をかざした。

「な、なにを、」
「今から、貴方達を守っている結界に穴を空けます。」
「「っ、」」
「でも、安心してください。ゴブリンの手が入る程の小さな穴にしますから。」
「や、やめてっ、」
「では、さっきアキちゃんが鳴いた数の6ヶ所に穴を空けさせていただきます。」

そう言ったハルは、男達とゴブリンの間にある結界にランダムで穴を空けた。

「ギャギャッ!」

穴が空いたことにより、ゴブリンの声が男達に聞こえるようになった。
そのため、ゴブリンにも男達の声と、ハルに切られて出来た傷から流れている血の臭いを感じるようになった。

「「「ギャギャギャッ!!」」」
「「ひぃぃーー!」」
「た、たすけてくれー!」
「さて、アキちゃん、寝よっか。」
「にゃー。」
「待ってくれ!」

ハルは、アキを抱っこして、先程寝ていた場所に戻り、しっかり結界を張り、防音も掛けた。

しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

RD令嬢のまかないごはん

雨愁軒経
ファンタジー
辺境都市ケレスの片隅で食堂を営む少女・エリカ――またの名を、小日向絵梨花。 都市を治める伯爵家の令嬢として転生していた彼女だったが、性に合わないという理由で家を飛び出し、野望のために突き進んでいた。 そんなある日、家が勝手に決めた婚約の報せが届く。 相手は、最近ケレスに移住してきてシアリーズ家の預かりとなった子爵・ヒース。 彼は呪われているために追放されたという噂で有名だった。 礼儀として一度は会っておこうとヒースの下を訪れたエリカは、そこで彼の『呪い』の正体に気が付いた。 「――たとえ天が見放しても、私は絶対に見放さないわ」 元管理栄養士の伯爵令嬢は、今日も誰かの笑顔のためにフライパンを握る。 大さじの願いに、夢と希望をひとつまみ。お悩み解決異世界ごはんファンタジー!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。 そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は? *カクヨム様で先行掲載しております

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

前世を思い出しました。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。

棚から現ナマ
恋愛
前世を思い出したフィオナは、今までの自分の所業に、恥ずかしすぎて身もだえてしまう。自分は痛い女だったのだ。いままでの黒歴史から目を背けたい。黒歴史を思い出したくない。黒歴史関係の人々と接触したくない。 これからは、まっとうに地味に生きていきたいの。 それなのに、王子様や公爵令嬢、王子の側近と今まで迷惑をかけてきた人たちが向こうからやって来る。何でぇ?ほっといて下さい。お願いします。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。

処理中です...