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魔の森 旅編
10話
しおりを挟む朝になり、アキが起きた。
「んにゃー…。」
クンッ
(ん?なんか血みたいな臭いがする…?ハル?)
ハルに抱っこされたままのアキは、鼻についた臭いで、一気に目が覚めた。
夜中にハルがゴブリンを狩ったあと、《クリーン》を掛けたが、猫の嗅覚には少し残ってた臭いを嗅ぎとったみたいだ。
(結界の外に魔獣でも現れたかな?)
アキが腕の中で考え事してると、ハルが起きた。
「んんー…、あ、アキちゃん、おはよ…。」
「にゃー〔おはよ。ねぇ、ハル、夜中に魔獣でも現れた?〕」
〔え、うん、クリーン掛けたけど、臭った?〕
〔うん、ちょっとね。〕
〔マジか…。もっかい掛けとこ。〕
〔そうしな。〕
「《クリーン》」
パーッ
〔どお?〕
クンクン
〔うん、大丈夫。〕
〔よかったー。〕
そんな話しをしてると、フェレーナが起きた。
「んん、…、あ、おうじ、さま…、おはよ。」
「おはようございます。」
「んんー……。」
かなり寝惚けている。
「スッキリすると思いますから、顔洗いますか?水出しますので。」
「はいー…、お願いします…。」
ジャー
バシャバシャ
「はふぅ、スッキリしました。ありがとう。」
「いえ。」
「にゃぅ」
「ん?アキちゃん、どうした?」
「にゃーうー」
「んー?アキちゃんも、顔洗う?」
「にゃん」
「はい、どうぞ。」
シャー
ハルは、しゃがんで、アキが顔を洗いやすいように水量を抑えて水を出した。
「にゃんっ」
「はい、アキちゃん、タオル。」
ハルは、顔を洗い終わったアキの顔をタオルで拭いた。
「えー!王子様、わたくしにもタオルくださいよー!」
「え、イヤです。てか、さっきポケットから出して拭いてたじゃないですか。」
「でも、このタオル、昨日からずっと使ってるからヤダー。」
「文句言わないでください。」
「ヤダヤダ!わたくしも綺麗なタオルで顔拭きたかった!」
「……、はぁ、でしたら、そのタオルそのまま持っててください。」
「え?うん。」
「《クリーン》はい、綺麗になりました。」
「うそ!?」
「ほんとです。」
クンクン
「ほんとだ…。さっき少し臭ったのに全然臭いしない…。使う前にやってもらえばよかった…。」
「朝ごはんどうしますか?パンがあるのでそれだけでも良いですか?」
「無視された…。うん、いいよー。王子様は、昨日いっぱい食べてたけど、パンだけでたりるの?」
「たしますので気にしないでください。」
3人は、パンを食べて、片付けをした。
「さて、そろそろ行きますか。」
「うん!あとどのくらいで魔の森から出られる?」
「さあ?今日中には出られると思いますけど。」
「ほんと!?よかった…。」
「では、行きますよ。」
「うん!行こ!」
ハルは、結界を解いて歩き出した。
ハルがアキを抱っこして、フェレーナは、ハルの隣りを歩く。
しばらく何事もなく歩いていると、
「ねぇ、王子様、昨日の夜」
「そういえば、貴方はなんで魔の森に居たんですか?」
フェレーナがなにか話そうとしたら、ハルが遮って話題を変えた。
「え、………。」
「まあ、魔の森に自発的に入る人はほとんど居ないので話したくないのであれば大丈夫ですけど。」
「ううん、全然話しても大丈夫だよ。」
「そうですか?」
「うん。馬鹿馬鹿しい話しだけど、聞いてくれる?」
「はい。」
フェレーナは、苦笑いしながら前を向いて話し始めた。
「わたくしには、大好きな婚約者がいたの。」
「はあ、」
「その彼が、好きな子が出来たって言ってきて、わたくしと婚約破棄したいって言ってきたの。」
「え、」
「ふふっ、流石に、子供でも、えっ!って思うよね。」
「まぁ、はい。」
「しかも、その婚約は、家同士で決めた政略結婚だったの。」
「それは、マズイのでは?」
「そう、マズイよ。わたくしは、家同士が決めた事なのだから無理だって言ったの。それでも彼女と結婚したいから別れてくれって。」
「それで?」
「それで、わたくしは、父に手紙を出した。
あ、今、お父様ね、お仕事で遠くに居るから連絡するのに手紙を出したの。」
「え、では、その婚約者は、貴方のお父様が居ない時を狙ったと?」
「うん、多分そう。それで、お父様からの返事を待ってたんだけど、昨日の朝、気が付いたら目隠しをされたまま手足を縛られて馬車に乗せられてて」
「え、」
「それで、馬車が止まって降ろされたら、魔の森だったの。」
「そ、それは…」
「御者の人は全然知らない人だったんだけど、教えてくれたの。」
「……なにを…?」
「なんで、わたくしがこんな目にあってるのか。」
「それって、」
「多分、王子様の想像通りだよ。婚約者がお金使ってわたくしを魔の森に連れてくようにって言われたって。」
「っ、」
「最悪だよね。しかも、わたくしの部屋に入れたのも婚約者が手引きしたからだって。
でもさ、その御者さんが、目隠しと手足の拘束解いて置いてってくれたの。王子様にも助けられたし、魔の森出たら、婚約者に会いに行って、『てめぇとの婚約なんて、こっちから願い下げじゃー!』って言ってやるんだ!」
「でも、政略結婚なんじゃ、」
「うん。でも、うちの家的には全く旨みの無い話しだから。向こうがゴリ押ししてきて、幼なじみだし、まあ良いか彼の事好きだし、って思ったから婚約受けたの。だから、全然問題ない。お父様も、わたくしが彼を嫌いになったら辞めてもいいよって言ってくれてたから。」
「そうなんだ……。」
「それに、今は、王子様っていう、婚約者が居るからね!」
「………。はぁ?」
「だって、親身になって聞いてくれたじゃん!」
「だからと言ってぼくが貴方の婚約者になる訳ないじゃないですか。ぼくにも選ばせて下さいよ。」
「だから、わたくしを選んでよー!」
「イヤです。ぼくにも好みがありますから。」
「むぅ…。じゃあ、その好みに寄せるように頑張るから、教えてよ!」
「………。」
「ねえ!」
「………。」
「もしもーし!」
「………、はぁ、では、1つ。」
「うん!うん!」
「ぼくと同い年で。」
「え、同い年…?」
「はい。」
「す、少し、前後するのは…?」
「うーん、プラス5歳ぐらいまでなら良いですかね。」
「………」
ハルの希望を聞いてフェレーナは、『チーーン』と頭を下げた。
〔ふふっ〕
〔なに、笑ってるのアキちゃん。〕
〔ん?んんー、なんでもなーい。〕
〔そ?〕
〔うん。〕
(ふふふっ、貴方は若作りしてるけど、無理だものね。ふふっ。ハルの事を7歳か8歳くらいに思ってるから無理よね。
まあ、ハルが13歳って分かっても無理よね、だって、貴方、24歳だものね。
ハルの恋人に求めた年齢は多分だけど、友達も兼任なんだろうなー。ずっと1人だったから、友達も欲しくてあの年齢が基準なんだろうな。)
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