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魔の森 旅編
9話
しおりを挟む「……、ん、くぁー。ねむぅ…。」
3人が寝静まって4時間ほど経った真夜中に、ハルが起き出した。
「さてと、」
アキを起こさないように立ち上がって、結界の外に出た。
「んんー。さ、夜中の運動といきますか。」
ハルの目の前には、10匹のゴブリンが居る。
「「「ギャギャ」」」
「ふぅ、うるさいよ、2人が起きちゃうでしょ。」
ザシュッ
「「「ギャッ……」」」
ハルは、伸びをしてから腰からずっとさげてる魔力刀を抜いて、魔力も流さずに舞うようにゴブリンを切っていく。浅く何回も何回も。
「ふふっ、ぼくにお前達がかなうわけないじゃん」
ハルは、見てる人が居ないのを確認して、過剰にゴブリンを切り付けていく。
「ふふっ、ふふふっ、うふふふっ、あはははっ、」
ザシュッザシュッザシュッ
「ギィ……」
「あははっ」
アキに、話したり見せたりしていないが、ハルは悪い奴を痛め付けるのが好きになってしまった。
家族から蔑ろにされて、衛兵に痛め付けられて、見た目では分からなかったが、心が壊れてしまっていたのだ。
アキが世話を焼き、愛を与えて、家族になった事により、ハルのパズルのようにバラバラに壊れた心はツギハギだらけだが、元の形に戻った。
しかし、1人きりになると、蔑ろにされたり痛め付けられた時の事を思い出して心が軋む。パズルのピースが1つ無くなったみたいに。
基本的に1人きりになるのは、魔獣を1人で倒す時だけ。
痛めつけてきたあの時の衛兵のように笑いながら相手を嬲るようになった。
ハルは、1人で魔獣を倒しに行って、初めて笑いながら魔獣を倒した時は、自分の事が怖くなり、分からなくなり、倒した魔獣達の真ん中で返り血を浴びたまま声を殺して泣いた。
何回か魔獣を1人で倒していき、ようやく受け入れられるようになった時、『ぼくの心は、アキちゃんに治してもらえたけど、アキちゃんが居ないと戻っちゃうんだ』と考えるようになった。
それからは、なるべく1人きりにならないようにして心を落ち着かせていった。
「あはっ……、ふぅ、」
ハルは返り血で真っ赤になり、ようやく落ち着いた。
周りには肉塊となったゴブリンがいる。
(はぁ、久しぶりだから、楽しすぎた…。
ヤバいな…。殺らないようにと抑えたら、たまたま殺った場合、こんなに酷くなるんだ…。定期的に殺った方が良いのか…、もう、分かんないよ…。)
笑い終わった瞬間、現実に戻ったのか静かに涙を流した。
しばらく涙が止まるまで待ち、止まってから《クリーン》を掛けて、耳を切り落とし死体を燃やしてアキの元に戻った。
ゴソゴソ
「んぅ、あれぇ、王子、様……?」
「あ、起こしてしまいましたか。」
「いえ…、どうかしましたか?」
「なにもないですよ。」
「そうですか…?」
「はい、少し喉が乾いて水を飲んだだけです。」
「……、そうですか、」
「では、おやすみなさい。」
「はい、……。」
ハルは、またアキを抱っこして眠りについた。
(王子様…、貴方は、なにを抱えてるの……?)
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