40 / 89
魔の森 旅編
8話
しおりを挟む火が付いて、火が落ち着いた頃、ハルはスープを作ろうとし始めた。
〔アキちゃんー〕
〔なんでしょ?〕
〔スープにお肉入れてもいいー?〕
〔ダメだよ。〕
〔えー!なんでよー!〕
〔だって、昼間の掛け、ハル負けたじゃん。〕
〔うっ…、〕
昼間の掛けとは、フェレーナがうるさくて、強めにハルが拒否したため、落ち込んで静かになったが、その時間が30分もつかもたないかでお肉を掛けたのである。
フェレーナは、かなりダメージを受けたのか、魔獣に襲われたあとも暗くなり野宿をすると聞いた時もあまり騒がなかった。
まあ、しばらく魔の森に居て、精神的に参ってきたのもあるとは思うが…。
〔まあ、でも少しなら良いよ。〕
〔え!?ホントに?〕
〔うん。あの子、多分、精神的に参ってるから大人しいんだと思うから、ちゃんと食べさせた方がいい。〕
〔なんだ、そっちか。〕
〔そう、言わないの。〕
〔むぅ…。〕
〔ほら、スープ作りな。〕
〔はーい…。〕
ハルは、渋々だが、スープを作り始めた。
鍋に魔法で水を入れて、枯れ葉を拾った時に一緒に採ってきたキノコを入れて煮立たせてるあいだに、昼間倒して、枯れ葉を拾いに行くついでにフェレーナに見られてまた気分が沈まないように離れて解体したオークの肉を少し出して、ひと口大に切って網を火の近くに置いて上に乗せて焼いていく。
お肉の周りに焼き目が着いたら、煮立たせた鍋に入れて醤油の味付けをして出来上がり。大鍋いっぱいに作った。
「ふぅ、出来た。」
アキにスープ皿を3枚出してもらって、スープを入れてスプーンと一緒にフェレーナに渡した。
「お待たせしました。どうぞ。」
「え、あ、ありがとう…。でも、食欲無くて…。」
「せっかく作ったんですから、その皿の中にある物は絶対に食べてください。明日も歩くんですから。」
「……でも、もし、食べてる途中に匂いに惹かれて魔獣が来るかも…。」
「大丈夫ですよ。周りに結界張ってあるので。安心してください。」
「ホントに…?」
「ええ。この辺に居るのは、ゴブリンかウルフぐらいの弱いやつですから。ぼくの結界は破れないですよ。」
「そっか……。少し、安心した。」
「でしたら、冷めないうちに早く食べてください。」
「うん。ありがとう。いただきます。」
フェレーナにスープを渡した後、フェレーナから少し離れた場所に腰を下ろし、アキにもスープを渡し、並んで食べた。
「はい、アキちゃん。」
「にゃうー」
「いただきます。」
「にゃっ」
ぱくっ
「にゃんっ〔うん、美味しいよ〕」
「よかった。」
ハルは、思わず声に出してアキに返事をした。変な目で見られる前に、アキの頭を撫でた。
よしよし
「ゴロゴロ…、にゃぅー…。」
「ふふっ。」
それから3人は無言で食べた。
「あの、王子様…、」
「はい?」
「もう少し貰えますか?」
「はい。少し食欲出てきましたか?」
「うん。魔獣が襲ってこないって分かって、少しだけ落ち着いた。」
「そうですか。はい、どうぞ。」
「ありがとう。」
フェレーナは、周りに結界が張ってあって魔獣が襲ってこないのが分かり落ち着いたのか先程より顔の強ばりが少なく、ハルにまた笑いかけていた。
声は未だに小さめだが。
ハルはその方が良いのか、テンション高い時より喋ってる。
「ごちそうさまでした。」
フェレーナは、1杯おかわりして満足したのか皿を置いて、ハルを見ていた。
その時ハルは、4杯目を食べ始めていた。
ちなみに、アキは、1杯と半分ぐらいでお腹いっぱいになっていて、ノドをゴロゴロさせながら、ハルの太ももに頭を乗せて眠たそうにしている。
「……、王子様」
「もぐもぐ、?」
「そんな小さな身体でなんで、そんなに食べられるの?」
「歩いて戦ったからですかね?」
「でも、そんなに食べれる?」
「ええ、いつもより少なめですし、食べきれますよ。」
「え!?それで少なめ…?」
ハルは、スープを食べてお腹が空腹感を感じないからか、普通にフェレーナと喋ってる。
ハルは、結局、自分で作ったスープを全て飲み干した。
「ふぅ、ごちそうさま。」
食べ終わったあと、魔法で水を出して、自力で洗ってタオルで拭いて、リュックにしまった。
「では、そろそろ寝ましょうか。」
「えっ、と、はい……。」
「この毛布使ってください。」
「あ、ありがとう…。」
「あなたの周りもう1枚結界張っときますから安心して寝てください。」
「わ、わかりました。おやすみなさい。」
「はい、おやすみなさい。」
フェレーナは、流石に疲れたのか、木の幹に背を預け、座り毛布を掛けたらすぐに寝た。
「ふぅ、寝たか…。」
〔寝たね。〕
「ぼくが思ってたよりかなり精神的に参ってるね。」
〔そうね。でも、ハルがご飯中話し相手になってたから、少し落ち着いてきたのかもね。〕
「そう?」
〔うん。じゃあ、私達も寝よっか。〕
「見張ってた方がよくない?」
〔あぁ、魔獣とか?〕
「うん。」
〔でも、外側の結界、かなり強い魔獣でも入れないやつでしょ?〕
「うん。対魔獣用に強めに張って、その内側に対悪人用に見つからないように認識阻害の結界張ってある。」
〔なら、大丈夫でしょ。〕
「まあ、襲われそうになってれば起きるから大丈夫か。」
〔そうだよ。早く寝よ。私、もう限界…。〕
「分かったよ。」
ハルはフェレーナが寝ている木の斜め前の木の幹に腰を下ろし、毛布を掛けてアキを抱っこして寝た。
「アキちゃん、おやすみ。」
〔うん、おやすみ…。〕
0
お気に入りに追加
262
あなたにおすすめの小説
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
RD令嬢のまかないごはん
雨愁軒経
ファンタジー
辺境都市ケレスの片隅で食堂を営む少女・エリカ――またの名を、小日向絵梨花。
都市を治める伯爵家の令嬢として転生していた彼女だったが、性に合わないという理由で家を飛び出し、野望のために突き進んでいた。
そんなある日、家が勝手に決めた婚約の報せが届く。
相手は、最近ケレスに移住してきてシアリーズ家の預かりとなった子爵・ヒース。
彼は呪われているために追放されたという噂で有名だった。
礼儀として一度は会っておこうとヒースの下を訪れたエリカは、そこで彼の『呪い』の正体に気が付いた。
「――たとえ天が見放しても、私は絶対に見放さないわ」
元管理栄養士の伯爵令嬢は、今日も誰かの笑顔のためにフライパンを握る。
大さじの願いに、夢と希望をひとつまみ。お悩み解決異世界ごはんファンタジー!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果
てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。
とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。
「とりあえずブラッシングさせてくれません?」
毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。
そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。
※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★
若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる