猫ちゃんの異世界、旅日記。

椿姫哀翔

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魔の森 旅編

5話

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しばらく2人で歩いていると、

ガサッ

「ひぃっ」
「っ…」

「にゃー」
「あ、アキちゃん。よかった、」

アキが合流してきた。

「な、なに?」
「はい、ぎゅー。」

状況が全く分かってないフェレーナを放置して、久しぶりに再会したハルは、アキを抱きしめた。

〔遅いよー〕
〔ごめんね。ハルの元にテレポートで戻れば良かったんだけど、人が居るから急に目の前に出て行くのはどうかなって思って。〕
〔それもそうだけど…。〕
〔どうかした?〕
〔……、ぼくの名前聞くまで騒ぐとか、お礼する為に家に来てとか、気持ち悪い。〕
〔そっか、〕

「ねぇねぇ、王子様ー!その猫なに!?」
〔はぁ、ね?うるさいでしょ。〕
〔うん。てか、ハル、王子様って呼ばれてるんだ。ふふっ〕
〔笑い事じゃないよ。マジで止めてって言ってるのに全然聞かないしもう、やだ。〕
〔かなり、お疲れだね〕
〔早くアキちゃんと2人旅に戻りたい。〕
〔森の外まで送っていくんでしょ?〕
〔一様ね、〕
〔どこに送ってくの?〕
〔ローレンツ王国〕
〔え、入って大丈夫なの?〕
〔入る気一切ないから大丈夫。〕
〔そうなの?〕
〔うん。国境付近まで行ったらそのまま別れる。〕
〔分かった。〕

「ねぇねぇねぇねぇねぇねぇ」

ハルとアキが念話で話しているあいだ、ずっとハルに呼び掛けていたが全く相手にしてもらえなかった。

「ねぇねぇねぇねぇ!」
「はあ、なんですか?」
「やっと、振り向いてくれた!その猫なに?」
「この子はぼくの家族です。」
「へー。猫ちゃん、こんにちは。わたくしはフェレーナと申します。君のご主人様の婚約者になります!」
「はあ?」
「ウゥーシャーー!」

ガリっ!

「いっ、たいっ!」

フェレーナは、ハルに抱っこされてるアキに目線を合わせる為少しかがみ、挨拶をした。
しかし、その挨拶が悪かった。
アキは毛を逆立たせて、目の前にある顔を思いっきり引っ掻いた。

「アキちゃん!落ち着いて落ち着いて。」

ハルは、びっくりしながらもアキをなだめた。

「っ、ちょっと王子様!そんなのに構ってないでわたくしの事を気にして下さいませ!!」
「なんでですか?」

物凄い低い声で聞き返した。

「っ、なんでって、わたくしの婚約者ではありませんか!!!」
「なにをどうしたらそうなるんですか?」
「なにをって、わたくしの事を助けて下さって家まで来てくれるって事は、わたくしの事を好きになって色々気にかけてるって事でしょ!!」
「馬鹿じゃないですか?魔の森で悲鳴が聞こえたから助けただけです。ハイオークと戦ったことないからどれくらいの強さなのか気になったのもありますけど。森の外まで一緒に行くのはただ単に魔の森が危険だからです。気持ちの悪いこと言わないでください。それに、ぼくの家族をそんなのって言うな!」
「っ、」

強く言い過ぎたかなと思いながらも、ハルは気持ちをきちんと言葉にした。

「で、でも、諦めないから!」
「は?」
「わたくしの事、嫌いな訳では無いんでしょ!」
「いや、大嫌いです。」
「なら、好きになってもらえばいいんだよ!!」
「全然聞いてない…。」

全く諦めないうえに、話を聞かないフェレーナに疲れきったハルは、抱っこしてるアキをもっと強く抱きしめた。

「っ、〔アキちゃん、面倒臭いよ…。置いてって良いかな?〕」
〔面倒臭いのには同意するけど、此処に置いてくのは流石にどうかと思うよ。〕
〔うぅー〕
〔とっとと森を出よ。そこでおさらばだ。〕
〔うん!〕

アキと喋って少し落ち着いたみたいで、歩き始めた。

「え、ちょっと待ってよ!」
「うるさい。あまり大声出すと魔獣出て来ますよ。」
「っ、そ、そう言うことは早く言ってよ!」

ハルに脅され、少しだけ声のボリュームが落ちた。
少し先を行くハルに追い付こうとドタドタ走ってあとを追いかけた。

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