猫ちゃんの異世界、旅日記。

椿姫哀翔

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魔の森

25話

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「ふふふっ、」
〔まぁーだ笑ってる…。〕
「ご、ごめん…、だ、だって、」
〔なにがそんなにツボに入ったの?〕
「ふふっ、…、ふう、わかんない。けど、なんかこの状況が楽しくて。」
〔楽しいならいっか。〕
「うん!あと、なにか入れるのある?」
〔うーん、特に無いけど…、あ、〕
「なに?」
〔これ作っといたの忘れてた。〕

アキはインベントリからある物を取り出した。

「これ、なに?」
〔これは、ホルダー。〕
「ほるだー…?」
〔そ。ハルの刀と銃を持ち運ぶのに作ったの。〕
「え、すごい!ありがとう!」
〔いえいえ。付け方教えてあげるから自分で付けてみて。〕
「うん!」

刀のホルダーは、腰に巻くタイプで、ベルトに刀を入れられる輪っかが付いている。右側の腰に付けた。
銃のホルダーは、脇に付けるタイプで、ホルダーをリュックのように背負って利き腕と反対の左側に銃を入れられるポケットが付いている。

「うーん、……、あ、出来た!どお?出来てる?」
〔うん。ちゃんと付けられてるよ。動きずらいとかはない?〕
「うん!動きやすい。」
〔よかった。〕
「アキちゃん、ありがとう。」
〔いえいえ。〕
「そだ、アキちゃん、」
〔んー?〕
「リボンとかって今持ってたりする?首飾りとかでも良いけど。」
〔んー?無いかなー。〕
「そっか、さすがにヴィオ様でもそうゆうのは渡さないか。」
〔まあ、生活に必ず必要って訳じゃないからね。欲しかったの?〕
「うーん、欲しいというか、旅に出るのにアキちゃんに付けてもらおうかなって思って。」
〔え、私?〕
「うん。昔家でテイマーの本を読んだことを思い出して、」
〔うん。〕
「テイムした魔獣には分かるように首輪とかリボンを付けとくって書いてあった。」
〔そっかー。〕
「うん。アキちゃんは、魔獣じゃないけど、ぼくの家族だよって、周りに分かるようにしたいなーって思って。」
〔そっか、いいよ。今から糸で作ってあげる。〕
「ほんと!?」
〔うん。せっかくじゃ、ハルの分も作ろうか。〕
「ぼくの?」
〔うん。家族の証みたいのなんでしょ?だったら2人で付けてないと。〕
「そっか、そうだねー。」
〔じゃあ、作ってくる。〕
「うん。ぼくは、夕飯までまた身体動かしてる。」
〔了解。ホルダー付けたまま動いてみな。〕
「分かった!やってみる。」

ハルは、日が当たる暖かいところでまた身体を動かしたり、魔法の練習をしたりし始めた。
アキは、ハルの邪魔にならないように、日影に作っておいたベンチに座ってリボンを作り始めた。

(さて、リボンねー。まだ沢山あるからシルバースパイダーの糸で作ろうかなー。綺麗な銀色になるし。色変えるかなー。んー……、そだ、こないだ取ってきたけど、酸っぱくて食べられない果実があったな。あれ、『手がすっごい紫になったー』ってハルが笑ってたなー。あれを鍋で煮て、色を出した水に糸を浸して紫の糸にして、リボンにするか。)

アキは、大きい鍋に水を入れて、綺麗に洗った果実を入れた鍋をかまどに置いて、煮立たせていった。
色が出るまで、掻き混ぜたり、果実を潰したりして色を出した。
そのあと、色水をこして、お湯で洗った糸を入れて30分程漬けた。
色落ちしないように魔法で付着させて、乾かして綺麗なピンク寄りの紫色の糸が出来上がった。

その糸を使い、リボンを作った。

(ふう、出来たー。なんとなくの前世の記憶辿って作ったけど、大変…。てか、めんどくさかった…。もお、次からは買お。うん。そうしよ。
このリボン、エンチャント付けようかなー。なに付けようかな?うーん…、よし、『サーチ』、『位置情報』、『個人特定』…、出来た。
これ付ければ、はぐれても見つけられるねー。前世で言うところのGPSってところかなー。)

〔ハルー、出来たよー。〕
「アキちゃん!」

ダダダダダッ

〔うわっ、〕

ギュー

出来上がったリボンを持って、ハルの方を向いたら、勢いよく走ってきたハルに力いっぱい抱き締められた。

〔どうした?〕
「……、」
〔ハル?〕
「ぼくが、」
〔うん〕
「ぼくがリボン作ってって、お願いしたけど、夕飯の時間になるまで掛かってて、」
〔うん〕
「寂しかった…。」
〔そっか、ごめんね。〕
「ううん、ぼくがお願いしたからいいの。」
〔じゃあ、このまま抱っこしたまま聞いて。〕
「うん。」
〔出来たのが、このリボンね。〕
「わあ、綺麗な色。」
〔いつもは、糸そのまま使ってたんだけど、試しに色付けてみよかなって思って、付けてみた。私の首に付けるなら銀色の糸のままじゃ、目立たないでしょ?〕
「うん。可愛い。アキちゃんに似合う。」
〔色、ハル的にはどお?〕
「ぼくもこの色好き。アキちゃんの目の色に似てる。」
〔そう?私とハル、目の色紫だから、一緒の色のにしようと思って紫にしたんだけど、ちょっとピンクっぽくなったなーって思ったんだけど。〕
「可愛い。」
〔よかった。ちなみに、エンチャントで、『サーチ』『位置情報』『個人特定』を付けたから、もし、はぐれた場合に、スキルの《サーチ》を使うとどこに居るか分かるようにしたから。〕
「わあ!ありがとう!」
〔ハル、私に着けてよ。〕
「うん!」

ハルは、アキからリボンを受け取り、アキの首に巻いて、背中側でちょうちょ結びをした。

「出来たよー。」
〔ありがとう。〕
「ぼくは、どこに付けようかなー。」
〔手首とかは?〕
「手首?」
〔うん、腕出して。〕
「うん。」

アキは、ハルの左手首にリボンを巻き付けて、手の甲側にちょうちょ結びをして止めた。

〔はい。どう?〕
「いい感じ!」
〔なら、よかった。外れないように『使用者固定』して、魔法で固めとこ。〕
「うん!」
〔これで、よし。〕
「アキちゃん、」
〔ん?〕
「ワガママ聞いてくれてありがとう。」
〔いえいえー。〕

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