猫ちゃんの異世界、旅日記。

椿姫哀翔

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魔の森

4話

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30分ほど経ち、少年は落ち着いたのか泣き止んだので、話しかけてみた。

「ごめんね、急に泣いたりして…。」
〔少年、聞こえる?〕
「っ!?な、なに!?」
〔聞こえてるね、よかった。〕
「へ?誰?」
〔急にごめんね、私は、君の膝の上に居る猫だよ。〕
「ふぇ!?ね、ねこちゃん!?」

びっくりして、少年は何度もアキを見た。

「にゃうー〔そうだよ〕」
「一緒に聞こえる…。なんで…。」
〔今、君に念話で話しかけてる。〕
「念話…、ってことは、魔法!?」
〔そうだよ。〕
「ぼく、魔力全く無いんだけどなんで聞こえるの?」
〔魔力が無い?そんなことないよ。すごい量の魔力感じるもん。〕
「うそ………」
〔ほんと。ちょっとよく見てもいい?〕
「なにするかわからないけどいいよ。」
〔ありがとう。〕

《魔力可視化》

アキは、魔法で少年を見てみた。

(うーん、あ、)
〔少年、君の魔力、詰まってるよ。〕
「へ?詰まってる?」
〔うん。これ直せば魔法使えるようになるよ。〕
「え、ほんとに…?」
〔うん。〕
「じゃ、じゃあ、ねこちゃん、直せる……?」

少年は、顔を硬くし、上ずった声で聞いてきた。

〔うん、出来るよ。少し時間掛かると思うけど。〕
「っ!お、お願い、しても、いい…?」
〔うん、いいよ。〕
「あっ、でも、ぼく、お金、ない……。」
〔そんなのいらないよ。〕
「でも、」
〔じゃあ、私の家族になってよ。〕
「か、家族…?」
〔そ。私、この森で1人で住んでるんだけど、そろそろ森を出ようかなって思ってて、君とだったら楽しそうだから。どうかな?〕
「ぼ、ぼくなんかでいいの…?」
〔君が、いいの。〕
「っ、………、じゃあ、お願い、します…。」
〔ほんと!?やった!私は、アキ。〕
「アキちゃん。ぼくは、レオンハルト。」
〔れおんはると。えー長い…、短くしてもいい?〕
「いいよ。元家族に付けられた名前だからあんまり好きじゃないし、新しく家族になるアキちゃんがつけてくれるなら嬉しい。」
〔………、そっか、うーん、じゃあ、『ハル』は?〕
「ハル?」
〔うん、あんまり今の名前と違いすぎない方がいいでしょ?それに、私の『アキ』って名前、季節の秋っぽいでしょ?だから、同じ季節の春にしたくなった。いい?〕
「うん、いいよ。家族っぽいし。ぼく好き。」
〔よかった。じゃあ、よろしく。〕
「よろしくね。」

アキは、ハルと仲間とか、友達じゃなく、家族として一緒に居ることにした。

〔それじゃ、その傷治そうね。〕
「え、治せるの?」
〔もちろん!アキちゃんすごいんだからー。なんでも出来るよー。〕
「ほんとに!?すごい!」
〔じゃ、いくよ、《パーフェクトヒール》〕

アキは、ハルに治療魔法の一番強いやつを使った。

「ちょっ、」

パァッ

〔できた。〕

満面の笑みをハルに向けるアキだが、ハルは、俯いてプルプルしてる。

「アキちゃん!やりすぎだよ!」
〔ん?なんで?だって、ハル、腕も足もお腹も骨折れてるし、全身傷だらけだよ。1回で治した方が早いじゃん。〕
「でも、すごい魔力使うって、魔導書に書いてあった。」
〔そうなの?私、ハルよりは魔力ないけど、でもかなり多いよ。安心して。〕
「へ、そうなの?」
〔うん。ハルはさ、魔力出ないのにいっぱい魔法の練習してたでしょ?〕
「う、うん。」
〔だからだよ、きっと。産まれた時から多かっただろうけど、練習してるときに無意識に増えてったんだよ。きっと。〕
「そう、なんだ…。」
(………。)

ハルは、呆然とアキの話を聞いていた。

〔さてと、帰ろうか。〕
「どこに?」
〔私の根城。〕
「根城?」
〔うん。
さて、ハル、私をしっかり抱っこして。〕
「へ?」
〔ちゃんと私のこと抱っこしててね。落としちゃダメだよ。〕
「う、うん。なに、するの?」
〔帰るの。《テレポート》〕

シュンっ

アキは、魔法で神域までハルを連れて戻った。

「わあ…。」
〔降ろしていいよ。〕
「あ、はい、」
〔ここが私の根城。ようこそ。〕
「すごい!きれい……」

グゥー

ハルのお腹がなった。

「あっ、」
〔ふふっ、お腹空いたね。とりあえず、今出来てもってるのあるからそれでいいかな?〕
「いいの?」
〔もちろん。《インベントリ》ほい。〕

アキは、インベントリから、テーブルとイスとパンとスープを取り出した。

「ありがとう。」

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