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可愛い一面

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怒涛の初日を終え就寝していたときのこと。ゴソゴソと物音がしたので、目が覚めた。鳥がチュンと囀り、暖かい日光がカーテンを透けて部屋を照らす。こんな清々しい朝なのに、なんだか釈然としない。

原因を探るため辺りを見回すと、自分に覆いかぶさっている布団がモゾモゾとひとりでに動いてる。…なんだ?俺は動いていないぞ。

ソッとめくると、そこには先輩が。
昨日あげたスウェットの隙間からみえる乳首など、今はあまり気にならなかった。なぜならそれ以上に衝撃の光景が飛び込んできたからだ。

「なんで俺のチンコ触ってるんですか!!」

そう、先輩は俺のチンコを握り、ぬちぬちっと上下に擦っていたのだ。しかも、舐めながら。

「んえ?だって、朝勃ちしてたんだもん。出したらいいじゃん、気持ちーよ?あきとの、舐めてあげる」
「ダメです!!ぁっ、なんで出会ってばかりの人の、ん、そんなところ触ってるんですかっ!離して、ください!!」 
「え~?ダメ?」
「っん、ダメです!!」

喋っている間にも手を動かす先輩。やめてくれ、いろんなものが出るから動かさないでくれ。そんな俺の願いを知ってか知らずか手を離してくれ、朝から一人虚しく、トイレで自慰することになったのだった。



すこし賢者タイムに陥りながら部屋に戻ると、先輩は朝にもかかわらずベッドの上でバームクーヘンを食べていた。プレーンのやつ。

しかも、俺のベッドで。

「先輩!なんでいまお菓子食べてるんですか。もうすぐ朝ご飯ですよね?それに、ベッドの上で食べないでください!」

スウェットからギリギリ見えないプリプリのお尻など決して気にならない。決してエロいとか思ってない。

先輩はそれでもお菓子を手から離さないため、仕方なく椅子へと誘導した。もちろん先輩が自ら動かないので、俺が移動した。

「先輩、これまでどうやってきたんですか。前のルームメイトはどうだったんです?」
「………。えっと、前は、その」
「?」
「ちゃんと、してたから」 

歯切れの悪い先輩に焦れて目線で急かすと、先輩が言った。

え、前はちゃんとしてたって、じゃあなんで今はこうなんだ。

「なんで変わったんですか?」
「だって、彰人が面倒見てくれそうだなって」
「初対面で?!」
「…直感かな」

俺が人に世話を焼かないと済まない性格だって、そんな分かるものなのか。出会って一日未満だぞ。凄いな。

「俺がそうだとしても、ちゃんとしないと困るのは先輩ですよ?」

余計なお世話だとしても、今言わないとこれから先輩がダメになる気がする。

「大丈夫だよ」
「なんで分かるんですか」
「だって、彰人がいるもん。」

もんってなんだ。口の端にお菓子の欠片を付けて、ポロポロ零しながら言うことか。俺のベッドの上で、少し頬を赤くして、上目遣いで…。

ーーーぼっ!

っ!!なんで、なんで顔が熱くなるんだ。こんなの大したことないはずなのに。きっと、あれだ。慣れない環境で、先輩が生足でいるから錯覚してしまっただけなのだ。

別に先輩のことを可愛いと思ったとか、そういうのじゃない。俺は男好きじゃない。女の子が好きなんだ。ーー好きになったことないけど…。ーーでも、きっとそうだ。決して、先輩にドキドキしているわけじゃない。今日はなんだかおかしいだけなんだ!
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