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番外編
ティーの前世
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僕はお花。
森の奥底に咲いているお花なんだ。
そんな僕には、毎日すぐそこの川から水を届けてくれる存在がいる。
オオカミさんだ。オオカミさんは灰色の毛皮に金色の瞳、とてもいいガタイをしている...他のオオカミは見たことがないから分かんないけどね。
そんなオオカミさんと出会った日は覚えていない。たぶん、僕が芽の頃から一緒にいてくれてるのかな。僕はオオカミさんとお話できないのに、いつもオオカミさんは僕の望んでいる時間に、望んだ量の水を川から運んできてくれる。どうしてだろう?
僕は、そんな優しいオオカミさんに恋をしている。こんな山奥の人目に付かない岩場に咲いている僕に甲斐甲斐しく毎日水をくれるオオカミさんに恋をしたんだ。オオカミさんは面倒くさいと思わないのかな。思っていないといいな。オオカミさんがくれる水はいつも優しくて、全身が浄化される感じがするから、出来ればこのまま一生恵んでもらいたい。ああ、僕がお花に生まれてきてよかった。オオカミさんは毎日僕に構ってくれるから。
...オオカミさんは僕のことを好いてくれているだろうか。毎日水を運んでくれるくらいだから、嫌いではないだろうと思いたい。僕はいつもこんなようなことを考えている。僕が喋られないのが、オオカミさんと話せないのがこんなにも辛いなんて。天はどうやら僕を見捨てたらしい。僕はオオカミに生まれたかった。オオカミに生まれていたら、オオカミさんと同じ種族に生まれていたら、この想いは届いたかもしれないのに。
♪。.:*・゜♪。.:*・゜♪。.:*・゜♪。.:*・゜
今日も、オオカミさんはお水を運んできてくれている。オオカミさんが川から水を掬って戻ってきた。もう少しで水が...
ーーバンッ
その時、銃声が響いた。僕は咄嗟のことに動揺する。オオカミさんが血を吹き出す。フラフラし出したオオカミさんが寄ってくる。どうしたの?どうしてそんなに苦しい顔をしているの?
僕は、分かっていたのに分からないふりをした。だって、受け入れられない。オオカミさんが死んじゃうなんて。まだ、想いを伝えていないのに!
「討ち取ったわよ!私達の村を襲ったオオカミの種族...皆根絶やしにしてやる、お母さん達を死なせやがって!」
そう言って女はオオカミさんを激しく蹴り飛ばした。なんてことをするんだ。酷い!僕の大好きなオオカミさんが死んでしまう!!
「...?この花はなんだ?」
「このオオカミ、器用に水持ち続けてやがる、この花にあげる気だったのかしら」
「ああ、忌々しい、こんな花...」
そう呟いた男の足が僕の頭上にきて、視界が暗転した。多分、僕は死んだのだろう。男に踏み潰されて。でも、いいんだ。だってオオカミさん死んじゃったと思うし。お水がなくて、オオカミさんが居ない世界なんて、生きる意味が無いに等しい。
あの人たちは何がしたかったんだろう。オオカミさんは決して村を襲ったりなんかしていない。僕は分かる。だってオオカミさんはいつも僕のそばにいたから。オオカミさんが何をしたって言うの?僕のオオカミさんを返してよ!!
僕は、こんなにも花に生まれた事を恨んだことがなかった。本当はオオカミさんと話せなくても十分幸せだったから。
でも、僕は花に生まれた事を恨んだ。だって、僕は打たれようとしていたオオカミさんを庇ってあげられなかった。僕が地面から動けなかったから。
ああ、なんで花に生まれたんだろう。オオカミさんと話せないし、オオカミさんを救えないし。いつもくれる水のお礼すらも伝えられなかった。
僕は、次、もし生まれるとしたらオオカミさんと同じ種族になりたいな、そう思った。
ーーぐしゃぐしゃで無惨な姿になった花に最後の力を振り絞って寄り添ったオオカミ。オオカミは花に優しくキスをし、微笑みながら静かに寄り添って息を引き取った。
森の奥底に咲いているお花なんだ。
そんな僕には、毎日すぐそこの川から水を届けてくれる存在がいる。
オオカミさんだ。オオカミさんは灰色の毛皮に金色の瞳、とてもいいガタイをしている...他のオオカミは見たことがないから分かんないけどね。
そんなオオカミさんと出会った日は覚えていない。たぶん、僕が芽の頃から一緒にいてくれてるのかな。僕はオオカミさんとお話できないのに、いつもオオカミさんは僕の望んでいる時間に、望んだ量の水を川から運んできてくれる。どうしてだろう?
僕は、そんな優しいオオカミさんに恋をしている。こんな山奥の人目に付かない岩場に咲いている僕に甲斐甲斐しく毎日水をくれるオオカミさんに恋をしたんだ。オオカミさんは面倒くさいと思わないのかな。思っていないといいな。オオカミさんがくれる水はいつも優しくて、全身が浄化される感じがするから、出来ればこのまま一生恵んでもらいたい。ああ、僕がお花に生まれてきてよかった。オオカミさんは毎日僕に構ってくれるから。
...オオカミさんは僕のことを好いてくれているだろうか。毎日水を運んでくれるくらいだから、嫌いではないだろうと思いたい。僕はいつもこんなようなことを考えている。僕が喋られないのが、オオカミさんと話せないのがこんなにも辛いなんて。天はどうやら僕を見捨てたらしい。僕はオオカミに生まれたかった。オオカミに生まれていたら、オオカミさんと同じ種族に生まれていたら、この想いは届いたかもしれないのに。
♪。.:*・゜♪。.:*・゜♪。.:*・゜♪。.:*・゜
今日も、オオカミさんはお水を運んできてくれている。オオカミさんが川から水を掬って戻ってきた。もう少しで水が...
ーーバンッ
その時、銃声が響いた。僕は咄嗟のことに動揺する。オオカミさんが血を吹き出す。フラフラし出したオオカミさんが寄ってくる。どうしたの?どうしてそんなに苦しい顔をしているの?
僕は、分かっていたのに分からないふりをした。だって、受け入れられない。オオカミさんが死んじゃうなんて。まだ、想いを伝えていないのに!
「討ち取ったわよ!私達の村を襲ったオオカミの種族...皆根絶やしにしてやる、お母さん達を死なせやがって!」
そう言って女はオオカミさんを激しく蹴り飛ばした。なんてことをするんだ。酷い!僕の大好きなオオカミさんが死んでしまう!!
「...?この花はなんだ?」
「このオオカミ、器用に水持ち続けてやがる、この花にあげる気だったのかしら」
「ああ、忌々しい、こんな花...」
そう呟いた男の足が僕の頭上にきて、視界が暗転した。多分、僕は死んだのだろう。男に踏み潰されて。でも、いいんだ。だってオオカミさん死んじゃったと思うし。お水がなくて、オオカミさんが居ない世界なんて、生きる意味が無いに等しい。
あの人たちは何がしたかったんだろう。オオカミさんは決して村を襲ったりなんかしていない。僕は分かる。だってオオカミさんはいつも僕のそばにいたから。オオカミさんが何をしたって言うの?僕のオオカミさんを返してよ!!
僕は、こんなにも花に生まれた事を恨んだことがなかった。本当はオオカミさんと話せなくても十分幸せだったから。
でも、僕は花に生まれた事を恨んだ。だって、僕は打たれようとしていたオオカミさんを庇ってあげられなかった。僕が地面から動けなかったから。
ああ、なんで花に生まれたんだろう。オオカミさんと話せないし、オオカミさんを救えないし。いつもくれる水のお礼すらも伝えられなかった。
僕は、次、もし生まれるとしたらオオカミさんと同じ種族になりたいな、そう思った。
ーーぐしゃぐしゃで無惨な姿になった花に最後の力を振り絞って寄り添ったオオカミ。オオカミは花に優しくキスをし、微笑みながら静かに寄り添って息を引き取った。
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面白いお話で更新が待ち遠しいです。これからも頑張って下さい!
訂正していただきありがとうございます!確かに違っていましたね…すぐに直します。
また、ご感想ありがとうございます😊
面白いと言っていただいてとても嬉しいです…!
これからもよろしくお願いします🙇🏻♀️