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男しかいない世界
しおりを挟む僕は王都から馬車で五日位する場所にある国境スレスレな村に住んでいる。
その村は若者が極端に少ない。何故なら、王都に憧れて多くの人が上京してしまうからだ。その多くが騎士団に入団するのだとか。この村の人達は何故か強い人ばかりらしい。
半年前に上京した、隣人のライリーお兄ちゃんは
「だって考えてもみてよ、うるさい老人ばかりの何も無い所だよ?そりゃあ刺激求めて移住でもするだろう?アルルと離れるのは寂しいけど、僕は行くよ」
って言っていた。ちなみにこのお兄ちゃんも騎士団に入るんだって!
でも、僕はこの村がつまらないとは思わない。ここの人達は良い人ばかりだし、美味しいものも沢山作られている。特にフルーツが有名なんだ。何も無いなんてことはない。
皆が上京していく中、ライリーお兄ちゃんも面白かったのに王都に行ってしまって少し寂しかったんだ。お兄ちゃんとはよく森で探検ごっこをして遊んだ。お兄ちゃんが隊長で僕が隊員。楽しすぎて遅くまで遊んで、お母さんたちに怒られたりもしたなぁ。幼なじみのお隣さん同士だからよくお風呂に一緒に入ったりもした。僕が大人の身体になっても入ろうと言ってきた時は流石にびっくりしたけど、楽しかった。その時はちょっと恥ずかしかったけど、確かに男同士だし何も気にすることないよね。
……でもお兄ちゃんのガッシリした体と僕の貧相な体を比較して、やっぱりちょっと恥ずかしかったかも。
そんなお兄ちゃんが上京すると告げてきた時は離ればなれになるのが哀しくて少し泣いちゃったけど、困らせちゃいけないと思って笑顔で見送ったんだ。
そしてもうすぐ、そんなお兄ちゃんに逢えるんだ!何故なら王都にあるお兄ちゃんのお家に遊びに行くから。そのついでに王都で開かれている王国祭にも行く。今年は王国が造られて丁度百年のめでたい年だから、いつもよりもっと賑わうんだって!僕は行ったことがないから、例年との比較は出来ないけど……。
僕一人で王都に行くには自信が無いって言ったら、ライリーお兄ちゃんが迎えに行くって言ってくれたんだ。引っ越したばかりなのに申し訳ないなぁ……。
「おーい!アルル~!」
「お兄ちゃん!!!」
馬車から降りて僕の姿を確認したライリーお兄ちゃんは駆けてきて抱きしめてくれた。
前まで一緒にいる時はずっと手を繋いでいたし毎日一緒のベッドで寝ていたから、最近ちょっと涙脆いんだよね。幼い頃からずっとあったあの温もりがないんだもん。起きた時何となくお兄ちゃんを探しちゃうんだ。僕も早く大人にならないと。
「久しぶり~」
「元気だったか?アイツらになにかされてないか?!」
「あいつら、って……もしかしてトビー達のこと?みんな変わらず優しいけど…どうしたの?」
「いや、それならいいんだが…お前が可愛くて心配なんだ」
「もう!ぼく可愛いよりかっこいいの方がいいの!!」
「かっこいい、かっこいいなぁアルルは」
「心がこもってない!」
そう、男は誰だってかっこいいと言われたいだろう。僕もそうだ。
そして、お兄ちゃんは少し、いや、大分心配症な所がある。
トビーたちは僕の一個下の三人組。お兄ちゃんがアイツらと呼ぶのはこの村ではトビーとダイルとミッチしかいない。この村でお兄ちゃんより年下なのはトビーたちと僕だけだからね。他はおじいちゃん達とライリーお兄ちゃんより少し年上のお兄さん達。みんな優しくて、しかも剣術を教えてくれる。
トビー達は12歳になったばかりで、なんでか分からないけど僕に向ける視線が熱くなったような気がするんだ。
「まあ、ここのじいさん達が守ってくれるんだろうけどな~…僕の出る番はないだろうね(ボソッ」
「んっ?何かいった?」
「んーん、なんでもない。そんなことより僕の部屋、行こうか?」
流石に片道五日もかかるのに続けて馬車に乗るのはお兄ちゃんでもキツイから、少し村で休んでから行くことになった。
久しぶりのお兄ちゃん家、楽しみだなぁ!
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