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1章.薬師の名門ブレルスクに入学した私は…

18.卒業するまで手伝います。

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「……ということがありました。」
「カァーッカッカッカァッ!!最近のお主の話は飽きないのぉ!」

 ここは薬慈院。いつも通りバイトに来た。

 いつもの様に、担当のマサールさんに今日あった出来事を話すと愉快そうに高笑いを始めた。

「いや、笑い話じゃないと思うんですが?」
「何を言う。高慢な高飛車を言葉でも力でも捻じ伏せるなんぞ、早々ある話でもあるまい。痛快至極で、実に愉快愉快!!」
「………ありがとうございます。」
「しかし、大丈夫なのか?あんな奴でも、この国の法では一応人間という事になっておる。」
「なっておるって………なんか、雑な括り方ですね?」
「あんなクズが人間とは思っておらん。ワシなら迷わず王都から追放しておるわ。」

 どんだけ嫌われてんだよ。(これって、何回目?)

「とにかく、告発されれば色々面倒な事になるのではないか?」
「そこは問題ありません。関節は綺麗に治したので証拠は残っていませんし、クラスのみんなも黙秘してくれるそうです。そもそも、9歳の子供に負けたなんて情けない事実を自ら公にする事はないでしょう。プライドだけは無駄に高いですから。」
「なるほどのぉ。まぁ、いざとなったらワシの方でも色々根回ししてやるつもりだがな。」
「ありがとうございます。」

 流石に、あの時は焦ったな。勢いで危うく腕を取り外しそうになって、途中で関節外しに切り替えたんだよなぁ。

 クズ相手だと、どうにもアンガーマネジメントがうまくいかない。気をつけなきゃな。

「それで?今日はどんな授業をした?」
「とりあえず、仮眠の時間を設ける事にしました。」
「そうか。それは…………仮眠?」
「はい。彼らに必要なのは勉学よりも十分な休息かと思いまして。」
「仮眠のぉ……寝る授業なぞ聞いた事ないわい。」
「これからも、授業前には仮眠の時間を設けて眠気を払ってから授業を開始したいと思います。」
「……常習化するつもりか?」
「えぇ、少なくとも、私が退学になるまでは。」
「いやはや…………よもや………よもやだ。」
「では、私はこれで失礼します。」
「ん?今日は大分早いのぉ。」
「えぇ…まぁ………仕事が増えまして。」
「………なるほど。忙しなくなるのぉ。」
「えぇ、しばらく忙しなくなりそうです。」
「無理はするな?お主が身体を壊しては元も子もないからの。」
「ありがとうございます。(ガチャッ)では、失礼しました。」
「うむ、また明日な。」
「……はい。また明日。(バタン)」

 さて、忙しくなりそうだ。



***


 
 よし。これで私の担当区分は全て終わった。

 引き継ぎまでの間は時間が空いたから今のうちに……て、見覚えのある奴がこっちに来てるな………

「よお、アレク。」
「テルマ。今日も見舞いか?」
「そんなとこだ。そっちは仕事終わったか?」
「いや………まだ終わってない。」
「そうか………時間が掛かりそうか?」
「ちょっと手こずりそうでね。じゃ、私仕事に戻るから(スタスタスタ)」
「一人であいつら全員の助っ人に行くつもりか?」
「(ピタッ)………何の話だ?」
「とぼけんなよ。クラスメイト全員の仕事を手伝いに行くつもりだろ?」
「………だとしたらどうする?私を止めるか?」
「いいや、止めるつもりはない。ただ、一つ頼みがあってな。」
「頼み?」
「その仕事、俺にも手伝わせてくれ。」
「………」

 どういうつもりだ?好んでする様な事とも思えないけど。

「ダメか?やっぱり、俺じゃ足手まといか?」
「そんなことはない。寧ろ助かる。だが、好んでする事とも思えないし、賃金が出る訳でもない。やっても、損しか無いのに何故かと思ってな。」
「変な事を聞くんだな。だったら、何故お前は手伝いに行こうとしてるんだ?」
「………」

 何故も何も……を見といて知らんふりは出来ないだろ。

「ただの暇つぶしだよ。自分の仕事が終わったから引き継ぎの時間まで他の手伝いをしに行くだけだ。」
「じゃ、俺は『師匠の手伝い』って事で同行して良いよな?」
「………好きにしてくれ。」

 そうして薬慈院を後にした。
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