名門ブレルスクに入学した私は、退学するまで暴れます。〜気付いたら、王都の闇も暴いてました。〜

鮒捌ケコラ

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2章.授業を荒らして停学処分を受けた私は……

7.食料調達の為に樹海に入ります。

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 ここは樹海。今は、時間帯的に陰っている為程よく薄暗い。

 正式名称は『ニルフォバルト樹海』。王都を囲う様に広がる渓谷に生い茂る文字通りの樹の海だ。

 ここで私は、故郷の森と同じ要領で薬草と食材の採取をしている。

 本当は、町の商店で買いたい所だが、金がない。

 正直なところ金欠だ。

 薬慈院で門前払いを受けた際、これまでのアルバイト代を受け取り損ねた。完全に踏み倒されたな。これは。

 そもそも、学生の給料なんてたかが知れている。1ヶ月分の給料は小銀貨3枚。前世のお金に換算するとせいぜい3千円程度だ。

 因みに、これは9歳の子供が王都で1ヶ月間生活出来るギリギリの金額である。

 即ち、支出と収入が等しいいわゆる自転車操業を強いられる事になるのだ。

 期待するだけ無駄だろう。

 しばらくは森の恵みに頼る他あるまい。

 そうしてかれこれ1時間近く採っているが、食材については申し分ない。

 獣道に沿って採取をしているが、故郷と比較すると食材が豊富な上、毒が含まれる木の実が圧倒的に少ない。腹は十分に満たせるだろう。

 薬草だって、欲しかったものが人通り揃った。これで輸血の必要は無くなるはずだ。

 これらの収穫物を換金すれば、小銀貨数百枚分の収穫になるだろう。

 こうしてみて改めて感じる。私……都会暮らしより森での自給自足の方が向いてる気がする。

 これだけ資源が豊かであれば、王都の人々がこぞって取りに来てもおかしくない。

 それで尚、彼らが樹海に入る事はない。現に、ここは穴場と化している。

 私は、その理由がマウントボアなどの危険な魔物が蔓延っているからだと思っていた。しかし、実際はもっと根本的な理由だった様だ。

 誰も樹海に入りたがらない理由……恐らくそれは、ニルフォバルト樹海がだからだろう。





 奥行きではなく、縦方向に。

 実際に降った感じ、落差1600mくらいはあるかな。

 道理で魔物の被害に耐性が無いわけだ。ここから見れば、王都は遥か上にある事がわかる。普通なら、こんな断崖絶壁をよじ登って魔物が襲ってくるなんて思わないだろう。

 けど、そうなると……何というか、殊更入学式のボア騒ぎが何者かの陰謀によるものとしか思えなくなってしまうな。不毛だ。これ以上貴族のゴタゴタに首を突っ込むつもりはないし、さっさと忘れてしまおう。

 何にせよ、これからの王都生活で食料に困る事は無さそうだ。

 ただ、不満が無いわけでもない。

 こんな状況で贅沢は言ってられない。しかし、欲を言えば……肉が欲しいな、肉が。

 皮肉な事に、この樹海は香草も豊富だ。故に、より一層肉が欲しくて堪らない。

 野鼠や兎、蛇や蜥蜴の類すら見当たらない。やっぱり故郷の森はおかしかったんだな。あんなに沢山いたんだもの。特に、今日ばかりは大物が欲しい。

「……やっぱり、来ないな。」

 だから、こうして獣道に沿って食材を探しているのだが、ツメが甘かったかな。何処かに、私の事を襲って来る酔狂な猛獣は居ないものかな?

「(ドスッドスッドスッドスッドスッドスッ)」

 そうこう考えてると、こちらに何かが向かって来る。

「……タイミング良過ぎるな?」
「(ドスッドスッドスッドスッドスッドスッ)」

 足音からして、大型…二足走行……鳥系かな。

 まぁなんにせよ、これで暫く肉には困らな……ん?

「(タタッタタッタタッ)」

 ……誰か、走ってこっちに向かって来てる。それも子供だな。状況から考えて、二足獣鳥系に追われてる……とか?

「……面倒だな。(ガサガサガサッ……ヒュッ……ストッ)」

 獣単体ならどうとでも出来る。だが、目撃者がいたら色々と厄介だ。ひとまず、近くの木の上に潜んで様子を見るか。

「…ハァッ…ハァッ……ハァッハァ………」

 息を切らしてやって来たのは同い年くらいの少年だった。

「………」

 悪いが、今ここにいる事を知られる訳にはいかない。やり過ごさせてもらおう。

 そもそも、森に入るのであれば自己責任だ。

 幸い両者の距離は大分開けている様だ。その上、この辺りには登りやすい木が多い。うまく視線を抜けて登れば、十分に逃げられる。

「(タッタッタッタッ………)」

 だが、このあたりの木はそんなに幹が丈夫じゃない。子供とはいえ2人以上の体重は支えきれないだろう。だから、私のいる木以外に登れば十分に逃げきれる。

「(ガサガサッ)」

 そう、私の木に来なければ………

「ハァッ……ハァッハァッハァッ……なっ!?」
「……………」

 木の下の少年と目が合う。どうやら、私の居る木を選んだ様だ。つくづく運が悪いな、お互いに。

「おっ…おま……ハァッハァッ……」

 息も絶え絶えの様子で、問いかけて来る。

“「キシェアァァァッ!!(ドスッドスッドスッドスッ」”

 それも束の間、何者かの咆哮が聞こえた。やはり鳥だったか。恐らくは、少年を追って来た獣のものだろう。

「っちぃ!!(ダダダダダダッ!)」

 少年はすぐに走り出した。もっと向こうの木に行くつもりだろうか。この獣道の先は行き止まりだ。その前に木に登って難を逃れられれば良いが。

「(ドスッドスッドス…ドス……ドス………ドス…)」

 不意に足音が止み、立ち止まった事がわかった。

“「(ギョロリ)」"
「…………」

 案の定、すぐ真横に西瓜すいかサイズの目玉があった。この大きさでは、巨鳥というより怪鳥だな。

"「(ニマァ)ギェッギェッギェッ……」"

 どうやら標的をこちらに変えた様だ。故郷でも良くあったシチュエーションだな。

“「キシェアァァァッ!!」"

 好都合だ。ここで私が仕留めれば良い。そうすれば、あの少年も助かる。さて、どうやって捌くかな?

“「キェアァァァッ」“
〈ビシッ〉
“「ギェフッ!?」"
「…?」

 どこからか、石が飛んできて怪鳥の目に直撃する。

「こっちだ!!」
“「ギェアァァァッ!!」”
「は!?」
「よそ見すんなチキン野郎!!ちゃんと追って来やがれ!!」
「はぁっ!?」
“「キシェアァァァッ!!」”

 さっきの少年だ。さっきの少年がやったらしい。

“「キシェアァァァッ!!(ドドッドドッドドッドドッ)」”

 怪鳥は、少年の方へと向かって行った。

「っ……!!(シュバッ)」

 あいつ、何やってんだ!?普通あの場面は一目散に逃げる所だろ!!

「(トンッタタタッ)」

 そして、自然とその足は少年と怪鳥鳥の元へ走り出していた。

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