20 / 73
1章.薬師の名門ブレルスクに入学した私は…
11.残り1週間経つまで通います。
しおりを挟む「(クルッ…ステステ)」
「………?」
しかし、何故か教師は出口の方へ向かっていった。なんだか、様子が違う。
「…アレクと言ったな?」
教員は扉の前で立ち止まり、こちらに背を向けたまま扉に手を掛けて言った。
「(ガララッ)……1週間、(クルッ)それがお前の残りの在学期間だ!!(ビシッ)覚えておれよ!!」
「……………え?」
「せいぜい残りの学園生活を楽しむ事だな!(ピシャッ)」
そう言い残すと、教師は部屋を出て行った。
「……ぇぇえ。」
お前が出て行くの?他の職員と相談してから決めるつもりだろうか?
「………(チッ)」
………根性無しが。
さっさとこの場で退学にしろよ。こっちは準備出来てるってのに。それとも、ヘイトが足りないというのか?あれ以上は流石に無理だっての。
……まぁ、あの様子なら1週間後の退学は決定事項だろう。だったら、相談されてからでも遅くないな。それより……
「残りの授業、どうすんだよ……あの馬鹿は…」
本来、この後の授業もあの教員が行うはずだった。だが、あの様子だと戻って来るとは思い難い。
「(ステステステ)」
責任能力があるとは思えないな。そもそも、退学になるなら今さらどうでも良い事だ。そうなると、私の取るべき行動はひとつ。
「(カチャッ)……帰るか。」
席に戻って鞄を手に取る。少し早いが、今日は帰ろう。さて、残りの1週間は王都立の図書館に通うとするかな。
「(ガシッ)おい待て!!」
「!?」
後ろから誰かに肩を掴まれ、呼び止められた。
この声は……たしか、授業中に話しかけて来た……
「(グィッ…クルッ…ガシッ)」
「っ!!」
そう思ったのも束の間、引き寄せられて向かい合わせになる。そして、何故か両肩を掴まれていた。
「な……何かな?」
「さっきお前、教師を追い出したよな?」
………あっ、そっか。授業が残ってるのに、教員を追い出したから怒ってんのか。授業が受けられないもんな。それで、頭突きの一つでもしようとか?
……まぁ、悪いのは私の方だし仕方ないな。
「(シュウゥゥゥン)……(グッ)」
目を瞑って歯を食い縛り、衝撃に備える。
「正直、スカッとしたぜ!」
「……?」
あれ?思ってたのと……
「(ガバッ)ありがとな!!」
「!?」
唐突に抱擁された。
「……えっ…と……怒って……無いのか?」
「怒る?まさか。あの野郎、前から気に食わなかったんだ。寧ろ精々した。」
「……それは良かった。」
あの教員に不満を抱いていたのは私だけではなかったんだな。
何はともあれ、彼からは好印象を得られた様だ。
「(バッ)俺はテルマーニ。(スッ)テルマって呼んでくれ。」
握手を求めるかの様に手を差し出された。
「(スッ)……アレクだ。(グッ)」
握手に応じる。案外、好感が持てる奴だな。
……ん?テルマーニ?……何処かで……
「なぁなぁ?出来ればあの教員の代わりに今日の残りの授業してくれないか?」
「……え?」
「頼むよ。あの様子じゃ戻って来ないだろうからさ。」
正直、私が授業を行う事は烏滸がましいと思う。しかし、自分のしでかした責任は取らねばなるまい。
「わかった。私で申し訳ないが、引き続き代理講師を勤めさせてもらう。」
………まっ、図書館に行くのは明日からでもいいか。
1
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
無限の成長 ~虐げられし少年、貴族を蹴散らし頂点へ~
りおまる
ファンタジー
主人公アレクシスは、異世界の中でも最も冷酷な貴族社会で生まれた平民の少年。幼少の頃から、力なき者は搾取される世界で虐げられ、貴族たちにとっては単なる「道具」として扱われていた。ある日、彼は突如として『無限成長』という異世界最強のスキルに目覚める。このスキルは、どんなことにも限界なく成長できる能力であり、戦闘、魔法、知識、そして社会的な地位ですらも無限に高めることが可能だった。
貴族に抑圧され、常に見下されていたアレクシスは、この力を使って社会の底辺から抜け出し、支配層である貴族たちを打ち破ることを決意する。そして、無限の成長力で貴族たちを次々と出し抜き、復讐と成り上がりの道を歩む。やがて彼は、貴族社会の頂点に立つ。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
闇属性転移者の冒険録
三日月新
ファンタジー
異世界に召喚された影山武(タケル)は、素敵な冒険が始まる予感がしていた。
ところが、闇属性だからと強制転移されてしまう。
頼れる者がいない異世界で、タケルは元冒険者に助けられる。生き方と戦い方を教わると、ついに彼の冒険が始まる。
強力な魔物や冒険者と死闘を繰り広げながら、タケルはSランク冒険者を目指す。
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ユウ
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
悠久の機甲歩兵
竹氏
ファンタジー
文明が崩壊してから800年。文化や技術がリセットされた世界に、その理由を知っている人間は居なくなっていた。 彼はその世界で目覚めた。綻びだらけの太古の文明の記憶と機甲歩兵マキナを操る技術を持って。 文明が崩壊し変わり果てた世界で彼は生きる。今は放浪者として。
※現在毎日更新中
婚約破棄騒動に巻き込まれたモブですが……
こうじ
ファンタジー
『あ、終わった……』王太子の取り巻きの1人であるシューラは人生が詰んだのを感じた。王太子と公爵令嬢の婚約破棄騒動に巻き込まれた結果、全てを失う事になってしまったシューラ、これは元貴族令息のやり直しの物語である。
フェル 森で助けた女性騎士に一目惚れして、その後イチャイチャしながらずっと一緒に暮らす話
カトウ
ファンタジー
こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。
チートなんてない。
日本で生きてきたという曖昧な記憶を持って、少年は育った。
自分にも何かすごい力があるんじゃないか。そう思っていたけれど全くパッとしない。
魔法?生活魔法しか使えませんけど。
物作り?こんな田舎で何ができるんだ。
狩り?僕が狙えば獲物が逃げていくよ。
そんな僕も15歳。成人の年になる。
何もない田舎から都会に出て仕事を探そうと考えていた矢先、森で倒れている美しい女性騎士をみつける。
こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。
女性騎士に一目惚れしてしまった、少し人と変わった考えを方を持つ青年が、いろいろな人と関わりながら、ゆっくりと成長していく物語。
になればいいと思っています。
皆様の感想。いただけたら嬉しいです。
面白い。少しでも思っていただけたらお気に入りに登録をぜひお願いいたします。
よろしくお願いします!
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿しております。
続きが気になる!もしそう思っていただけたのならこちらでもお読みいただけます。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる