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1章.薬師の名門ブレルスクに入学した私は…

11.残り1週間経つまで通います。

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「(クルッ…ステステ)」
「………?」

 しかし、何故か教師は出口の方へ向かっていった。なんだか、様子が違う。

「…アレクと言ったな?」

 教員は扉の前で立ち止まり、こちらに背を向けたまま扉に手を掛けて言った。

「(ガララッ)……1週間、(クルッ)それがお前の残りの在学期間だ!!(ビシッ)覚えておれよ!!」
「……………え?」
「せいぜい残りの学園生活を楽しむ事だな!(ピシャッ)」

 そう言い残すと、教師は部屋を出て行った。

「……ぇぇえ。」

 お前が出て行くの?他の職員と相談してから決めるつもりだろうか?

「………(チッ)」

 ………根性無しが。

 さっさとこの場で退学にしろよ。こっちは準備出来てるってのに。それとも、ヘイトが足りないというのか?あれ以上は流石に無理だっての。

 ……まぁ、あの様子なら1週間後の退学は決定事項だろう。だったら、相談されてからでも遅くないな。それより……

「残りの授業、どうすんだよ……あの馬鹿は…」

 本来、この後の授業もあの教員が行うはずだった。だが、あの様子だと戻って来るとは思い難い。

「(ステステステ)」

 責任能力があるとは思えないな。そもそも、退学になるなら今さらどうでも良い事だ。そうなると、私の取るべき行動はひとつ。

「(カチャッ)……帰るか。」

 席に戻って鞄を手に取る。少し早いが、今日は帰ろう。さて、残りの1週間は王都立の図書館に通うとするかな。

「(ガシッ)おい待て!!」
「!?」

 後ろから誰かに肩を掴まれ、呼び止められた。

 この声は……たしか、授業中に話しかけて来た……

「(グィッ…クルッ…ガシッ)」
「っ!!」

 そう思ったのも束の間、引き寄せられて向かい合わせになる。そして、何故か両肩を掴まれていた。

「な……何かな?」
「さっきお前、教師を追い出したよな?」

 ………あっ、そっか。授業が残ってるのに、教員を追い出したから怒ってんのか。授業が受けられないもんな。それで、頭突きの一つでもしようとか?

 ……まぁ、悪いのは私の方だし仕方ないな。

「(シュウゥゥゥン)……(グッ)」

 目を瞑って歯を食い縛り、衝撃に備える。

「正直、スカッとしたぜ!」
「……?」

 あれ?思ってたのと……

「(ガバッ)ありがとな!!」
「!?」

 唐突に抱擁された。

「……えっ…と……怒って……無いのか?」
「怒る?まさか。あの野郎、前から気に食わなかったんだ。寧ろ精々した。」
「……それは良かった。」

 あの教員に不満を抱いていたのは私だけではなかったんだな。

 何はともあれ、彼からは好印象を得られた様だ。

「(バッ)俺はテルマーニ。(スッ)テルマって呼んでくれ。」

 握手を求めるかの様に手を差し出された。

「(スッ)……アレクだ。(グッ)」

 握手に応じる。案外、好感が持てる奴だな。

 ……ん?テルマーニ?……何処かで……

「なぁなぁ?出来ればあの教員の代わりに今日の残りの授業してくれないか?」
「……え?」
「頼むよ。あの様子じゃ戻って来ないだろうからさ。」

 正直、私が授業を行う事は烏滸がましいと思う。しかし、自分のしでかした責任は取らねばなるまい。

「わかった。私で申し訳ないが、引き続き代理講師を勤めさせてもらう。」

 ………まっ、図書館に行くのは明日からでもいいか。
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