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1.王都への進学
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その後……
中央街で友人の馬車が大破したり、道中で思わぬ襲撃を受けたり、様々なトラブルに見舞われてドタバタした結果、到着が入学式当日になってしまった。
この調子じゃ入学式は遅刻だな。
「(ふわぁぁぁ)……ねむ……」
「随分と眠そうだな?道中もコックリコックリしてたし、春眠暁なんとかって奴かい?」
そこまで言ったなら言い切れよ。
「(ぐぃーっ)……まぁそんなとこです。ここ数日は入学準備やらでドタバタしてたので。」
「入学?あんちゃんも学生さんかい?」
「はいそうで……も?俺の他にもいたんですか?」
「ああ、つい数日前に同い年くらいの子を送ってった所だ。」
「……数日前?」
「確か、時間帯も今日とちょうど同じくらいだったはずだ。」
「……それはまた、凄い偶然ですね。どんな奴でしたか?」
「さぁ…包帯ぐるぐる巻きなもんでよくわかんなかったな。」
……いや、まさかな。ただの偶然だよな?
「それよりあんちゃん、眠いなら外を見てみな。」
「えっ?外?」
御者のおじさんに言われて外を見る。
《ヒュォォォォッ》
“「キーッキーッキーッキーッ」“
“「グルアァァァアッ」“
「……すげぇ。」
橋の下には樹海が広がっていた。
樹海は王都を囲むように広がる渓谷に生い茂り、深さは木々のてっぺんからでさえ橋まで数百メートルはありそうだ。
木々の奥深くからは獣達の雄叫びが聞こえ、木々が風で靡いている。
眼下に広がる光景は、読んで字が如く樹の海だった。
「どうだ?すげえだろ?眠気は醒めたか?」
「……はい。お陰で、割としっかり。」
噂には聞いていたが、想像以上だった。眠気も完全に吹っ飛んだな。
「ところで、入学式はいつなんだ?」
「今日です。」
「今日!?」
「いや…まぁ、色々あって出発が出遅れてしまいまして。一応参加は任意らしいので、このまま寮に向かおうかと。」
別に無理に参加する必要もないだろう。
「何時からだ?」
「……へ?」
「入学式は何時からか聞いてんだよ!」
「…9時半だったはずですけど」
「よし!しっかり捕まってろ!!」
「はい?」
「ハイヤーッ!!(ピシッ)」
“「ヒッヒーンッ」“
「駆け抜けろカーボ!!」
“「ヒーンッ(パカラッパカラッパカラッパカラッ)」“
「ちょ…(ぐいんっ)っとおっ!?(ガシッ)」
馬車が速度を上げた。辛うじて馬車に捕まる。
「学校は何処だ?直接送ってやるよ!!」
「えっ?良いんですか?」
「あぁ!他に客も居ないしな!!」
「あれ?でも検問は?」
「無理矢理突破する!なぁに、後で俺が怒られれば良いだけの話だ!」
「いや、ダメですよ!そこまでする必要はありません!」
「いいや、大アリだね!入学式の主役を遅刻させる訳にはいかねぇよ!」
「入学式の主役は貴族子息達です!俺は平民だから主役なんかじゃないです!!」
そう。王都の入学式の主役は貴族の子息達だ。
誰も口にはしないが、暗黙の了解として都外の俺ですら知っている。
平民が出しゃばるなんて……
「何言ってんだ!入学式の主役は、新入生全員だろうが!!貴賤なんて関係あるかっ!!」
「っ!!」
「それに!あんちゃんにとっても大切なイベントのはずだ!なんたって、王都で初めて経験する『晴れ舞台』なんだからな!初めては大切にしろ!胸を張って参加すれば良いんだよ!!」
「……(ゴクリ)」
おじさんの言う通りだ。
これから俺が入る学園は貴族子息達の巣窟。
今から弱気になってどうする?
そうだよ。俺は入学試験を合格したんだ。
だから、堂々としていれば良いんだ。
「……ありがとうございます。では、ブレルスク学園までお願いします。」
「ブレルスク?あの令息様御用達のエリート校か?」
「今年から平民も通える様になったんですよ。俺たちはその映えある第1期生ってわけです。」
「へ~あのブレルスクがねぇ。時代も変わるもんだねぇ。」
全くだ。まさか平民の俺でも入学出来るとはな。
「よし、検問だ!しっかり捕まってな!」
「はい!」
中央街で友人の馬車が大破したり、道中で思わぬ襲撃を受けたり、様々なトラブルに見舞われてドタバタした結果、到着が入学式当日になってしまった。
この調子じゃ入学式は遅刻だな。
「(ふわぁぁぁ)……ねむ……」
「随分と眠そうだな?道中もコックリコックリしてたし、春眠暁なんとかって奴かい?」
そこまで言ったなら言い切れよ。
「(ぐぃーっ)……まぁそんなとこです。ここ数日は入学準備やらでドタバタしてたので。」
「入学?あんちゃんも学生さんかい?」
「はいそうで……も?俺の他にもいたんですか?」
「ああ、つい数日前に同い年くらいの子を送ってった所だ。」
「……数日前?」
「確か、時間帯も今日とちょうど同じくらいだったはずだ。」
「……それはまた、凄い偶然ですね。どんな奴でしたか?」
「さぁ…包帯ぐるぐる巻きなもんでよくわかんなかったな。」
……いや、まさかな。ただの偶然だよな?
「それよりあんちゃん、眠いなら外を見てみな。」
「えっ?外?」
御者のおじさんに言われて外を見る。
《ヒュォォォォッ》
“「キーッキーッキーッキーッ」“
“「グルアァァァアッ」“
「……すげぇ。」
橋の下には樹海が広がっていた。
樹海は王都を囲むように広がる渓谷に生い茂り、深さは木々のてっぺんからでさえ橋まで数百メートルはありそうだ。
木々の奥深くからは獣達の雄叫びが聞こえ、木々が風で靡いている。
眼下に広がる光景は、読んで字が如く樹の海だった。
「どうだ?すげえだろ?眠気は醒めたか?」
「……はい。お陰で、割としっかり。」
噂には聞いていたが、想像以上だった。眠気も完全に吹っ飛んだな。
「ところで、入学式はいつなんだ?」
「今日です。」
「今日!?」
「いや…まぁ、色々あって出発が出遅れてしまいまして。一応参加は任意らしいので、このまま寮に向かおうかと。」
別に無理に参加する必要もないだろう。
「何時からだ?」
「……へ?」
「入学式は何時からか聞いてんだよ!」
「…9時半だったはずですけど」
「よし!しっかり捕まってろ!!」
「はい?」
「ハイヤーッ!!(ピシッ)」
“「ヒッヒーンッ」“
「駆け抜けろカーボ!!」
“「ヒーンッ(パカラッパカラッパカラッパカラッ)」“
「ちょ…(ぐいんっ)っとおっ!?(ガシッ)」
馬車が速度を上げた。辛うじて馬車に捕まる。
「学校は何処だ?直接送ってやるよ!!」
「えっ?良いんですか?」
「あぁ!他に客も居ないしな!!」
「あれ?でも検問は?」
「無理矢理突破する!なぁに、後で俺が怒られれば良いだけの話だ!」
「いや、ダメですよ!そこまでする必要はありません!」
「いいや、大アリだね!入学式の主役を遅刻させる訳にはいかねぇよ!」
「入学式の主役は貴族子息達です!俺は平民だから主役なんかじゃないです!!」
そう。王都の入学式の主役は貴族の子息達だ。
誰も口にはしないが、暗黙の了解として都外の俺ですら知っている。
平民が出しゃばるなんて……
「何言ってんだ!入学式の主役は、新入生全員だろうが!!貴賤なんて関係あるかっ!!」
「っ!!」
「それに!あんちゃんにとっても大切なイベントのはずだ!なんたって、王都で初めて経験する『晴れ舞台』なんだからな!初めては大切にしろ!胸を張って参加すれば良いんだよ!!」
「……(ゴクリ)」
おじさんの言う通りだ。
これから俺が入る学園は貴族子息達の巣窟。
今から弱気になってどうする?
そうだよ。俺は入学試験を合格したんだ。
だから、堂々としていれば良いんだ。
「……ありがとうございます。では、ブレルスク学園までお願いします。」
「ブレルスク?あの令息様御用達のエリート校か?」
「今年から平民も通える様になったんですよ。俺たちはその映えある第1期生ってわけです。」
「へ~あのブレルスクがねぇ。時代も変わるもんだねぇ。」
全くだ。まさか平民の俺でも入学出来るとはな。
「よし、検問だ!しっかり捕まってな!」
「はい!」
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