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8-2.遭遇②
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「(ベシャッ…ズルルル)……」
身体は宙を舞い、激しく木に打ち付けられた。
未だ飛び散る血飛沫越しに、目に映ったその姿は……
“「グルゥアアァァァッ!!」“
「……く…………ま……?」
クマだ。長い爪を持ったクマに、死角から襲われた。
それも、以前襲って来た熊達とは違う種類の様だ。全身を真っ黒な毛に覆われていて、目は血の様に赤い。初めて見る見た目をしている。恐らく、そこら中の獣の残骸の山はこのクマの仕業だろう。
「…ぅっ……く……」
やばいな、体が動かない。見えないが、直視出来ない有様になっている気がする。
……完全に油断していた。
いや、油断してたなんてレベルじゃないな、これは。
この森で生活を初めたあの日から、かれこれ1年と少し……こんな事は一度も無かった。
だから、心の中でこんな事は起こり得ないと決めつけていた。
以前、3馬鹿の言っていた事は本当だったのだ。
この森はとても危険で、生きて帰る事は叶わない。
にも関わらず、安全な森だと慢心してこのざまか。情けない。
これは……死ぬな。まぁ、元々その覚悟は出来ていた。
出来れば即死が良かったけど、これで………
「……?」
そういえば、さっきからクマがトドメを刺してこない。
“「(ザシュッザシュッザシュッ)」“
“「(ビクンッ)…ギェ…(ビクビクンッ)」“
見ると、クマは動かなくなった私には見向きもせず、他の瀕死の獣達をいたぶっていた。
何故、直ぐにトドメを刺さないのか。
簡単な事だ。こいつの目的は捕食ではない。
享楽……つまり、生き物を殺す事自体を楽しんでいるのだ。
聞いた事がある。シャチなどの知能が高い生物は『遊び』と呼ばれる行動をとるらしい。
しかもこいつは、すぐにトドメを刺さずに次第に弱り絶望に陥る獲物を痛ぶるという、悍ましい享楽に耽っているのだ。
差し当たって、ここの動物達はこいつのおもちゃで、私の命も今しがたこいつのおもちゃになった………と。
「………(ギリッ)」
命を何だと思ってんだ。こいつもあいつらと同じか?
「(グチグチ…ギチギチ……)」
……ん?
「(ガコッ…ゴキッ…ガキゴキッ……)」
身体の中で何かが起こっている。
見えないからあくまで予測だが、砕けた骨が、裂けた筋肉が、潰れた内臓が、元に戻りつつある様な気がする。
発想が飛躍している事は重々承知だが、全身の感覚からそうとしか思えない。
「(スゥ……)」
そして、身体中の傷が完全に塞がった。これは目視で確認したから間違いない。
「……(グッパーグッパー)………」
身体が……動く。むしろ、万全の状態と言っても良い。
“「グルゥグゥ(ザシュッ……ザシュッ……ザシュッ……)」“
“「ギッ…ギィ……ギィィ……」
だが、クマはこちらに見向きもせず、瀕死の獣達をいたぶっている。
「(スクッ)……(ザッ)」
ふざけんな。
「(ゴッ)」
“「グォ…?!」“
いっきに距離をつめ、その勢いを乗せた一撃を打ち込んだ。
チョロいな。隙だらけだ。
“「…ゥゥゥ……グルルル……」"
「……流石に無理か。」
この前のクマ達はこれでもいけたけど、こいつタフだな。毛皮と厚い脂肪が衝撃を奪うからか?けど……
“「ゴゥオォォッ!!(シャシャシャッ)」"
さっきより動きが大分遅くなった……いや、こっちが早くなったのか?これなら距離を取る必要も無いな。余裕で避けられそうだ。
「(シュシュッシュッ)」
“「ゴッ!?」"
「せいっ!(ズドッ)」
“「ンゴッ…ォ………(ドサァッ)」“
「………」
あっさり倒せた。やはりクマは鼻っ面が弱点だったか。
“「…グ……ゥゥ……」"
怯んではいるが、まだ生きてるのか。好都合だな。
「(ガシッ)」
“「……グォ?」“
「(ググ……バキッ)」
“「フゴッ!?」“
取り敢えず、爪を折って……
「(グサッ…ゴンゴンゴンッ)」
“「フゴッ!…ォォオッ……………」"
クマの重心に突き立て、押しピンの様にしてクマを地面に固定する。
「(ザクッ)」
"「フゴォッ!?」"
「(グチギチッ……プシュッ)」
"「フゴ…ゴ………」“
そして、心臓が動いているうちに手首から血抜きを始める。
「……さて、」
大量に獣肉ゲット……と言いたい所だが……
“「(モゾッ)…ゅ……ぅきゅ……きゅ……」
「……やはり、まだ生きていたか。」
周りの獣達は、クマの享楽のためにまだ生かされていた。
悪趣味な奴もいたもんだな。まぁ、そこは人間と同じか。
「………(スッ)」
何はともあれ、色々試す上でこの状況は都合が良い。クマの血抜きには時間がかかるだろうし、これらの薬の効果を早速試してみるか。
身体は宙を舞い、激しく木に打ち付けられた。
未だ飛び散る血飛沫越しに、目に映ったその姿は……
“「グルゥアアァァァッ!!」“
「……く…………ま……?」
クマだ。長い爪を持ったクマに、死角から襲われた。
それも、以前襲って来た熊達とは違う種類の様だ。全身を真っ黒な毛に覆われていて、目は血の様に赤い。初めて見る見た目をしている。恐らく、そこら中の獣の残骸の山はこのクマの仕業だろう。
「…ぅっ……く……」
やばいな、体が動かない。見えないが、直視出来ない有様になっている気がする。
……完全に油断していた。
いや、油断してたなんてレベルじゃないな、これは。
この森で生活を初めたあの日から、かれこれ1年と少し……こんな事は一度も無かった。
だから、心の中でこんな事は起こり得ないと決めつけていた。
以前、3馬鹿の言っていた事は本当だったのだ。
この森はとても危険で、生きて帰る事は叶わない。
にも関わらず、安全な森だと慢心してこのざまか。情けない。
これは……死ぬな。まぁ、元々その覚悟は出来ていた。
出来れば即死が良かったけど、これで………
「……?」
そういえば、さっきからクマがトドメを刺してこない。
“「(ザシュッザシュッザシュッ)」“
“「(ビクンッ)…ギェ…(ビクビクンッ)」“
見ると、クマは動かなくなった私には見向きもせず、他の瀕死の獣達をいたぶっていた。
何故、直ぐにトドメを刺さないのか。
簡単な事だ。こいつの目的は捕食ではない。
享楽……つまり、生き物を殺す事自体を楽しんでいるのだ。
聞いた事がある。シャチなどの知能が高い生物は『遊び』と呼ばれる行動をとるらしい。
しかもこいつは、すぐにトドメを刺さずに次第に弱り絶望に陥る獲物を痛ぶるという、悍ましい享楽に耽っているのだ。
差し当たって、ここの動物達はこいつのおもちゃで、私の命も今しがたこいつのおもちゃになった………と。
「………(ギリッ)」
命を何だと思ってんだ。こいつもあいつらと同じか?
「(グチグチ…ギチギチ……)」
……ん?
「(ガコッ…ゴキッ…ガキゴキッ……)」
身体の中で何かが起こっている。
見えないからあくまで予測だが、砕けた骨が、裂けた筋肉が、潰れた内臓が、元に戻りつつある様な気がする。
発想が飛躍している事は重々承知だが、全身の感覚からそうとしか思えない。
「(スゥ……)」
そして、身体中の傷が完全に塞がった。これは目視で確認したから間違いない。
「……(グッパーグッパー)………」
身体が……動く。むしろ、万全の状態と言っても良い。
“「グルゥグゥ(ザシュッ……ザシュッ……ザシュッ……)」“
“「ギッ…ギィ……ギィィ……」
だが、クマはこちらに見向きもせず、瀕死の獣達をいたぶっている。
「(スクッ)……(ザッ)」
ふざけんな。
「(ゴッ)」
“「グォ…?!」“
いっきに距離をつめ、その勢いを乗せた一撃を打ち込んだ。
チョロいな。隙だらけだ。
“「…ゥゥゥ……グルルル……」"
「……流石に無理か。」
この前のクマ達はこれでもいけたけど、こいつタフだな。毛皮と厚い脂肪が衝撃を奪うからか?けど……
“「ゴゥオォォッ!!(シャシャシャッ)」"
さっきより動きが大分遅くなった……いや、こっちが早くなったのか?これなら距離を取る必要も無いな。余裕で避けられそうだ。
「(シュシュッシュッ)」
“「ゴッ!?」"
「せいっ!(ズドッ)」
“「ンゴッ…ォ………(ドサァッ)」“
「………」
あっさり倒せた。やはりクマは鼻っ面が弱点だったか。
“「…グ……ゥゥ……」"
怯んではいるが、まだ生きてるのか。好都合だな。
「(ガシッ)」
“「……グォ?」“
「(ググ……バキッ)」
“「フゴッ!?」“
取り敢えず、爪を折って……
「(グサッ…ゴンゴンゴンッ)」
“「フゴッ!…ォォオッ……………」"
クマの重心に突き立て、押しピンの様にしてクマを地面に固定する。
「(ザクッ)」
"「フゴォッ!?」"
「(グチギチッ……プシュッ)」
"「フゴ…ゴ………」“
そして、心臓が動いているうちに手首から血抜きを始める。
「……さて、」
大量に獣肉ゲット……と言いたい所だが……
“「(モゾッ)…ゅ……ぅきゅ……きゅ……」
「……やはり、まだ生きていたか。」
周りの獣達は、クマの享楽のためにまだ生かされていた。
悪趣味な奴もいたもんだな。まぁ、そこは人間と同じか。
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