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9-1.追跡
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「(バンッ)アレク!旅に出ようぜ!」
「……何処に?」
「グラフケラ山だ。」
「火山地帯じゃないか。サラマンダーの討伐クエストでも受けたのか?」
「違う。火口に入るつもりはない。近くの街まで手紙を届けるだけだ。」
「えっ?何故わざわざ……」
「俺だって、年がら年中魔物を斬りまくってる訳じゃない。たまにはこういう依頼も受けるんだよ。せっかくだし、一緒に行かないか?」
「いや、せっかくの申し出だが……」
「ちな、そこら一帯には湯の湧き出る泉があるらしい。」
「(ピクッ)……何だって?」
「何でも、町興しでそいつを売りにした商売を始めたらしくて、賑わっているんだとか。浸かると不思議と疲れが取れるんだってよ。」
「…………」
「で?どうする?」
「………直ぐに支度を済ませるよ。」
「よし、そうと決まれば早速行こうぜ!」
「はい?」
「この手紙速達らしくてな。今日中に出発するから10分で支度してくれ。」
「10分!?」
「ほら、(グイッ)俺も手伝うからさっさと旅支度始めるぞ。」
「いや…ちょ…カイル!?」
「行くぞ!アレク!!」
「(ガバッ)急すぎるだろ!いくら何でも!!」
私は叫んだ。
「もう少し事前の相談って奴を……(キョロキョロ)あれ?」
ここは山小屋。私は1人。カイルは居ない。
「………」
夢か。最近、こういう夢が多いな。悪夢を見るよりはマシだが…………深く考えるのは辞めよう。
日課を始めるか。
私はアレク。拷問を受けて転生した私は、この森で恩人の帰りを待っている。
1週間前、悪夢みたいな事象を経て現在に至る。具体的な内容は割愛するが、薬の力で凄いことになった。
あれからも色々と悩んだが、これ以上考えても不毛だ。
だからこれは現実逃避ではない。決して違う。
カイルに聞きに行かないのも、向こうの都合を考えてだ。ここ連日夢に出て来て気まずいからではない。断じて違う。
それに、少なからず私のやる事は変わらない。
これからも、この小屋でひっそりと薬草の勉強をしていくだけだ。あの人の帰りを待ちながら。
この世界でこそ、私は……
「(ザワッ)ん?あぁ……いつもの…」
今日は何かな。出来れば食料が欲しいな。
「(ガチャッ)……おぉ、今日は木の実か。」
玄関の前には、様々な木の実の山が出来ていた。
“「(キュキュッ)」“
“「(キィウッ)」“
“「(キキッ)」"
向こうの木の上でリス達が様子を伺っている。
恐らく、これは恩返しのつもりなんだろう。
先日の悪夢の様な事象で瀕死の動物達と遭遇した。
丁度その時、今後作った薬の破棄方法についても悩んでいた。
捨てるのも勿体無いから生体実験も兼ねてそいつらに薬を使うことにした。
すると、次の日からこんな感じに、森の小動物達が貢物をして来る様になった。
今日は木の実だが、たまに瀕死の動物や蔓が絡まった動物が運び込まれる事がある。
そいつらを薬で治療したりすると再び恩返しが来る。
あの日以来、この森の小動物達とはそんな関わりを持つようになった。
最近では、この付近に住処を持つようになった様だ。とは言っても、まだ警戒はされている様で、手の届く距離までは来ない。当然ではある。私も一応は彼らの捕食者になりうるからな。
「………(はぁ)」
それにしても、こうして周囲に獣達が住み着く様になってみて初めてわかるけど、この森の獣達……というか、人も含めたこの世界の生き物は、なんというか、モヤモヤとしたものを出している。
近い表現だと、気配って感じだ。結構距離が離れていてもそれを感じる事が出来る。
そして、以前は感じられなかったそれを、今はたくさん感じる………となると、マジで以前は周囲に獣が居なかったんだな。
ちょっと前まで静かだったのに、今は騒がしい限りだ。騒がし過ぎて落ち着かない。
「………森に入るか。」
食料については問題ない。だが、薬草は自分で採ってくる他ない為、今日も森へ入る。ついでに……少し森林浴するかな。
ー1時間後
「(ザッザッザッ)」
最近、毎日の様に森に入る様になったけど、相変わらず獣に遭遇しないな。やはり、あの薬を飲まないとほとんどの獣と遭遇しないみたいだ。
一通り回収出来たし、そろそろ……
「(ゾワッ)ん!?」
まただ。
ここ最近、森の中でたまに感じる禍々しい……気配?とにかく嫌な感じだ。いい加減、その正体が気になってきている。しかし、こちらから気配の元へと向かおうとしても、どんどん離れてしまい、いつの間にか見失ってしまう。まるで、向こうから避けているかの様だ。
なら、試してみるかな。
「……よし、あの辺りだな。」
概ねの距離と方角は覚えた。
「(トクトクッ……ジャバジャバッ)」
この薬を飲むと、モヤモヤとした気配を感じ取れなくなる。よって、この薬を飲んだ状態ではあの禍々しい気配が探せない。
「(コキュッ)」
ならば、気配を察知してから薬を飲み、その脚力で急行したらどうだろう。
「(タタタッ)」
一体そこには何が居るのか。とにかく行ってみよう。
「……何処に?」
「グラフケラ山だ。」
「火山地帯じゃないか。サラマンダーの討伐クエストでも受けたのか?」
「違う。火口に入るつもりはない。近くの街まで手紙を届けるだけだ。」
「えっ?何故わざわざ……」
「俺だって、年がら年中魔物を斬りまくってる訳じゃない。たまにはこういう依頼も受けるんだよ。せっかくだし、一緒に行かないか?」
「いや、せっかくの申し出だが……」
「ちな、そこら一帯には湯の湧き出る泉があるらしい。」
「(ピクッ)……何だって?」
「何でも、町興しでそいつを売りにした商売を始めたらしくて、賑わっているんだとか。浸かると不思議と疲れが取れるんだってよ。」
「…………」
「で?どうする?」
「………直ぐに支度を済ませるよ。」
「よし、そうと決まれば早速行こうぜ!」
「はい?」
「この手紙速達らしくてな。今日中に出発するから10分で支度してくれ。」
「10分!?」
「ほら、(グイッ)俺も手伝うからさっさと旅支度始めるぞ。」
「いや…ちょ…カイル!?」
「行くぞ!アレク!!」
「(ガバッ)急すぎるだろ!いくら何でも!!」
私は叫んだ。
「もう少し事前の相談って奴を……(キョロキョロ)あれ?」
ここは山小屋。私は1人。カイルは居ない。
「………」
夢か。最近、こういう夢が多いな。悪夢を見るよりはマシだが…………深く考えるのは辞めよう。
日課を始めるか。
私はアレク。拷問を受けて転生した私は、この森で恩人の帰りを待っている。
1週間前、悪夢みたいな事象を経て現在に至る。具体的な内容は割愛するが、薬の力で凄いことになった。
あれからも色々と悩んだが、これ以上考えても不毛だ。
だからこれは現実逃避ではない。決して違う。
カイルに聞きに行かないのも、向こうの都合を考えてだ。ここ連日夢に出て来て気まずいからではない。断じて違う。
それに、少なからず私のやる事は変わらない。
これからも、この小屋でひっそりと薬草の勉強をしていくだけだ。あの人の帰りを待ちながら。
この世界でこそ、私は……
「(ザワッ)ん?あぁ……いつもの…」
今日は何かな。出来れば食料が欲しいな。
「(ガチャッ)……おぉ、今日は木の実か。」
玄関の前には、様々な木の実の山が出来ていた。
“「(キュキュッ)」“
“「(キィウッ)」“
“「(キキッ)」"
向こうの木の上でリス達が様子を伺っている。
恐らく、これは恩返しのつもりなんだろう。
先日の悪夢の様な事象で瀕死の動物達と遭遇した。
丁度その時、今後作った薬の破棄方法についても悩んでいた。
捨てるのも勿体無いから生体実験も兼ねてそいつらに薬を使うことにした。
すると、次の日からこんな感じに、森の小動物達が貢物をして来る様になった。
今日は木の実だが、たまに瀕死の動物や蔓が絡まった動物が運び込まれる事がある。
そいつらを薬で治療したりすると再び恩返しが来る。
あの日以来、この森の小動物達とはそんな関わりを持つようになった。
最近では、この付近に住処を持つようになった様だ。とは言っても、まだ警戒はされている様で、手の届く距離までは来ない。当然ではある。私も一応は彼らの捕食者になりうるからな。
「………(はぁ)」
それにしても、こうして周囲に獣達が住み着く様になってみて初めてわかるけど、この森の獣達……というか、人も含めたこの世界の生き物は、なんというか、モヤモヤとしたものを出している。
近い表現だと、気配って感じだ。結構距離が離れていてもそれを感じる事が出来る。
そして、以前は感じられなかったそれを、今はたくさん感じる………となると、マジで以前は周囲に獣が居なかったんだな。
ちょっと前まで静かだったのに、今は騒がしい限りだ。騒がし過ぎて落ち着かない。
「………森に入るか。」
食料については問題ない。だが、薬草は自分で採ってくる他ない為、今日も森へ入る。ついでに……少し森林浴するかな。
ー1時間後
「(ザッザッザッ)」
最近、毎日の様に森に入る様になったけど、相変わらず獣に遭遇しないな。やはり、あの薬を飲まないとほとんどの獣と遭遇しないみたいだ。
一通り回収出来たし、そろそろ……
「(ゾワッ)ん!?」
まただ。
ここ最近、森の中でたまに感じる禍々しい……気配?とにかく嫌な感じだ。いい加減、その正体が気になってきている。しかし、こちらから気配の元へと向かおうとしても、どんどん離れてしまい、いつの間にか見失ってしまう。まるで、向こうから避けているかの様だ。
なら、試してみるかな。
「……よし、あの辺りだな。」
概ねの距離と方角は覚えた。
「(トクトクッ……ジャバジャバッ)」
この薬を飲むと、モヤモヤとした気配を感じ取れなくなる。よって、この薬を飲んだ状態ではあの禍々しい気配が探せない。
「(コキュッ)」
ならば、気配を察知してから薬を飲み、その脚力で急行したらどうだろう。
「(タタタッ)」
一体そこには何が居るのか。とにかく行ってみよう。
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