15 / 19
9-1.追跡
しおりを挟む
「(バンッ)アレク!旅に出ようぜ!」
「……何処に?」
「グラフケラ山だ。」
「火山地帯じゃないか。サラマンダーの討伐クエストでも受けたのか?」
「違う。火口に入るつもりはない。近くの街まで手紙を届けるだけだ。」
「えっ?何故わざわざ……」
「俺だって、年がら年中魔物を斬りまくってる訳じゃない。たまにはこういう依頼も受けるんだよ。せっかくだし、一緒に行かないか?」
「いや、せっかくの申し出だが……」
「ちな、そこら一帯には湯の湧き出る泉があるらしい。」
「(ピクッ)……何だって?」
「何でも、町興しでそいつを売りにした商売を始めたらしくて、賑わっているんだとか。浸かると不思議と疲れが取れるんだってよ。」
「…………」
「で?どうする?」
「………直ぐに支度を済ませるよ。」
「よし、そうと決まれば早速行こうぜ!」
「はい?」
「この手紙速達らしくてな。今日中に出発するから10分で支度してくれ。」
「10分!?」
「ほら、(グイッ)俺も手伝うからさっさと旅支度始めるぞ。」
「いや…ちょ…カイル!?」
「行くぞ!アレク!!」
「(ガバッ)急すぎるだろ!いくら何でも!!」
私は叫んだ。
「もう少し事前の相談って奴を……(キョロキョロ)あれ?」
ここは山小屋。私は1人。カイルは居ない。
「………」
夢か。最近、こういう夢が多いな。悪夢を見るよりはマシだが…………深く考えるのは辞めよう。
日課を始めるか。
私はアレク。拷問を受けて転生した私は、この森で恩人の帰りを待っている。
1週間前、悪夢みたいな事象を経て現在に至る。具体的な内容は割愛するが、薬の力で凄いことになった。
あれからも色々と悩んだが、これ以上考えても不毛だ。
だからこれは現実逃避ではない。決して違う。
カイルに聞きに行かないのも、向こうの都合を考えてだ。ここ連日夢に出て来て気まずいからではない。断じて違う。
それに、少なからず私のやる事は変わらない。
これからも、この小屋でひっそりと薬草の勉強をしていくだけだ。あの人の帰りを待ちながら。
この世界でこそ、私は……
「(ザワッ)ん?あぁ……いつもの…」
今日は何かな。出来れば食料が欲しいな。
「(ガチャッ)……おぉ、今日は木の実か。」
玄関の前には、様々な木の実の山が出来ていた。
“「(キュキュッ)」“
“「(キィウッ)」“
“「(キキッ)」"
向こうの木の上でリス達が様子を伺っている。
恐らく、これは恩返しのつもりなんだろう。
先日の悪夢の様な事象で瀕死の動物達と遭遇した。
丁度その時、今後作った薬の破棄方法についても悩んでいた。
捨てるのも勿体無いから生体実験も兼ねてそいつらに薬を使うことにした。
すると、次の日からこんな感じに、森の小動物達が貢物をして来る様になった。
今日は木の実だが、たまに瀕死の動物や蔓が絡まった動物が運び込まれる事がある。
そいつらを薬で治療したりすると再び恩返しが来る。
あの日以来、この森の小動物達とはそんな関わりを持つようになった。
最近では、この付近に住処を持つようになった様だ。とは言っても、まだ警戒はされている様で、手の届く距離までは来ない。当然ではある。私も一応は彼らの捕食者になりうるからな。
「………(はぁ)」
それにしても、こうして周囲に獣達が住み着く様になってみて初めてわかるけど、この森の獣達……というか、人も含めたこの世界の生き物は、なんというか、モヤモヤとしたものを出している。
近い表現だと、気配って感じだ。結構距離が離れていてもそれを感じる事が出来る。
そして、以前は感じられなかったそれを、今はたくさん感じる………となると、マジで以前は周囲に獣が居なかったんだな。
ちょっと前まで静かだったのに、今は騒がしい限りだ。騒がし過ぎて落ち着かない。
「………森に入るか。」
食料については問題ない。だが、薬草は自分で採ってくる他ない為、今日も森へ入る。ついでに……少し森林浴するかな。
ー1時間後
「(ザッザッザッ)」
最近、毎日の様に森に入る様になったけど、相変わらず獣に遭遇しないな。やはり、あの薬を飲まないとほとんどの獣と遭遇しないみたいだ。
一通り回収出来たし、そろそろ……
「(ゾワッ)ん!?」
まただ。
ここ最近、森の中でたまに感じる禍々しい……気配?とにかく嫌な感じだ。いい加減、その正体が気になってきている。しかし、こちらから気配の元へと向かおうとしても、どんどん離れてしまい、いつの間にか見失ってしまう。まるで、向こうから避けているかの様だ。
なら、試してみるかな。
「……よし、あの辺りだな。」
概ねの距離と方角は覚えた。
「(トクトクッ……ジャバジャバッ)」
この薬を飲むと、モヤモヤとした気配を感じ取れなくなる。よって、この薬を飲んだ状態ではあの禍々しい気配が探せない。
「(コキュッ)」
ならば、気配を察知してから薬を飲み、その脚力で急行したらどうだろう。
「(タタタッ)」
一体そこには何が居るのか。とにかく行ってみよう。
「……何処に?」
「グラフケラ山だ。」
「火山地帯じゃないか。サラマンダーの討伐クエストでも受けたのか?」
「違う。火口に入るつもりはない。近くの街まで手紙を届けるだけだ。」
「えっ?何故わざわざ……」
「俺だって、年がら年中魔物を斬りまくってる訳じゃない。たまにはこういう依頼も受けるんだよ。せっかくだし、一緒に行かないか?」
「いや、せっかくの申し出だが……」
「ちな、そこら一帯には湯の湧き出る泉があるらしい。」
「(ピクッ)……何だって?」
「何でも、町興しでそいつを売りにした商売を始めたらしくて、賑わっているんだとか。浸かると不思議と疲れが取れるんだってよ。」
「…………」
「で?どうする?」
「………直ぐに支度を済ませるよ。」
「よし、そうと決まれば早速行こうぜ!」
「はい?」
「この手紙速達らしくてな。今日中に出発するから10分で支度してくれ。」
「10分!?」
「ほら、(グイッ)俺も手伝うからさっさと旅支度始めるぞ。」
「いや…ちょ…カイル!?」
「行くぞ!アレク!!」
「(ガバッ)急すぎるだろ!いくら何でも!!」
私は叫んだ。
「もう少し事前の相談って奴を……(キョロキョロ)あれ?」
ここは山小屋。私は1人。カイルは居ない。
「………」
夢か。最近、こういう夢が多いな。悪夢を見るよりはマシだが…………深く考えるのは辞めよう。
日課を始めるか。
私はアレク。拷問を受けて転生した私は、この森で恩人の帰りを待っている。
1週間前、悪夢みたいな事象を経て現在に至る。具体的な内容は割愛するが、薬の力で凄いことになった。
あれからも色々と悩んだが、これ以上考えても不毛だ。
だからこれは現実逃避ではない。決して違う。
カイルに聞きに行かないのも、向こうの都合を考えてだ。ここ連日夢に出て来て気まずいからではない。断じて違う。
それに、少なからず私のやる事は変わらない。
これからも、この小屋でひっそりと薬草の勉強をしていくだけだ。あの人の帰りを待ちながら。
この世界でこそ、私は……
「(ザワッ)ん?あぁ……いつもの…」
今日は何かな。出来れば食料が欲しいな。
「(ガチャッ)……おぉ、今日は木の実か。」
玄関の前には、様々な木の実の山が出来ていた。
“「(キュキュッ)」“
“「(キィウッ)」“
“「(キキッ)」"
向こうの木の上でリス達が様子を伺っている。
恐らく、これは恩返しのつもりなんだろう。
先日の悪夢の様な事象で瀕死の動物達と遭遇した。
丁度その時、今後作った薬の破棄方法についても悩んでいた。
捨てるのも勿体無いから生体実験も兼ねてそいつらに薬を使うことにした。
すると、次の日からこんな感じに、森の小動物達が貢物をして来る様になった。
今日は木の実だが、たまに瀕死の動物や蔓が絡まった動物が運び込まれる事がある。
そいつらを薬で治療したりすると再び恩返しが来る。
あの日以来、この森の小動物達とはそんな関わりを持つようになった。
最近では、この付近に住処を持つようになった様だ。とは言っても、まだ警戒はされている様で、手の届く距離までは来ない。当然ではある。私も一応は彼らの捕食者になりうるからな。
「………(はぁ)」
それにしても、こうして周囲に獣達が住み着く様になってみて初めてわかるけど、この森の獣達……というか、人も含めたこの世界の生き物は、なんというか、モヤモヤとしたものを出している。
近い表現だと、気配って感じだ。結構距離が離れていてもそれを感じる事が出来る。
そして、以前は感じられなかったそれを、今はたくさん感じる………となると、マジで以前は周囲に獣が居なかったんだな。
ちょっと前まで静かだったのに、今は騒がしい限りだ。騒がし過ぎて落ち着かない。
「………森に入るか。」
食料については問題ない。だが、薬草は自分で採ってくる他ない為、今日も森へ入る。ついでに……少し森林浴するかな。
ー1時間後
「(ザッザッザッ)」
最近、毎日の様に森に入る様になったけど、相変わらず獣に遭遇しないな。やはり、あの薬を飲まないとほとんどの獣と遭遇しないみたいだ。
一通り回収出来たし、そろそろ……
「(ゾワッ)ん!?」
まただ。
ここ最近、森の中でたまに感じる禍々しい……気配?とにかく嫌な感じだ。いい加減、その正体が気になってきている。しかし、こちらから気配の元へと向かおうとしても、どんどん離れてしまい、いつの間にか見失ってしまう。まるで、向こうから避けているかの様だ。
なら、試してみるかな。
「……よし、あの辺りだな。」
概ねの距離と方角は覚えた。
「(トクトクッ……ジャバジャバッ)」
この薬を飲むと、モヤモヤとした気配を感じ取れなくなる。よって、この薬を飲んだ状態ではあの禍々しい気配が探せない。
「(コキュッ)」
ならば、気配を察知してから薬を飲み、その脚力で急行したらどうだろう。
「(タタタッ)」
一体そこには何が居るのか。とにかく行ってみよう。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
常世の守り主 ―異説冥界神話談―
双子烏丸
ファンタジー
かつて大切な人を失った青年――。
全てはそれを取り戻すために、全てを捨てて放浪の旅へ。
長い、長い旅で心も体も擦り減らし、もはやかつてとは別人のように成り果ててもなお、自らの願いのためにその身を捧げた。
そして、もはやその旅路が終わりに差し掛かった、その時。……青年が決断する事とは。
——
本編最終話には創音さんから頂いた、イラストを掲載しました!


これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅
聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。

巻き込まれて気づけば異世界 ~その配達員器用貧乏にて~
細波
ファンタジー
(3月27日変更)
仕事中に異世界転移へ巻き込まれたオッサン。神様からチートもらってやりたいように生きる…
と思ってたけど、人から頼まれる。神から頼まれる。自分から首をつっこむ!
「前の世界より黒くないし、社畜感無いから余裕っすね」
周りの人も神も黒い!
「人なんてそんなもんでしょ? 俺だって黒い方だと思うし」
そんな元オッサンは今日も行く!

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる