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1.突然の別れ

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「(ゴッガッバキッガッガッゴスッガンガンガンッ)」
「よし、じゃあそろそろ話して貰おうか?」
「いえ…(ゲホッ)です…から……人…違い…(ゴホゴホッ)」
「んなわけねぇよ。知ってんだぜ?薬をばら撒いてんのはお前だろ?」
「……知りま…せん!わたしは…ただの……コンビニ…店員……です!」
「じゃあ、ただのコンビニ店員が月一で病院に足繁く通ってんのは何故だ?例の薬を取りに行ってんだろ?」
「…健康…診断…です!!」
「そんな嘘が通じると思ってんのか?」
「本当…です!診断書だって……」
「それだけじゃない。お前、地域でも評判良いらしいじゃねぇか?まるで、誰からも恨みを買わない様に生きてるみたいじゃねぇかよ?なんかやましいことがあんだろ?」
「……それ…は…言い…掛かり……」
「他にもあるぞ?お前の通帳の残高…(ピラッ)ただのコンビニ店員が、こんな大金を持ってる筈ないだろ?」
「老後の…為に!生活…切り詰めて……貯金…してんだよ!!そもそも!大金ぐらい、真面目に働けば(ゴッ)んぐっ!?」
「うるせぇよ。さっさと吐け。」
「エ゛ヴッ…エ゛ッ(ビチャビチャビチャッ)」
「おいおい、汚ったねぇなぁ?情報を吐けっつってんだよ。ゲボ吐いてんじゃねぇ。」
「エ゛ホッ…ゲホゲホッ………(ガッ)んぐっ!!」
「いい加減にしろ!手間取らせんじゃねぇ!!」
「…あの~、カラスマさん?」
「ん?何だ?」
「いや、その……さすがにやり過ぎじゃないっすかね?」
「流石に、死んじまいませんか?」
「それに、こんだけやっても何も言わねぇって事は、本当に人違いなんじゃ……」
「あ゛?」
「「「(ビクッ)っ!?」」」
「それじゃあ何か?お前らは、全く関係ない奴を攫って来たって言うのか?」
「い…いえいえ!そんなまさか……」
「だよなぁ?それに、やっぱりこいつは何かを隠してる。間違いない。」
「えっと……何かとは?」
「知らん。」
「「「え?」」」
「だが、こいつは何かを知っている。」
「あの、何を根拠に言ってるんです?」
「(ザッ)このオレの勘だ。」
「「「あ…………はい。」」」
「…………」
「(コキコキッ)しかし、殴るだけじゃダメみたいだな。おい、スプーンあるか?」
「あっ、はい!(スッ)どうぞ!」
「(パシッ)……ふぅ~、よしよし。」
「えっと……カラスマさん?スプーンで何を?」
「あ?決まってんだろ?拷問に使うんだよ。」
「へっ?」
「スプーンで……拷問?」
「………?」
「よしお前、(スッ)こいつを使え。」
「えっ?え~っと……使うって、どうやって?」
「そいつの目玉を抉り出せ。」
「っ!?」
「えっ!?め…目玉を!?」
「そうだ。目の次は耳、鼻、そして皮だ。全身の皮は(スッ)このピーラーを使え。痛みが増す様に調整してある。ただし、口や喉は止めろよ?情報を聞き出せ無くなるからな。」
「う…うっす。」
「………っ(ガクガクガクガク)」
「よし……聞いてたな。そういうわけだから、されたくなけりゃさっさと……」
「だっ!だから!!本当に人違いなんだって……」
「よし、やれ。」
「は…はい!!」
「あ…や…やめ……」










「あ゛あ゛ぁ゛っ!!??(ガバッ)」

 ベッドから飛び起きた。

「はぁっはぁっ…はぁっ……………夢か。」

 毎朝、こんな悪夢で目を覚ます。最悪だ。忘れたい。

 ここは森の山小屋、夢に出て来た男たちはいない。
 前世で集団リンチされて、放置されて深く絶望したわたしは、気づくと森に捨てられた瀕死の子供に転生していた。
 そして、善良な人に拾われてアレクと名付けられた。
 あれから3ヶ月経つけど、未だにここが何処なのかも、何故転生したのかも分からない。現時点で分かっていることは3つ。

 最初の一つ、ここはわたしの知る地球じゃない。ここは知らない星なんだって事実を、夜空に浮かぶ二つの月に思い知らされた。…まぁ、ここが地球じゃないという事は薄々分かっていたけれども。

 もう一つは、拾ってくれたあの人の職業だ。部屋には小難しい本と、目盛りの彫られた透明な容器が並び、棚には瓶詰めにされた草花が置かれている。何よりも部屋に漂う鼻を刺す様な薬草類の刺激臭は、私に使われている薬の匂いそのものだった。察するに、あの人は薬師なんだと思う。

 あの人…アランさんはたまに薬草や食料の採取のために森に出掛けては、毎日泊まり込みで治療してくれた。
 そして、あの人からの治療とリハビリを受け、その甲斐もあって歩けるまでになった。ここ3ヶ月は、特に異常は見られず、経過は良好だ。あの人のお陰である程度、まともな生活が送れる様になって来た。

 そうして、わたしはあの人に段々と心を許していった。だから、これまであの人に隠しながら発声の練習をしてきた。今日は、感謝とわたしの経緯を伝えたいと思ってる。驚くかな?どんな顔をするだろうか?今から楽しみだ。

 そうしてわたしは、時計を見ながらあの人の帰りを……………

「………(キョロキョロ)」

 変だな。もうそろそろ、戻って来る頃の筈。いつもなら、薬を調合してくれている頃じゃないか?この3ヶ月間、どんな時でも時間通りに薬を作って飲ませてくれていた。どうやら保存が効かない薬らしく、作り置きはない。

「………どうするかな?」

 薬学に精通している訳じゃ無い。だが、あの薬の服用をしなければ、あの苦痛が訪れる事は直感的に理解していた。このまま薬を飲まなければ、今度こそ苦痛に悶えて死ぬだろう。

「………」

 あの人が帰って来なければ、わたしは苦痛に塗れて死ぬ。だが、それは本来の運命に戻るだけだ。あの人を恨む理由にはならない。このまま運命に身を任せるのが筋ってものだろう。例え今死んだとしても、誰にも迷惑を掛ける事は……

「……………(くしゃぁっくしゃくしゃっ!)」

 前髪を掻きむしる。

「……何考えてんだか。」

 現時点でわかっている事………最後の一つ。それは、あの人が居なければ、あのまま地獄の苦痛と世界への怨みを抱きながら朽ち果てていく運命だったということだ。どんな理由があったかはわからないが、わたしの苦しみを和らげてくれたのは事実だ。あの人に救われた命なんだから、あの人の為に使いたい。

「……救って貰った恩も返さずに死ぬほど、身勝手じゃないさ。(ガラガラガラッ)」

 引き出しから道具を取り出す。

「えっと…たしか、これとこれと……あ、これもか。(ガチャガチャガチャッ)」

 戸棚から薬草の瓶も取り出す。

「……よし、これで良いかな?」

 そうしてわたしは、薬を作る準備をした。この薬はそんなに日持ちしないらしく、毎日作る必要があった。だから、3ヶ月間毎日、あの人の手際を見る事が出来た。手順や必要な材料・道具はわかる。あの人の作ってくれるこの薬だけが、この地獄の様な苦しみを和らげてくれる。だから、自分で作れる様になれば、あの人の足を引っ張る事もなくなる筈だと思って見ながら覚えた。

 まさか、こうして役に立つとは……いや、実は想定してたのかもしれない。こういう状況を。

「よし、始めるか!!」

ー数十分後

 当然、最初からうまく行くとは思って無かった。だが、どちらにしろ薬は必要だった。

 だから、挑戦してみようと思った。

 何度かの失敗の末、ようやく再現に成功した。肝は、2種類の薬を作ってから混合する時の比率だった。作るたびにそれぞれの濃度にバラつきが出る為、随時混合比率を調節する必要がある。

「さてと…(コクコクコクッ)」

 早速、完成した薬を飲んでみる。すると…

「っ…………(シュォォォォン)」

 いつもの感覚だ。14回目でやっと成功した。

「……ふぅ。」

 そうして、わたしは自身の治療薬の作成に成功した。これで、治療は継続出来る。

 そして、自ずとわたしのやる事は決まっていた。

 ただひたすら待つだけだ。

 もしかしたら、また戻ってくるかもしれない。だから、それまではわたしがここで待ち続けようと思った。

 せいぜい生きてみますよ。アランさん、あなたが戻って来るまで。
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