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剛腕FULL SWING

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〈ねえ貴方これでどうかしら?〉
私の手に乗せた私達の子の身体を裏の貴方に見せる
[いいんじゃないか?素敵だよ]
〈ふふ。初めてにしては良く出来たわ。…………後は中身ね。〉
[ああ、そうだね。どうする?流石に私達でも心をイチからは創れないよ…]
〈そうね。だからちょっと貰っちゃおうかと思うの〉
[貰う?魂を引き抜くのかい?元の持ち主は死んでしまうよ?]
〈少しだけよ!出来れば今にも死にそうな子から取りたいわ〉
[何でまた…そんな事したら本当に死ぬかもしれないよ?]
〈死んだら全部を貰うのよ〉
[そうか…………ではどの子から抜き取る?]
私達周りにモニターが現れる。いろいろな世界の生き物達が映し出される。
その中には生まれたばかりの子もいれば…
死にゆく子もいる
〈あっ!この子にしましょう?〉
貴女が指差した画面には独りの男の子が今にも死に絶えそうだった。
[若すぎないかい?貴女が創った肉体より大分若いよ?]
〈いいの!魂は若いほうが馴染みやすいわ!〉
[わかった。じゃあそうしよう]

そうして私達の子供に魂が宿った
手の上の我が子が目覚める
[〈おはよう。可愛い我が子。私達が父母よ〉]





少女が辺りを見回し口に手を当てる。混乱している様子だ。無理もない、死んだと思ったら異世界に飛ばされたのだ彼女でなくてもそうなるだろう。
(急に見知らぬ土地に飛ばされたのだ、なるべく驚かせないように自然に優しく…)
神様から教わった通り対象を驚かせない様にゆっくり近づき
「こんにちは、異世界転生者さん」
と声を掛けた
彼女は僕の言葉に驚いて腰を抜かしてしまったらしく道路にヘナヘナと座り込んだ
「申し訳ない驚かしてしまったね。さあ、お手をどうぞ」
『あ、ありがとうございます…』
彼女の長い赤髪が風になびく
恐る恐る彼女は私に手を伸ばした。

『私はメアリーと言います。さっき学校の階段で派手に転んでしまったハズなのに…ここはどこなの?』
辺りを見回し不安げな彼女に事情を説明する
『取り敢えず貴方が私に付いててくれるのね、わかったわ!』
エメラルドグリーンの瞳が微笑む
『これからよろしくね■■■』
「よろしくメアリー」
僕達は握手を交わした

(何だか胸に違和感が…不整脈かな)

この位の状態異常なら大丈夫だろう。何せ僕は今日から初めて異世界転生者のサポート任務に就いたのだ。ここまで育ててくれた神様に心配は掛けられない。
そうして彼女と僕の旅が始まったのだ。



もぞもぞ…
「ん?眩しっ?!」
窓から入る太陽の日差しで目が覚める。が、身体が動かない。
「ファズ?」
ファズが俺を抱え込んで眠っているからだ。
(昨日は…ランド兄ちゃんとお風呂行って…)
昨日の行為を思い出しかけたがファズの鎖骨に頭突きして有耶無耶にする
「うぐっ!!」
「むぅっ!!」
痛そうに顔を歪めるファズだったがより俺を密着させてきたので困った。
(…………今何時だろ?)
ファズに抱きしめられた俺の視界は90度位しか可動範囲が無い。時間がまったく分からん。
「ファズ~?起きて~!!」
頭をファズにグリグリ擦り付ける
「ん…?……まだ寝てなさい…」
チュッ
一回目蓋が開き俺を見て髪に口づけを落とし閉じる
「寝るな~!!多分結構時間経ってるぞ?日出てるし!!」
「えぇ……あ、ほんとだ。」
不満そうな声の後ガバッと勢い良く起き上がる
「ぉわわわ?!」
抱き締められてた俺も巻き込まれる
「……………?何でエデが僕のベッドに?」
「こっちのセリフだよ」
ファズはまだ寝ぼけているのか脳内データをLoading中だ。寝癖も凄くてあちこち跳ねてる
「ああ…昨日…いや今日か。ランドさんがエデを運んで部屋まで来て…一緒に寝たんでした」
ポンッと手を打つ
「何で一緒に寝たのさ。俺のベッドに置いてよ」
「んなにをー?!!!あんな遅い時間までランドさんの所に居たくせに僕と一緒には寝たく無いと?!は~怒りましたよ!今日は1日僕とベッドで過ごします。はい、決定!!!!」
「あっ?!わわわ?!」
ドサッ
上体を起こしてた身体をまた後ろへ戻されベッドに沈む。浮遊感怖かったわい!!
「ちょっと?!ファズ?!」
ペチペチとファズを叩くがふて寝を決め込んでいる。脚まで絡ませて絶対離さない!という意気込みを感じた。


ぐきゅるる…
腹の音が鳴り結局起きた。寝てても腹は減る。
「寝過ぎも良くないね………」
変な姿勢で拘束されてたからか身体が痛い
身体を折り曲げるとミシミシ音がする
「そうですね…………アタタ」
俺はファズのベッドで靴下を履く手を止めてファズを見る
「どっか痛いの?」
「寝すぎたせいか…頭痛が……」
目を閉じ手で頭を押さえてる
時間は正午。
「大丈夫?ごはんやめる?」
「大丈夫ですよ。直ぐに治まりますから。」
彼は偶にこうなる。頭痛持ちって大変だな。
取り敢えずファズの頭痛が治まるまで部屋でゴロゴロしていた。ファズは「お昼ごはん食べに行っても大丈夫ですよ?」と言ってくれたが体調が悪い彼を部屋に独り置いていくのは気が引けた

「…………もう大丈夫ですよ。さあ、遅くなりましたがお昼食べに行きましょう」
「本当に大丈夫?無理してない?」
(頭痛になったことが無いから分からないが、そんなに直ぐに良くなるものなのだろうか?)
俺はファズに、まだ回復してないのでは?俺に合わせて無理してるのでは?と疑いの眼差しを送る
「大丈夫ですよ。そんな顔しないで。さ、行きましょう!」
俺の腕を掴み立たせる。
「具合悪くなったら言ってね?」
はいはい。とファズは部屋の鍵を締めた

屋台を歩く。
「ねぇ!野菜スープがあるよ!ファズこれにする?胃に優しいかも…………料理しないからわからないけど…」
目の前のホカホカ野菜いっぱいスープを指差すがある。よく分からんが野菜は身体に良いと聞く、
「そうですね。最近寒くなってきましたからね。それにしましょう。エデはどうします?」
「俺こっちのよく分からんポタージュにする。…豆か…?芋かな?」
「んー?…………分かりませんねぇ」
ファズも苦笑する
店先に材料を記した看板があって少し読めるがソレが何を指しているのかが分からない、一応イラストも描いてはあるが、絵が…何と言うか…画伯過ぎて理解不能だ。


「何やってんだ…オマエら」
聞き慣れた声がして振り向くと俺達の後ろにダスティとリージュが立っていた。
「…………何故二人がここに?」
ファズが怪訝そうな顔を隠しもせずダスティに聞く
「何だよ。俺達に買い物すんなってか?」
二人は臨戦態勢だ。
「リージュ体調大丈夫?具合悪かったんでしょう?」
「ええ今は大丈夫です。その節はすみませんでした。何もお役に立てず…」
リージュはションボリ頭を垂れる
「ちょっと嫌いな人の匂いがしたので…気分が悪くなってしまい…」
リージュは手で鼻をこする
「そうなの?鼻が過敏なのかな…花粉症みたいにアレルギー的な?」
「まあ、そんな感じです」
「ふうん。あっ!リージュこの絵何が描かれてるか分かる?」
画伯の絵を指差す
「絵?…カボチャの事ですか?」
「カボチャ?!カボチャってあのカボチャ?!」
「他に何があるんですか?種類は沢山あるでしょうが、あれはカボチャですね」
リージュは眼鏡を光らせて言う
(カボチャは共通語なのか?!)
「よくあの絵で分かったね。俺分からんかったよ」
「そうですか?普通にカボチャに見えますけど…それより」
(もしかして!!リージュも画伯なのか?!)
俺の中で新たな仮説が生まれた。

「あれ、放っといていいんですか?」
リージュがファズとダスティを指差す。まだ両者睨み合っていた。
「ファズ!!スープ買おう?流石にこれ以上は店の迷惑になる!」
「はっ…そうですね。エデはさっきのスープで良いですか?」
うん。と頷き返す。
ダスティはファズから俺に視線を移しこっちに来る。
「何か…匂いがやたら近いな」
スンスン
頭を嗅がれる。街中で中々の羞恥プレイだ。
「朝一緒に寝てたからかな?」
「…………」
匂いを嗅いでいた動きがピタッと止まり
掴まれグリグリと頭を押し付けられる
「あだだだ!!マーキングかよ!!」
「そうだが?」
グリグリ擦り続ける
俺の肩に掛けられた腕を触る
「こら!エデから離れなさい!!」
「ぃだっ?!」
ファズがエグいローキックをダスティにかます
ちゃんと痛かったらしい


俺とファズがテラスへ移動すると二人もついてくる。
「何故?」ファズがダスティを睨む
「おめーに蹴られた分ちゃんと返さねぇとな」
ガッガッ
テーブルの下でファズとダスティの足技が入り乱れる
「あ痛っ?!」流れ弾がリージュに行った
「おっ?すまん。わざとだ。」
「キィエエエ!!!!」
リージュがブチギレてダスティに蹴りを入れようとするが席を立たれ空振りとなる
数分後、箱を2つ持って現れ1つを俺の前に置く
「何これ?」
「食え。スープだけじゃ足りないだろ」
パカッ
箱の中身はハンバーガーだった。
「食べていいの?お金…」
「いらん。さっさと食え」
モシャモシャとダスティはジブンのハンバーガーを食べ始めている
「え?私の分は?」リージュがダスティに聞く
が「知らん。自分で買え」と言われてた。
そしてリージュは数分後ピザを持って席に帰ってきた。

「あのさ、今までの異世界転生者ってどんなだった?」
「へ?」
「は?」
モグモグ…リージュはピザを頬張って視線だけ寄越す
「え?そんな変な話かな?どんな人とどんな事したのかな~って…」
「どんなって…相手のやりたいことを出来る範囲で叶えてやるだけだ。」
ダスティは食べてたハンバーガーを置き答えてくれた。
「ダスティは今はやってないんでしょ?」
「ああ。」
彼は一旦置いたハンバーガーをまた手に取る
「ダスティが今まで担当した人は最後どうなったの?」
「…………」
かぶりつく一歩手前で手が止まったり俺をジロリと見る
「それを知ってどうする。」
「いや別に…何人元の世界に帰れたのかな?って…」
「…………いないな。皆死んだ」
ガブリッ
ダスティが大きな口で歯を立てハンバーガーを抉る
「皆?誰も帰れなかったの?」
「ああ。死に方は様々だったが皆自滅だな。実力以上の物を欲した結果さ。」
ダスティは口に付いたソースを舌で舐め取る
「ファズは?誰か生還した人いないの?」
「僕は…………すみません。あまり覚えてなくて」
「覚えてないの?」
「ええ…」
ファズは野菜スープに視線を送ったまま返事をする、中身はあまり減っていない。
「彼等も異世界転生者との死別や離別で自身に強いストレスを感じ体調を崩す為、神様に記憶を消して貰うことが可能ですので…そのせいで記憶が曖昧なのでは?」
リージュが口周りにトマトソースをつけながら話す
(そりゃあ一緒にいれば多少情が湧く、その人が死ねば傷つくよな……トラウマにならないよう記憶丸々消すって事?)
「ケッ!なよっちい」
「じゃあダスティは今までの人全部覚えてるってこと?それってツラくない?」
「別に、それなりに屑だったから何とも思わん…………ってか喋ってないで食え」
「んっ。」
確かに触ったバンズは少し冷えて硬くなっていた
(屑…じゃあファズの相手はまともな人だったのかな…忘れたい位思い入れがある人…)

ダスティとリージュに別れを告げ宿に戻る

受付には男女カップルがお互いの腰に手を当てイチャイチャしながらチェックインしている
宿屋のお姉さんは心なしか顔に血管が浮き出てる気がするしゴゴゴ…と効果音さえ聞こえる気がするが、ちゃんと接客は行っていた
「では、コチラが鍵になります。」
「「は~い!!」」バカップルがハモる
「早く!部屋でイチャイチャしよ~よ~」
「おいおい…まだ駄目だぞ。今はコレで我慢な?」
チィジュュュユユ
セミが鳴き出したかのような音を出しながらキスをするバカップル。受付の宿屋のお姉さんの前で…
(コイツらメンタルいかれてやがる!!)
俺が部屋に行くバカップルを唖然として見送ると宿屋のお姉さんは金棒を持ち中庭へ消えた。
遠くから風斬り音が聞こえる
怖すぎてあの音が夢に出てきそうだ

「えらいもん見ちまったな…ファズ?」
「えっ?ああ。そうですね。」
ファズはボーとしていた。


「まだ、体調悪い?」
「いや体調は大丈夫です。…………あの、エデはキスしたことありますか?」
「は?…まぁ、ありますケド…」
(さっきのバカップルの事気になってたんか?)
「家族はノーカンですよ?」
「あったりまえだ!!…………有るよ。一応…」
ゴニョゴニョ…………胸を張ってハッキリとは言えないが…経験はある。嘘はついてない。
「何人?!」ファズがグッと近寄る
「1…………じゃない、2人…かな?」
「2人…?誰ですか?僕の知ってる人ですか!」
「えっ?知らない…かな。」
?!とショックを受けたらしいファズはその場に崩れ落ちた。
知らない人……………1人はダリル。彼はファズに会ったことはない。
もう1人は、知りもしないだろう…世界が違うのだから
そう、異世界転生前の俺が居た世界に奴は居る

俺の初チュー相手「野崎 司」
最近は出てこないイマジナリー親友の本体。

アイツには初チューどころでは無く色々な事をされた。今の俺はもしかしたら半分野崎で形成されているのかも知れない

そんなアイツとの昔話。









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