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つまり、ただの一般人ってこと?

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ちなみに
まだ、街にはつかない。



「いいですか!よく聞いてくださいね!!」

ファズは真剣な顔をして口を開いた。

そして何個か注意事項を喋りだした。

命に関わるものもあるので、ちゃんと聞くように!と、何回も聞かされた。

まず、一緒に異世界転生してしまったマイ自転車はこの世界にそぐわない為、回収された。

「えー!チャリ駄目なん?」

俺が抗議を示す

「駄目です。まだ、時代的に最新で考えても馬車使ってますから。自転車なんて見たら人に詰められます。なので回収します」

と、ファズが俺の自転車を持ち上げると
空間に縦型の渦みたいなものが発生した。

「うあっ!なんか出た!!キショッ」 

「えっ!?キ、キショくない!これは僕の空間…あ~と、保管場所、ロッカー?みたいな感じに繋がってるの!ワカリマスカ?」

なんで急にカタコトになったんだよ。
さっきまで普通に会話してただろ。

「某英霊の宝物庫みたいな感じ?何となく分かった。」


「僕はソッチがワカラナイんだけど…」

ファズはブツブツと何か言ってる


あと俺の名前(真名)は話さない様に!と言われた。

「何で?」

「真名は命に直結する大事な名前だからね。隠していたほうが良いのさ、まあ、プレイヤーネーム付けるほうが本名よりゲームする時やりやすいじゃん?そんな感じだよ!」


「えぇ…分かるような。わからないような…」


「まあまぁ、名前何にする?スーパーとかウルトラとか付けとく?☆も付けちゃう?」


つけねーわ!

ゲームでもつけたことねーわ!!


「じゃあ…楓だから…」

名前かぁ…急に言われても…うーん…

案は、あるっちゃあるけど…ちょっと…

モジモジしだす俺

こんな事で時間喰ってもしょうがない
えーい、男は度胸。

「エデ……?」

出たのは、めっちゃ小さくてカッスカスの声だった。

俺には度胸が無かったらしい。


聞き取れるか怪しいくらいのボリュームだった。

喉締められたんか?大丈夫か?位の小声だ。


「エデ?」

いや、よう聞こえてたな。
感心するわ。ファズ耳良いんだね。

もう一回!ってなるのを覚悟していた俺だが、
気を取り直す。


「うん。…駄目かな。変だった?」


今更、自分のネームセンスの無さに恥ずかしくなって顔が赤くなるのを感じる。


(カエデのカを取ってエデ…駄目ですか?!そんな声も出ない程センスなかった俺?!)

脳内がぐるぐるしてる。

こんな時にイマジナリー野崎は出てこない。


なんでだよ!
せめて笑いに出て来いよ!!



恥ずかしくて足元に視線を移す。


熱い!恥ずい!!ひぇぇ!


「……」


沈黙が恥ずかしさを加速させる。

何か言えよぉおお!!

顔の熱が高くなった気がする。


ぽふっ

俺の頭に何か乗っかった。

何だろと顔を上げる。ファズと目が合う。

わぁ!綺麗なお目々!ってちがーう!!
脳内セルフツッコミが入りまーす。
 

「うん。素敵な名前だね。改めまして、宜しく。エデ。」


ニコッ

美しい顔が、更に威力を増す。
バフ盛ってます?


だーかーらー!!
顔面宝具打つときはちゃんと言ってってー!

ちょっと男子ー!!みたいな女子のノリで目をギュッと瞑る。

大丈夫?

今の俺、男梅みたいになってない?
男を磨いてない?大丈夫?


「えっ?!また!?これ行っていいやつ?駄目なやつ?!どっち!?」

ファズの困惑してる声だけ聞こえてくる。



「それと、持ってるお金もこっちじゃ使えないからね。」

体制を取り直したファズが人差し指を立てながら言う。

「まぁ、そうなるよね。でも、お金ないと困るし…街に働き口あるかなぁ?」

内心まあ、通貨違いますよね。そりゃあ。
とは思っていたが、さて、どうしたものか…

「ふふふ!でも大丈夫!無問題です!」


「何故なら、お金は神様持ちなので!いくら使っても我々の財布が痛むことはありませーん!!」


どやぁ!
ファズは楽しそうに胸を張って言う。

いや、胸を張って言うことか?
上司の金で飯喰うの…?宿泊まるの?えぇ…

俺はファズをジト目で見る。

「あ、あれっ?想像と違う!!」

ファズは俺が喜んで乗ってくれると思ったらしい。
リアクションの温度差にオロオロしだした。

「いや、ほら。ただより怖いものは無し…だっけ?よく言うじゃん。後で返せとか言わん?大丈夫?」


うまい話には裏がつきものだ、用心に越したことは無い。

「何言ってるんですか!勝手に異世界転生させられて!オマケに変なのまでお供につけられて、これ以上の理不尽がありますか?!」

ファズがヒートアップしだした。

今、自分のこと変なのって言ってたけど…
ファズ自覚あったんだなぁ…なんて

ジト目から薄目に変わった俺を見るファズ

「変なのってのは、あくまで自分を卑下したもので思ってはいませんよ!!」


ふんっ!

熱気冷めやらぬ状態のまま言い放つ


いや、そこは自覚してくれよ。

断言してやるよ。
ファズ、お前は立派に変なやつだよ。
自信持てって。


まぁ、こんな俺と神様に付き合わされる社畜のファズの為にも
上司の財布で散財する位は可愛いもんなのかもな…なんて思わなくもない。

「そうかもな。よっしゃ!折角だから、街ついたら良い肉喰って高いホテル泊まろーぜ!!」

と言うと
ファズの顔がパァァァ!ってなって

「イヤッホー!!流石、話ワカルー!」

クルクルまわりだすファズ。
イェ~イとか言ってる。

ファズが段々とテンションぶっ壊れて来てて不安になってくる。


「あ、でも、その前に。服とか靴乾かさないと駄目だわ。素足で移動は流石に無理」

道は砂だが、綺麗に整備されている訳ではないので大小様々な石が落ちている。

因みに俺は走るとき石が痛くて裸足になれないタイプなので、せめて靴が履ける状態になるまでは移動出来ない。


「ああ、それなら大丈夫!僕が乾かしてあげるよ!」

ファズが服の袖から30センチ位の棒を取り出し、
それを、乾く気がしない靴へと振った

あら不思議。何という事でしょう!靴はあっという間に乾いたとさ。

チャンチャン。

「いや、そんな便利なのあるんだったら何で俺が着替える前に言ってくれなかったん?」

着替える必要なかったやん


俺はまた、ファズをジト目で見る。

ファズは一旦視線をそらして

もう一度こちらへ視線を戻し、




「………てへっ」



「……………」


木枯らしが二人の間を吹き抜けた気がした。


「よぅし!歯ぁ食い縛れ!!!」

後はひたすらファズを追い掛け回した。
全然捕まらなかったけど…


「ひぃっ!許してぇ!言い出すタイミング無くてさ!」

「いや、あっただろ!幾らでも!!」

「えへへ、つい。話弾んじゃうと忘れちゃうんだよね!歳かなぁ…」

「あっ!後、アレだ!!」

「へ?何?」

ファズへの信用が下がり続けて、ついジト目で先を促す様になってしまう。 


「ごめんて、そんな目で見ないで…」

「因みに、これから話す事を聞いても怒んないでね…お願い。」

ファズは懇願するように甘えた声を出す。

「それは内容による」

これはハッキリ言える。
俺はNOと言える男だ。


そもそも、そんな前置きワードが出たら絶対俺が怒る様な内容なんだろうと思うが…まぁ、聞いてやる。


コホンっ

ファズが咳払いをする
息を吸って、言葉を続けた


「あのね、、異世界転生したからって君達人間に特別な能力は何ひとつ、本当に、何ひとつとして存在しないから、自分が特別な力を持ってるだとか1ミリも思わないでね。よくあるんだよ、勘違いしちゃって格上の相手に突っ込んで死んじゃったり、気分が大きくなって何でも出来るような気分になって他人から恨み買って殺されたり。僕達サポートはするけど、君達の命はサポート外なの!僕達は神様の使いだけど君達の命までは神様は、何ていうか…言い方悪いけど、どうでもいいと思ってる方だから!君達はあくまでも無作為に選ばれただけで特別な能力を与えられたわけじゃないんだからね!絶対に忘れちゃ駄目だよ!」


はぁ…はぁ…

ファズは肩で息をしている

俺は…ポカーンとしてる

「ねぇ、ちゃんと聞いてた?!僕の話理解してくれた?」

ファズはまだ少し苦しそうにしてる。

「う、うん。えっと、その、アレでしょ?」

俺はしどろもどろになる

「俺の口や目からビームは出ないって事でOK?」

俺は小首をかしげてファズに確認をとる。


ファズも小首をかしげてて、

え?今なんて言った?って感じだったけど、理解したのか凛々しい声で答えた


「……出ないね。断言するよ。それは出ない。もし出たとしても僕が出させないよ。」


ファズの目は本気だった。


「何でだよ!ビームは浪漫だろ!」


俺は引き下がらない。


「口からビームは、もう怪獣なんだよ!!せめて人間であれ!あってくれ!!頼むから!」


ファズは心底懇願している様子だ。
あと声デカい。お前そんなに声でたんか。


「じゃあ、今の俺は異世界転生する前と何も違わないの?!パラメーター一緒なん!?ただの男子高校生のままなん!?」

俺も声を張り上げる

何か、なにか1つでもあってくれ。俺の可能性!


「基本的な身体能力は一緒!そのままだよ!…んー!その他は…無いことはないが、ほぼ無いと思って諦めて!!!!!!」


「やだー!!!!!!!!!!」

異世界転生して初めて泣いた。

何が悲しくて異世界転生してまで
一般通行男子高校生でいなければいけないのか。

悔しくて泣いた。


わんわん泣いた。

ファズが慌てて駆け寄って抱き締めてくれたけど俺の涙も嗚咽も止まらない。


神様…テメエの有り金全部使ってやっからな!!

出せるもん全部出せや!!


俺の心は荒れに荒れ
とうとう賊になり下がってしまった。

返して俺の気高き魂とか誇り的な何かアレ的なカッコイイやつ

じゃないと心を保っていられない

ああ、喉から勝手に迫り上がってくる
漢らしさの欠片もない鳴き声が、










ふぇぇ…




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