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序章
罅から澱漏れ澱希む
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『あはははっ! ごうかーく! 合格だよー!』
まるで何もなかったかのように、私の身体は再びどこかに揺蕩っていた。
倦怠感も達成感も、虚無感すらも感じずに、私はそこに身を委ね続ける。
『うんうんっ、さすが我が見込んだ人材ってだけあるよー。しかもしかも、あれでもまだ君の情熱は失せていない。
現世での心残りがあれしかないってのも中々ポイント高いけど、その心残りを発散してもなお情熱を失わないってのは満点だよー!』
情熱……ああ、あれは最高の体験だった。迸るほどの情熱を一気につぎ込んだ私は抜け殻にでもなったよう……。
じゃないな、まだまだ私は枯れていない。私はきっと、本当に歪められたのだろう。
もしかしたらケイトだったら大人になったとしてもまだ愛することが出来るかもしれない。けどそれは仮定の話で、そもそもあれはきっと、現実ではないんだから。
そう、現実じゃない……どうして私はこんなにも簡単にあり得ない状況を受け入れることが出来るのだろう。
そもそも何もかもおかしいじゃないか、私は家から出て公園に行こうとしていたはず、でも私は今何処にいる……?
『あっと、目を開けようなんて考えない方がいいよー、消えちゃうかもしれないからねー』
消える……私が消える? 消えるってなんだ、そもそもここは何処で何をされようとしているのか。
あれはいったい何だった? 私の過去の記憶、妄想? いやだとしても鮮明すぎるしあの感触は確かに本物だった。
あそこまでリアルな経験した事ない、経験もないのに完璧な想像を出来るはずがない。
『おー、知性の希薄化が薄れちゃってるかな。じゃあもう一回、向こうの世界についたら解けるようにして……ついでに混乱も封じようか? いやでもこれはなぁ……』
何を、言っている? 私は疑問を呈そうと口を開きかけ、けれど結局開く事はなかった。
意識が浮かぶ、沸いた疑問が頭に結びつかない。まるで泥酔でもしたようにほわほわとした脳みそが、その場でただ浮かび続ける事を選択する。
またこれだ、心地良いまどろみが私を支配した。
『君は罅だよ、我の代わりに世界に罅を入れて、そうして我に会いに来てよ』
染み込む言葉、戒めるように荘厳な響きを持ったその言葉。
『君は澱だよ、みんなから澱を集めてどんどん深く沈んで、みんなに愛を教えてあげてよ』
今度は一転、暗くおどろおどろしく、けれど優し気な雰囲気で懇願するように。
『君は希望だよ、我の求めていた希望である君は、これからきっと大変な旅が待っている。けどそれはきっと君にとって、最高の旅になるんじゃないかな』
どこまでも明るく、この世の全てのきらめきを詰め込んだような天真爛漫な声で。
何を言っているのかわからない。けど不思議とその言葉は私の中に深く沈んで、何も結びつかない頭の中に唯一こびり付く。
こびり付くのは言葉だけじゃない。僕の足にも、何か柔らかくて暖かいものが触れた。
『でもさ、君の姿じゃあ色々足りないね。そもそも大人の姿ってのは合ってない、整ってはいるけどその程度じゃ向こうだと普通だ。
だから我から君へのプレゼント。傍観者である我が、少しでも近づくためのプレゼント』
柔らかい感覚はどんどん増えていく、足からふくらはぎへ、ふくらはぎから太ももへ。
何故だか服というものを無視して、いやそもそも服を着ていなかったのかもしれない私の身体を包み込んでいった。
あったかい、気持ちいい。身体が縮んでいくような錯覚に襲われる。
『我の姉様はさ、とっても美しかったんだー。それに我よりも優秀で……』
なんの脈歴もなく唐突に始まった一人語り、思い出すように言葉を紡ぎ始めた。
謎の声はとても楽しそうに、海で遊ぶ子供のようなカラカラとした声でそこまで語り言葉を切る。少しの沈黙の後、悲しみのどん底に落ちたような声で続ける。
『でも、死んじゃった』
死んだのか、声の主の姉は。けどそれとどう関係があるのか私には何もわからない。ただこの奇妙な感覚に晒されるだけの私にはどうしようもない。
そういえばさっきから少しだけくすぐったいな。包み込まれているものは暖かいけど少しぬめってて、私の肌を撫でるように移動する。
その度に身体が変わってしまうような衝撃が全体に伝わって悲鳴を上げそうになった。けど私の喉は正常に働かない。
身体全体が小さく、薄くなったような。そして大事なものを喪失したような。
『だから姉様は君にあげよう、けど姉様と君は性別が違う……あぁ、なら生やせばいいんだよねー、身体の中も弄ってっと。代わりにこっちの穴は塞いでしまおう。今の我にはそれくらい出来るから。
胸もあるのはおかしいね。あと身体つきも変えて、少し筋肉を増やそっか』
突然私の股間に謎の感触が伝わった、まるで内側から何かが盛り上がってくるような。それと同時に喪失感は突如として消え去る。
続いて触れたのは私の胸だ、何故だか胸だけ太ってしまったような謎の感覚を覚えていた私だけれど、それも無くなった。
残ったのは、ただ身体が小さくなってしまったかのような感覚のみ。いや違うな、肩に何故か髪の毛が張り付いている。
私の髪の毛はそんなに長くなかったはずだけど……。
『いいねいいねー、姉様の面影があるよー。まあメインは君だからそのまんまじゃないんだけどさ、きっと姉様が兄様だったらこんな感じだったんだろうなぁ……』
懐かしそうなその声はひどく介護欲を覚える。私は何処にいるかもわからないその存在を抱きしめようと思い立ち、けれど腕は少し動いただけで止まってしまう。
『……おっとっと、感傷に浸るのはよくないなー。やる事やっちゃわないといけない。
さてと……ちゃんと機能があるかどうか、確かめないといけないよね?』
「……んぅ……!」
突如として感じた甘い痺れに、私は湧き上がる甘酸っぱさと恐怖感についつい声を漏らす。今まで私を優しく包み込んでいた柔らかく滑った何かが、急に股間を強めに擦り上げたのだ。
単なる柔らかい何かだと思っていたものは、実は細かい毛のようなものの集合体である事に初めて気が付いた。敏感な部位を刺激され始めて声が漏れる。
まるで柔らかいブラシが付いたような微細な刺激の連続は抗うことが出来ないものだ。否応にも反応してしまう。
自分の意志ではうなり声の一つも出せなかったのに、身体はどこまでも正直だ。
『あははー、可愛いなぁ……姉様……じゃなかった、君だったね。でも見た目的には兄様で、同時に姉様さ』
「ふぁ、あうぅんっ……」
『そっか、返事できないんだった。ただ与えられる快楽に喘ぐことしかできないなんて……本当に可哀らしいなぁ。
姉様も兄様だったなら、きっと今も生きていた……気持ちいいことに性別は関係ないけどね』
「んっ、んふぅぅ……!」
気持ちいい、何が起きているのか理解が出来ないけどただただ気持ちいい。わかるのは股間を刺激され続けている事だけ。
私の声が子供のように甲高い事も今の私には大した事ではない、脳が真っピンクに染まっていく。
身体を動かすのは物凄く面倒で、ずっと揺蕩っていたけれどそれ以上にもっと気持ちよくなりたい、私は力を振り絞って腰を動かした。
「ん、んっ、ふぁっ」
『すごいじゃないか! 自分で動けるだなんて……そんなに気持ちいいのかな?』
「ん、うんっ、そっ、だよっ」
思わず肯定した私に声の主は少し驚いたように声色を変えながら、しかしすぐに声の調子を変えた。
でも私はそれどころではない。
『喋れるなんて相当だね……そっか、じゃあ君に良いことを教えてあげる』
良い事、イイ事……もっと、もっともっと……! 高まる快楽高まる欲求、そんな中で声の主はどんどん近づいてくるようで、ついには耳に息が触れる。
透き通るような心地いい声で囁いた。
『今の君は、とっても可愛い容姿だよ。背丈は以前の君の胸元程度までしかなくて、その股間のおちんちんだって子供のサイズだ』
「あぁ、ひゃぁぁ……!」
『可憐なプラチナの髪の毛を華奢な肩に垂らして、白雪のようなきめ細かい肌に玉の汗を浮かべながら身をよじっている』
妙に丁寧に情景を描写してくる声の主、そうか、今の私はそんな姿になっているのか。
そんな姿の美しい存在が、こんな可愛らしい声をあげながらよがっている……。
『柔らかい二つの玉とそれを包む色の薄い袋をプルプルと揺らして、そこに繋がった竿はぬるぬるべとべとにされて今にもはち切れそうだ。
そして、美味しそうにツンと立って、けど小振りで可愛らしい胸の二つの果実……はむっ』
「きゃぅっ!」
突然片方の胸を包み込んだ柔らかくて熱い何か、いや何かじゃないな、ケイトとの経験で分かる、これは口だ。
唇の感覚もしっかりあるし、時々当たる固いのは歯。弾くように動く触手みたいなのは舌。私は胸を誰かに吸われている。
誰か、いや誰かじゃない、これは声の主だ。ちゃんと声の主も人だったんだ。
「あ、あぁっ、す、わない、でぇ……!」
『んふぅ……君、本当に可愛いよ……姉様と一緒になって、もっと可愛くなった……早く会いたい……』
今会ってるじゃないか、それどころか私を愛撫している。何を言ってるんだこの声の主は。可愛い声で、やってる事は私への快楽責め。
それにしても本当に胸が気持ちいい、前までも胸は私の性感帯の一つだったけどそれどころじゃない、胸だけでイケてしまえそうな程。
舌使いが巧いのか、いやそういう次元じゃない気がする。
でももうそろそろ限界、せり上がるものを抑えられないし抑えようとも思わない。痛いほどに張り詰めた私の彼曰く子供サイズのおちんちんには意思とは関係なくピクピクと力が入る。
『んっ、そろそろ、出そうなのかな? じゃあ強めてあげる』
「あ゛っ、あ゛ぁぁぁぁ……!」
『何ならそのまま気を失ってもいい、むしろその方が都合がいいかもしれないね』
股間にあてがわれたザラザラが激しく動く、それこそ電気マッサージ器のような微細な振動が細かいひだ全てに伝わりこの世のものとは思えない感触を私に伝えていく。
表現できないほどくすぐったくて、頭が張り裂けてしまいそう。そんな状態なのに私の身体はもっともっととそれを求めてしまう。
声を張り上げて獣のように咆哮を上げようとしても、出てくるのは子犬のようなか細くて健気な高い声。
真っ暗闇だからこそ、何をされているのかこれから何をされるのか、ただそれを享受するだけしか出来ない我が身は更なる快楽へと誘われる。
きっと何一つ見えないという状況に身体が危機を感じているのだろう、だからこそもっと状況を良く判断しようと身体は敏感になる。一つ一つの刺激で私の身体は跳ねてしまう。
触覚だけじゃない、聴覚だってそうだ。聞きなれたものではなくても自分の声だと認識出来ているそれにすら私はピンクの欲を噴出させる、絶頂へと至る道を駆け上がる一助として大いに働いている。
『我に見せてよ、もっと可愛いところ。なんなら飲んであげようか? 普段なら絶対に嫌なんだけどね、君のなら特別大サービスだ』
「う゛ぅぅぅ~~、でる、でちゃうぅぅぅ!!!」
恥ずかしげもなく震える声で叫ぶ。涎が飛ぼうが関係ない、口の端から液体が垂れる感覚が私に伝った。
『あ、イキそう? じゃあ良いよ。んあー、むっ」
「う゛あ゛っ」
虜になってしまいそうな程の柔らかさ、口で咥えられているのだと分かって悦びが奥から湧いてくる。
慈しむように、母性すら感じる優しい少年声を発する口で私の陰茎を包み込んでいる。
声の主は私を甘やかす。甘すぎて胸やけしそうな彼の詰まった声、近づいてきたときに感じた仄かな甘い香り。
お尻に手を回されて、ある程度健康的に引き締まっている私のお尻の肉を歪めながら自ら股間に顔を押し付ける彼、骨の無い喉の奥に半分剥けている亀頭が押しつぶされると、もう私は限界だった。
そして彼は止めを放つ。
『はひは?』
「い゛、ぐぅっ、あ゛、~~~!!!」
太ももを強く締めても、胸を突き出した体勢になっている私の脚は何も挟めない。両手は柔らかい何かに拘束されて眼下にいるのであろう存在を抱きしめる事も出来ない。
若干の虚しさと行き場のない情愛を抱きながら私は絶頂した。
『んぶっ……!』
ビュルっと音が鳴らなかったのが不思議なほどの勢いで尿道を貫く欲望、ケイトとのあれこれはまだついさっきのようにも感じられるのに、その疲れが一切無かったかのように私は全てを出し切る。
とめどなく高まる妄想と痺れが伴う射精の感覚で気が狂いそう。とても耐えられるものじゃなかった。
「あ゛……ぅぁ゛……」
『ん、んくっ……けほっ、苦しいなー、もう……喉に直接流れ込んできたよ。ねえねえ君、気持ちよかった?』
私は答えられない、身体が言う事を聞かない。
『……あ、やっぱり耐えられなかったみたいだね』
やばい、また意識が落ちてしまう。最初に感じていた意識のまとまらなさはもうなくなっていて、今はただただ疲労困憊で動けない。
身体を包み込んでいた柔らかいものは身を引くように私の身体から離れて行ってしまって、身体は自由を取り戻す。
肌寒さと寂しさを感じた私は意識と無意識の狭間で目の前に、少しだけ動かせるようになった手を伸ばす。
『お?』
何かがあった、これは……手だ、柔らかくて暖かい手。人肌の温もりは私に安心感を与えてくれる。
手の主を確かめようと瞳を開けようとして……けれど何かで目を覆われた。
『だーめ、目は開けちゃいけないよ。そのままお眠り?』
汗ばんだ額を覆われて心地いい闇に支配されていく。掴んだ手を握り返してくれて、何となく嬉しさを感じる、諦めて身体の力を抜いた私は、その場で再び身を委ねる。
もう私が目を開けようとしていない事に気が付いたのだろう、目を塞いでいたものを外されて、続いて感じるのは確かな温かみ。背中にも手を回されて抱きしめられた。
額に感じるスベスベの肌、そして謎のツルツルとしたゴム質の感触。汗だくの身体を抱きしめる、低めの体温。
『また会おうね』
意識は真っ白に塗りつぶされた。
まるで何もなかったかのように、私の身体は再びどこかに揺蕩っていた。
倦怠感も達成感も、虚無感すらも感じずに、私はそこに身を委ね続ける。
『うんうんっ、さすが我が見込んだ人材ってだけあるよー。しかもしかも、あれでもまだ君の情熱は失せていない。
現世での心残りがあれしかないってのも中々ポイント高いけど、その心残りを発散してもなお情熱を失わないってのは満点だよー!』
情熱……ああ、あれは最高の体験だった。迸るほどの情熱を一気につぎ込んだ私は抜け殻にでもなったよう……。
じゃないな、まだまだ私は枯れていない。私はきっと、本当に歪められたのだろう。
もしかしたらケイトだったら大人になったとしてもまだ愛することが出来るかもしれない。けどそれは仮定の話で、そもそもあれはきっと、現実ではないんだから。
そう、現実じゃない……どうして私はこんなにも簡単にあり得ない状況を受け入れることが出来るのだろう。
そもそも何もかもおかしいじゃないか、私は家から出て公園に行こうとしていたはず、でも私は今何処にいる……?
『あっと、目を開けようなんて考えない方がいいよー、消えちゃうかもしれないからねー』
消える……私が消える? 消えるってなんだ、そもそもここは何処で何をされようとしているのか。
あれはいったい何だった? 私の過去の記憶、妄想? いやだとしても鮮明すぎるしあの感触は確かに本物だった。
あそこまでリアルな経験した事ない、経験もないのに完璧な想像を出来るはずがない。
『おー、知性の希薄化が薄れちゃってるかな。じゃあもう一回、向こうの世界についたら解けるようにして……ついでに混乱も封じようか? いやでもこれはなぁ……』
何を、言っている? 私は疑問を呈そうと口を開きかけ、けれど結局開く事はなかった。
意識が浮かぶ、沸いた疑問が頭に結びつかない。まるで泥酔でもしたようにほわほわとした脳みそが、その場でただ浮かび続ける事を選択する。
またこれだ、心地良いまどろみが私を支配した。
『君は罅だよ、我の代わりに世界に罅を入れて、そうして我に会いに来てよ』
染み込む言葉、戒めるように荘厳な響きを持ったその言葉。
『君は澱だよ、みんなから澱を集めてどんどん深く沈んで、みんなに愛を教えてあげてよ』
今度は一転、暗くおどろおどろしく、けれど優し気な雰囲気で懇願するように。
『君は希望だよ、我の求めていた希望である君は、これからきっと大変な旅が待っている。けどそれはきっと君にとって、最高の旅になるんじゃないかな』
どこまでも明るく、この世の全てのきらめきを詰め込んだような天真爛漫な声で。
何を言っているのかわからない。けど不思議とその言葉は私の中に深く沈んで、何も結びつかない頭の中に唯一こびり付く。
こびり付くのは言葉だけじゃない。僕の足にも、何か柔らかくて暖かいものが触れた。
『でもさ、君の姿じゃあ色々足りないね。そもそも大人の姿ってのは合ってない、整ってはいるけどその程度じゃ向こうだと普通だ。
だから我から君へのプレゼント。傍観者である我が、少しでも近づくためのプレゼント』
柔らかい感覚はどんどん増えていく、足からふくらはぎへ、ふくらはぎから太ももへ。
何故だか服というものを無視して、いやそもそも服を着ていなかったのかもしれない私の身体を包み込んでいった。
あったかい、気持ちいい。身体が縮んでいくような錯覚に襲われる。
『我の姉様はさ、とっても美しかったんだー。それに我よりも優秀で……』
なんの脈歴もなく唐突に始まった一人語り、思い出すように言葉を紡ぎ始めた。
謎の声はとても楽しそうに、海で遊ぶ子供のようなカラカラとした声でそこまで語り言葉を切る。少しの沈黙の後、悲しみのどん底に落ちたような声で続ける。
『でも、死んじゃった』
死んだのか、声の主の姉は。けどそれとどう関係があるのか私には何もわからない。ただこの奇妙な感覚に晒されるだけの私にはどうしようもない。
そういえばさっきから少しだけくすぐったいな。包み込まれているものは暖かいけど少しぬめってて、私の肌を撫でるように移動する。
その度に身体が変わってしまうような衝撃が全体に伝わって悲鳴を上げそうになった。けど私の喉は正常に働かない。
身体全体が小さく、薄くなったような。そして大事なものを喪失したような。
『だから姉様は君にあげよう、けど姉様と君は性別が違う……あぁ、なら生やせばいいんだよねー、身体の中も弄ってっと。代わりにこっちの穴は塞いでしまおう。今の我にはそれくらい出来るから。
胸もあるのはおかしいね。あと身体つきも変えて、少し筋肉を増やそっか』
突然私の股間に謎の感触が伝わった、まるで内側から何かが盛り上がってくるような。それと同時に喪失感は突如として消え去る。
続いて触れたのは私の胸だ、何故だか胸だけ太ってしまったような謎の感覚を覚えていた私だけれど、それも無くなった。
残ったのは、ただ身体が小さくなってしまったかのような感覚のみ。いや違うな、肩に何故か髪の毛が張り付いている。
私の髪の毛はそんなに長くなかったはずだけど……。
『いいねいいねー、姉様の面影があるよー。まあメインは君だからそのまんまじゃないんだけどさ、きっと姉様が兄様だったらこんな感じだったんだろうなぁ……』
懐かしそうなその声はひどく介護欲を覚える。私は何処にいるかもわからないその存在を抱きしめようと思い立ち、けれど腕は少し動いただけで止まってしまう。
『……おっとっと、感傷に浸るのはよくないなー。やる事やっちゃわないといけない。
さてと……ちゃんと機能があるかどうか、確かめないといけないよね?』
「……んぅ……!」
突如として感じた甘い痺れに、私は湧き上がる甘酸っぱさと恐怖感についつい声を漏らす。今まで私を優しく包み込んでいた柔らかく滑った何かが、急に股間を強めに擦り上げたのだ。
単なる柔らかい何かだと思っていたものは、実は細かい毛のようなものの集合体である事に初めて気が付いた。敏感な部位を刺激され始めて声が漏れる。
まるで柔らかいブラシが付いたような微細な刺激の連続は抗うことが出来ないものだ。否応にも反応してしまう。
自分の意志ではうなり声の一つも出せなかったのに、身体はどこまでも正直だ。
『あははー、可愛いなぁ……姉様……じゃなかった、君だったね。でも見た目的には兄様で、同時に姉様さ』
「ふぁ、あうぅんっ……」
『そっか、返事できないんだった。ただ与えられる快楽に喘ぐことしかできないなんて……本当に可哀らしいなぁ。
姉様も兄様だったなら、きっと今も生きていた……気持ちいいことに性別は関係ないけどね』
「んっ、んふぅぅ……!」
気持ちいい、何が起きているのか理解が出来ないけどただただ気持ちいい。わかるのは股間を刺激され続けている事だけ。
私の声が子供のように甲高い事も今の私には大した事ではない、脳が真っピンクに染まっていく。
身体を動かすのは物凄く面倒で、ずっと揺蕩っていたけれどそれ以上にもっと気持ちよくなりたい、私は力を振り絞って腰を動かした。
「ん、んっ、ふぁっ」
『すごいじゃないか! 自分で動けるだなんて……そんなに気持ちいいのかな?』
「ん、うんっ、そっ、だよっ」
思わず肯定した私に声の主は少し驚いたように声色を変えながら、しかしすぐに声の調子を変えた。
でも私はそれどころではない。
『喋れるなんて相当だね……そっか、じゃあ君に良いことを教えてあげる』
良い事、イイ事……もっと、もっともっと……! 高まる快楽高まる欲求、そんな中で声の主はどんどん近づいてくるようで、ついには耳に息が触れる。
透き通るような心地いい声で囁いた。
『今の君は、とっても可愛い容姿だよ。背丈は以前の君の胸元程度までしかなくて、その股間のおちんちんだって子供のサイズだ』
「あぁ、ひゃぁぁ……!」
『可憐なプラチナの髪の毛を華奢な肩に垂らして、白雪のようなきめ細かい肌に玉の汗を浮かべながら身をよじっている』
妙に丁寧に情景を描写してくる声の主、そうか、今の私はそんな姿になっているのか。
そんな姿の美しい存在が、こんな可愛らしい声をあげながらよがっている……。
『柔らかい二つの玉とそれを包む色の薄い袋をプルプルと揺らして、そこに繋がった竿はぬるぬるべとべとにされて今にもはち切れそうだ。
そして、美味しそうにツンと立って、けど小振りで可愛らしい胸の二つの果実……はむっ』
「きゃぅっ!」
突然片方の胸を包み込んだ柔らかくて熱い何か、いや何かじゃないな、ケイトとの経験で分かる、これは口だ。
唇の感覚もしっかりあるし、時々当たる固いのは歯。弾くように動く触手みたいなのは舌。私は胸を誰かに吸われている。
誰か、いや誰かじゃない、これは声の主だ。ちゃんと声の主も人だったんだ。
「あ、あぁっ、す、わない、でぇ……!」
『んふぅ……君、本当に可愛いよ……姉様と一緒になって、もっと可愛くなった……早く会いたい……』
今会ってるじゃないか、それどころか私を愛撫している。何を言ってるんだこの声の主は。可愛い声で、やってる事は私への快楽責め。
それにしても本当に胸が気持ちいい、前までも胸は私の性感帯の一つだったけどそれどころじゃない、胸だけでイケてしまえそうな程。
舌使いが巧いのか、いやそういう次元じゃない気がする。
でももうそろそろ限界、せり上がるものを抑えられないし抑えようとも思わない。痛いほどに張り詰めた私の彼曰く子供サイズのおちんちんには意思とは関係なくピクピクと力が入る。
『んっ、そろそろ、出そうなのかな? じゃあ強めてあげる』
「あ゛っ、あ゛ぁぁぁぁ……!」
『何ならそのまま気を失ってもいい、むしろその方が都合がいいかもしれないね』
股間にあてがわれたザラザラが激しく動く、それこそ電気マッサージ器のような微細な振動が細かいひだ全てに伝わりこの世のものとは思えない感触を私に伝えていく。
表現できないほどくすぐったくて、頭が張り裂けてしまいそう。そんな状態なのに私の身体はもっともっととそれを求めてしまう。
声を張り上げて獣のように咆哮を上げようとしても、出てくるのは子犬のようなか細くて健気な高い声。
真っ暗闇だからこそ、何をされているのかこれから何をされるのか、ただそれを享受するだけしか出来ない我が身は更なる快楽へと誘われる。
きっと何一つ見えないという状況に身体が危機を感じているのだろう、だからこそもっと状況を良く判断しようと身体は敏感になる。一つ一つの刺激で私の身体は跳ねてしまう。
触覚だけじゃない、聴覚だってそうだ。聞きなれたものではなくても自分の声だと認識出来ているそれにすら私はピンクの欲を噴出させる、絶頂へと至る道を駆け上がる一助として大いに働いている。
『我に見せてよ、もっと可愛いところ。なんなら飲んであげようか? 普段なら絶対に嫌なんだけどね、君のなら特別大サービスだ』
「う゛ぅぅぅ~~、でる、でちゃうぅぅぅ!!!」
恥ずかしげもなく震える声で叫ぶ。涎が飛ぼうが関係ない、口の端から液体が垂れる感覚が私に伝った。
『あ、イキそう? じゃあ良いよ。んあー、むっ」
「う゛あ゛っ」
虜になってしまいそうな程の柔らかさ、口で咥えられているのだと分かって悦びが奥から湧いてくる。
慈しむように、母性すら感じる優しい少年声を発する口で私の陰茎を包み込んでいる。
声の主は私を甘やかす。甘すぎて胸やけしそうな彼の詰まった声、近づいてきたときに感じた仄かな甘い香り。
お尻に手を回されて、ある程度健康的に引き締まっている私のお尻の肉を歪めながら自ら股間に顔を押し付ける彼、骨の無い喉の奥に半分剥けている亀頭が押しつぶされると、もう私は限界だった。
そして彼は止めを放つ。
『はひは?』
「い゛、ぐぅっ、あ゛、~~~!!!」
太ももを強く締めても、胸を突き出した体勢になっている私の脚は何も挟めない。両手は柔らかい何かに拘束されて眼下にいるのであろう存在を抱きしめる事も出来ない。
若干の虚しさと行き場のない情愛を抱きながら私は絶頂した。
『んぶっ……!』
ビュルっと音が鳴らなかったのが不思議なほどの勢いで尿道を貫く欲望、ケイトとのあれこれはまだついさっきのようにも感じられるのに、その疲れが一切無かったかのように私は全てを出し切る。
とめどなく高まる妄想と痺れが伴う射精の感覚で気が狂いそう。とても耐えられるものじゃなかった。
「あ゛……ぅぁ゛……」
『ん、んくっ……けほっ、苦しいなー、もう……喉に直接流れ込んできたよ。ねえねえ君、気持ちよかった?』
私は答えられない、身体が言う事を聞かない。
『……あ、やっぱり耐えられなかったみたいだね』
やばい、また意識が落ちてしまう。最初に感じていた意識のまとまらなさはもうなくなっていて、今はただただ疲労困憊で動けない。
身体を包み込んでいた柔らかいものは身を引くように私の身体から離れて行ってしまって、身体は自由を取り戻す。
肌寒さと寂しさを感じた私は意識と無意識の狭間で目の前に、少しだけ動かせるようになった手を伸ばす。
『お?』
何かがあった、これは……手だ、柔らかくて暖かい手。人肌の温もりは私に安心感を与えてくれる。
手の主を確かめようと瞳を開けようとして……けれど何かで目を覆われた。
『だーめ、目は開けちゃいけないよ。そのままお眠り?』
汗ばんだ額を覆われて心地いい闇に支配されていく。掴んだ手を握り返してくれて、何となく嬉しさを感じる、諦めて身体の力を抜いた私は、その場で再び身を委ねる。
もう私が目を開けようとしていない事に気が付いたのだろう、目を塞いでいたものを外されて、続いて感じるのは確かな温かみ。背中にも手を回されて抱きしめられた。
額に感じるスベスベの肌、そして謎のツルツルとしたゴム質の感触。汗だくの身体を抱きしめる、低めの体温。
『また会おうね』
意識は真っ白に塗りつぶされた。
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