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第二章
独立
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「さすがに色々入ってましたね」
サトは魔法鞄から取り出した品々を眺めながら言った。
先に取り出していたグレイブの他に出てきたのは、華美な装飾が施された剣と宝石の嵌め込まれた盾、豪華な敷物に紋章が描かれた旗が数枚。
それに見た事もない貨幣といくつかの書類だった。
「グレイブもそうでしたが、剣も盾も実戦には使えなさそうですね。素材は金だし、それに施された宝石と細部にまでこだわった銀細工は戦場では役に立たないでしょう」
サトの言う通り、グレイブと剣の刃、盾は金で出来ており強度はほとんどないに等しかった。
「しかし、金銭的な価値としては相当なもんじゃぞ? 全て合わせれば金の重さだけで5キロはあるじゃろう。それに細工などの付加価値を考えれば5000万は下るまい」
「それにこの貨幣は1000年くらい前の金貨よ。あの頃は裕福な時代だったし、この金貨も純金で出来てるから今の金貨より貨幣価値は高いと思うわ」
「大まかに換算しておよそ1億ってところですか。ウチで扱うには高級過ぎますから、商会組合で買い取ってもらうのがいいと思うんですが」
サトはロンメルに尋ねたが、ロンメルは首を横に振った。
「コレはお前さんの物であって商店の物ではない。だから好きにして構わんよ」
「し、しかし……1億もの大金ですよ? 個人で持つには多過ぎませんか!?」
「あら? エレンちゃんと結婚するならそれくらいの蓄えは持っててほしいなぁ」
リサの言葉にエレンは焦って口を開いた。
「マ、ママっ! 私はお金は……」
「ダメよ、エレンちゃん。愛さえあればなんて言うけど、生活にはお金も必要なのよ。あって困るものじゃないし、サトちゃんもこれだけの資金があるなら、これを機に独立だって……」
「それはあり得ません」
リサの言葉を遮るようにサトは語気を強めて言った。
それはサトにとって一番看過できない言葉だったからだ。
ロンメルはそれに軽く息を漏らした。
「サトや。お前さんの気持ちは有り難いが、もう十分なんじゃぞ?」
「いえ、これだけは譲る事ができないんです。恩返しはもちろんですが、それ以上に俺の望みでもあるんです。どうか、俺をこの店においてください。お願いします」
サトは頭を下げた。
これにはロンメルも弱ってしまう。
まだ異世界に慣れない部分もあるとは言え、サトは1人でも店をやっていけるくらいの力はある。
今回のお金があれば目抜き通り沿いに店を構えることも出来なくはない。
しかし、サトはそれを望まない。
自分への恩返しのために。
自分自身がサトの足枷になっているのではないかと思い、ロンメルは少し胸の痛みを感じていた。
サトは魔法鞄から取り出した品々を眺めながら言った。
先に取り出していたグレイブの他に出てきたのは、華美な装飾が施された剣と宝石の嵌め込まれた盾、豪華な敷物に紋章が描かれた旗が数枚。
それに見た事もない貨幣といくつかの書類だった。
「グレイブもそうでしたが、剣も盾も実戦には使えなさそうですね。素材は金だし、それに施された宝石と細部にまでこだわった銀細工は戦場では役に立たないでしょう」
サトの言う通り、グレイブと剣の刃、盾は金で出来ており強度はほとんどないに等しかった。
「しかし、金銭的な価値としては相当なもんじゃぞ? 全て合わせれば金の重さだけで5キロはあるじゃろう。それに細工などの付加価値を考えれば5000万は下るまい」
「それにこの貨幣は1000年くらい前の金貨よ。あの頃は裕福な時代だったし、この金貨も純金で出来てるから今の金貨より貨幣価値は高いと思うわ」
「大まかに換算しておよそ1億ってところですか。ウチで扱うには高級過ぎますから、商会組合で買い取ってもらうのがいいと思うんですが」
サトはロンメルに尋ねたが、ロンメルは首を横に振った。
「コレはお前さんの物であって商店の物ではない。だから好きにして構わんよ」
「し、しかし……1億もの大金ですよ? 個人で持つには多過ぎませんか!?」
「あら? エレンちゃんと結婚するならそれくらいの蓄えは持っててほしいなぁ」
リサの言葉にエレンは焦って口を開いた。
「マ、ママっ! 私はお金は……」
「ダメよ、エレンちゃん。愛さえあればなんて言うけど、生活にはお金も必要なのよ。あって困るものじゃないし、サトちゃんもこれだけの資金があるなら、これを機に独立だって……」
「それはあり得ません」
リサの言葉を遮るようにサトは語気を強めて言った。
それはサトにとって一番看過できない言葉だったからだ。
ロンメルはそれに軽く息を漏らした。
「サトや。お前さんの気持ちは有り難いが、もう十分なんじゃぞ?」
「いえ、これだけは譲る事ができないんです。恩返しはもちろんですが、それ以上に俺の望みでもあるんです。どうか、俺をこの店においてください。お願いします」
サトは頭を下げた。
これにはロンメルも弱ってしまう。
まだ異世界に慣れない部分もあるとは言え、サトは1人でも店をやっていけるくらいの力はある。
今回のお金があれば目抜き通り沿いに店を構えることも出来なくはない。
しかし、サトはそれを望まない。
自分への恩返しのために。
自分自身がサトの足枷になっているのではないかと思い、ロンメルは少し胸の痛みを感じていた。
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