鑑定能力で恩を返す

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第二章

アクセサリー

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 賑やかだった大市も時間が経つにつれて、徐々に人の姿が減っていき、店じまいする店もチラホラ見えるようになっていた。
 残っている店の主人達も様々で、売れ残しのないように大声を張り上げて客引きをする者や、粘り強く交渉を重ねる者など様々だった。
 そんな中を考え事をしながらサトは歩いていた
 リサに言われた言葉はサトの心の中に強く残っており、あの後の店ではまともな取引が出来ていなかった。

「うーん、そりゃ結婚したいかしたくないかで言えばしたい……はず。いや、どうなんだ? 1人の方が気楽……いやいや、この世界に来た時の事を思えば1人は絶対に嫌だ……でもなぁ……」

 真面目であるが故に問題を軽く考える事が出来ず、頑固さ故に中途半端な事が出来ない。
 端的に言ってサトは面倒な男であった。

「……兄さん。ちょいと! お兄さんってば!」

「えっ? あ、なんですか?」

 考えるあまり周りが見えていなかったサトは年配の女性に声をかけられても気がつかず、肩を叩かれてやっと気づいた。

「あんた、大丈夫かい? ブツブツ言いながら此処を行ったり来たりしてるけど。悪いやつにでも騙されたのかい?」

 ふくよかな体型の犬獣人の中年女性が心配そうにサトを覗き込んだ。
 言われてサトは気づいたが、どうやら中央にある噴水の周りをグルグルと歩き回っていたらしい。

「あ……だ、大丈夫ですよ。少し考え事をしてただけです」

「そうかい? ならいいんだけど。大丈夫ならいいさ。ついでに何か買っていかないかい? 安くしとくよ」

 そう言うと女性は自分の店であろう場所を指差して、ニコッと笑った。

「商魂逞しいですね……一応聞きますが、何を扱っておられるんですか?」

「ウチは魔法のアクセサリーを扱ってるんだよ。と言っても、戦いに役立ちそうなのはもう売れちゃったから大した物は残ってないけどね」

 店には指輪やネックレス、イヤリングなどのアクセサリーが並べられていた。
 サトがそれを見ると、脳裏に言葉が浮かんでくる。

 土属性の指輪

 銀の指輪

 白金の首飾り

 白金の首飾り

 銀の耳飾り

 金の耳飾り

 闇属性の耳飾り

「ここにあるの全部が魔道具マジックアイテムなんですか?」

「残念ながらこの指輪とそっちの耳飾りだけさ。他のは普通のアクセサリーだよ。この指輪は土属性の指輪なんだけど、女性には不人気でね。でもサイズ的に女性しか付けれないから売れ残ってるのさ。そっちの耳飾りも闇属性でね。使い勝手が悪いから残ってるんだよ」

「使い勝手が悪いんですか?」

「アクセサリー系の魔道具マジックアイテムの効果は攻撃への属性付与だからね。魔物には光属性がいないから意味がないのさ」

 犬獣人の女性はサトの鑑定通りの説明をした。
 心配して声をかけてくれた事からもわかるように、かなり誠実な商売をしている人のようだとサトは思った。
 そして……

「ここにあるの全部ください」

 サトは自信たっぷりにそう言ったのである。


 

 

 

 
 
 
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