鑑定能力で恩を返す

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第二章

物質回復

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 すぐに準備が出来ないため、予備の剣を渡してルドルフを帰した後、ルドルフに合う剣を探すためにサトは店中をひっくり返していた。
 ルドルフの予算は100万ルーク。
 普通の剣なら多少良い物が買えて、魔剣には少し足りないといった微妙な金額だ。
 サトはこれまでに買取った品や市で購入した品の中で良品だけを選んでカウンターに並べた。

「う~ん、やっぱり一番いいのはこれなんだけど……」

 一番良い品はエレンに出会った時の市で買った魔剣テラーヴァイトである。
 相場は350万ルークだが、オークションにかければ500万ルークにはなる代物だ。
 いくらなんでも予算に合わな過ぎる。
 他にも質の良い長剣、小剣、細剣など様々な剣があるが、サトにはどれもルドルフに合う品とは思えなかった。
 最大の理由はルドルフが隻腕である事だ。
 このため両手剣は使用できず、片手剣であってもバランスが合わなければ使い勝手が悪くなるだけだからだ。

「なるべく、こいつに近い剣がいいよなぁ」

 カウンター横に立て掛けてあったのはルドルフから預かったボロボロの剣だ。
 ルドルフ曰く、魔剣ではないが伯爵家に代々伝わる名剣だそうだ。
 サトはその剣を見た。
 すると脳裏に言葉が浮かんでくる。

 ベーデガーの剣
 ベーデガー伯爵家に代々伝わる剣。
 名工が質の良い鋼を使って造った名剣だが、長きにわたる戦いでひび割れ、刃こぼれし、剣としての機能が無くなっている。
 相場 100ルーク

「名工の一品か。派手な装飾はないけど、実戦用に細部にまで丁寧に造り込まれている。本当に勿体無いな……これを治す事ができたらなぁ。でも、ここまで傷んでいると鍛治屋でも修復は無理だろうし、似たような……ん?」

 そう考えていると、脳裏に何か言葉が浮かんでくる。
 
 《物質回復マテリアルリカバリー
 物質の状態を回復させる魔法。

「な、なにっ!? 物質の回復? それってどういう意味なんだ? 原理は……」

 生物の回復は血液凝固によって欠損部位を止血し、損傷による壊死、挫滅組織を除去してから線維芽細胞の組織の形態形成による血管新生、肉芽形成を経て、表皮細胞が……

「うわぁああ! 待て待て待て待て! 多い! 多い! 情報が多いよ! もっと簡潔にわかりやすく!」

 ……物質には生命活動がないため、修復には同じ物質を補填し、血液の働きを魔力が行う事により生物と同じく物質の回復を行う事ができる。

「おおお! わかりやすい! ……って、あれ? 魔導の叡智ってこんなに柔軟性があったっけ? ……まぁ、いいか」

 サトは新しく得た《物質回復マテリアルリカバリー》の魔法に感動するあまり、魔導の叡智の変化に気づかなかった。

 

 
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