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第一章
シュタイエール公爵
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サトは立ち尽くしていた。
湖畔の中央に聳え立つ巨大な白亜の城。
それに至る橋の両脇に隙間なく立つ鎧姿の兵士達。
現代日本では決して見ることのない光景にサトは立ち尽くす事しか出来なかった。
「あ、あの……」
「ようこそお越しくださいました。私はシュタイエール公爵家で家令を務めますウォーレンと申します。どうぞ、此方へ。シュタイエール閣下がお待ちです」
「は、はいっ!」
ウォーレンについて橋を歩くサトだったが、その足の動きはぎこちなく、視線が泳いでいるのがわかる。
そんな姿を見ても、両端の兵士達の表情には一分の緩みもない。
表情も変えず、ただ前を向いているだけだったが、それが余計にサトへのプレッシャーとなっていた。
やっとの事で歩く事100メートル余り、視界一杯に広がる巨大な城の入り口までやって来た。
そして、その入り口の前に豪華な服を着た1人の初老の男性が立っていた。
白髪をオールバックにし、顎髭を綺麗に整えている。
その眉間には深い皺が刻まれており、口は一文字に閉じていた。
「旦那様、ロンメル商店のサト様をお連れ致しました」
ウォーレンが恭しく礼をし、そう説明すると、初老の男の眉がピクッと動くのが見えた。
何か不味い事をしたか? とサトが感じた瞬間に日本での記憶が思い出される。
公爵と言えば侯爵の上位爵位であり、王族を除けば貴族の頂点だ。
平民とは天と地ほどの身分差があるのに、自分は突っ立ったままだ。
そして、公爵家の家令が『旦那様』と呼んだ以上、この初老の男が公爵閣下御自身である。
刹那の瞬間にそう思い至ると、サトは慌ててその場に跪いた。
「む? あぁ、別に怒っていたわけではない。存外若い男だったから驚いただけだ。恩人として招いておきながら無粋であったな。許せ」
跪いたサトに初老の男は険しい顔とは裏腹に優しい声をかける。
サトは恐る恐る顔を上げて、様子を伺いながら立ち上がった。
「フリードリヒ・フォン・シュタイエールだ。一応、公爵としての立場はあるが、先も言ったように卿は恩人だ。楽にするがいい。まぁ、まずは入りたまえ」
そう言うとシュタイエール公爵は踵を返して城の中に入っていく。
サトも家令のウォーレンについて中に入り、そしてまた立ち尽くした。
白亜の城内の床にはフカフカの赤い絨毯が敷き詰められている。
エントランスの先には2階へと至る階段があるが、そこまでの通路には両脇にメイドがズラリと並んでいた。
現代日本ではお目にかかれない光景ではあるが、一度は体験したい光景にサトは少し喜びを感じながら立ち尽くしていた。
湖畔の中央に聳え立つ巨大な白亜の城。
それに至る橋の両脇に隙間なく立つ鎧姿の兵士達。
現代日本では決して見ることのない光景にサトは立ち尽くす事しか出来なかった。
「あ、あの……」
「ようこそお越しくださいました。私はシュタイエール公爵家で家令を務めますウォーレンと申します。どうぞ、此方へ。シュタイエール閣下がお待ちです」
「は、はいっ!」
ウォーレンについて橋を歩くサトだったが、その足の動きはぎこちなく、視線が泳いでいるのがわかる。
そんな姿を見ても、両端の兵士達の表情には一分の緩みもない。
表情も変えず、ただ前を向いているだけだったが、それが余計にサトへのプレッシャーとなっていた。
やっとの事で歩く事100メートル余り、視界一杯に広がる巨大な城の入り口までやって来た。
そして、その入り口の前に豪華な服を着た1人の初老の男性が立っていた。
白髪をオールバックにし、顎髭を綺麗に整えている。
その眉間には深い皺が刻まれており、口は一文字に閉じていた。
「旦那様、ロンメル商店のサト様をお連れ致しました」
ウォーレンが恭しく礼をし、そう説明すると、初老の男の眉がピクッと動くのが見えた。
何か不味い事をしたか? とサトが感じた瞬間に日本での記憶が思い出される。
公爵と言えば侯爵の上位爵位であり、王族を除けば貴族の頂点だ。
平民とは天と地ほどの身分差があるのに、自分は突っ立ったままだ。
そして、公爵家の家令が『旦那様』と呼んだ以上、この初老の男が公爵閣下御自身である。
刹那の瞬間にそう思い至ると、サトは慌ててその場に跪いた。
「む? あぁ、別に怒っていたわけではない。存外若い男だったから驚いただけだ。恩人として招いておきながら無粋であったな。許せ」
跪いたサトに初老の男は険しい顔とは裏腹に優しい声をかける。
サトは恐る恐る顔を上げて、様子を伺いながら立ち上がった。
「フリードリヒ・フォン・シュタイエールだ。一応、公爵としての立場はあるが、先も言ったように卿は恩人だ。楽にするがいい。まぁ、まずは入りたまえ」
そう言うとシュタイエール公爵は踵を返して城の中に入っていく。
サトも家令のウォーレンについて中に入り、そしてまた立ち尽くした。
白亜の城内の床にはフカフカの赤い絨毯が敷き詰められている。
エントランスの先には2階へと至る階段があるが、そこまでの通路には両脇にメイドがズラリと並んでいた。
現代日本ではお目にかかれない光景ではあるが、一度は体験したい光景にサトは少し喜びを感じながら立ち尽くしていた。
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