鑑定能力で恩を返す

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第一章

現れた3人組

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「話は聞かせてもらった! 俺達に任せてもらおうじゃないかっ!」

 突然、店の扉が勢いよく開いたかと思うと、更に勢いの良い声が聞こえて来る。
 そこには3人の男が立っていた。

「困っている淑女の願いは俺が聞き届けよう!」

「また勝手なこと言って……」

「俺は構わんぞ」

 扉の前に立っていたのは、ロンメル商店の常連ハンターでもあるジュリアン、ヘンリー、オーバンだった。

「あっ! いらっしゃい! ジュリアンさん、いつ公都に戻られたんですか?」

「昨日だ。いやぁ、王都では国王陛下との謁見やらパーティーやらで大変だったぞ」

「その割には仮面越しでもわかるくらいにデレデレしてたけどね」

「褒賞金もたんまりだったからな。サト、お前の取り分もあるぞ」

 オーバンはサトにズシっと重たさを感じる程の皮袋を渡した。
 
「おもっ! こ、これって幾ら入ってるんですか?」

「大金貨100枚だ」

「だ、だ、だ、大金貨が100枚っ!?」

 サトが驚くのも無理はない。
 大金貨100枚と言えば日本円にして1000万円。
 庶民であるサトにとっては大金だった。

「こ、こんななら貰えませんよ! それにこれはジュリアンさん達の褒賞金でしょ!? 俺が貰うわけには……」

「なぁに言ってるんだ、サト。お前の鑑定のお陰で俺達は世紀の大発見が出来たんだぞ!」

「そうそう。サトがいなかったらこんな大金入らなかったんだからね。それに、それは貰った分の一部だから気にしないでいいよ」

「貰っておけ。後で役に立つ事もある」

 サトは目の前の大金に躊躇したが、ジュリアン達は絶対に引かない。
 ハンターは貸しも借りも作る事を嫌っている。
 明日の命もしれない彼らにとって心残りは人生の汚点となり得ないからだ。
 だから借りはすぐに返すし、貸しはすぐに取り立てる。
 それがハンターの鉄則である。

「これ以上は無駄みたいですね……わかりました。いただきます」

「おう! それでいいんだ。それと其方のお嬢さん……おおっ、これは失礼。貴女様はアルヴォード家の新当主、ミネルバァ様ではありませんか。御無礼、平にご容赦を」

 大仰に礼をするジュリアンをミネルバァは手で制した。

「構わん。それにしても、まさかかの有名な《三驚さんきょう》がこの店の馴染みとはな」

「さ、三驚?」

「うん。今回の働きで陛下からチーム名をもらったんだ! 凄いでしょ!?」

「チーム名を名乗れるのは一流ハンターの証だ。ましてや王家公認とあれば箔がつくというものだ」 

 ハンターのチーム名は勝手に名乗ってはならない事になっている。
 これは同一のチーム名を使っての詐欺行為を防ぐためにであり、公認でないチーム名を名乗ると罰金、悪質であれば犯罪者となる。
 
「では、三驚の諸君。先の発言に偽りはないな?」

「ええ。サトに貸しを返す良い機会ですからね。喜んでダンジョン改に参加しますよ」

「それに一回やってみたかったんだよねぇ、ダンジョン改」

「鈍った身体を起こすのにちょうどいい」

「うむ! よかろう! 報酬は弾むからよろしく頼んだぞ!」

「「「おうっ!」」」

 威勢よく声を上げる3人を見ながらサトは思った。

『俺……行くなんて言ってないのに……』

 言い出す間を逃したサトはズルズルと周りに流されていくのであった。
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