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第一章
ダンピールと猫獣人
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「舐めるように拭いてあげるなんて、随分と仲がいいようだにゃ? さぁ、詳しく聞かせてもらおうかにゃ?」
アメリアの握るサトの肩が肉の締まり、ギュッという音を立てる。
爪こそ出ていないものの握力だけで肉に食い込んでいく。
「ア、アメリアさん……あ、あの、肩が……」
「逃がさないにゃ」
アメリアの眼はすでにネコ科の猛獣が獲物を見定めた時の眼になっている。
鋭く、そして大きく。
そこからは決して逃がさないという意思が伝わってきていた。
「私というものがありなにゃがら、女を連れ込むとは良い度胸にゃ? 覚悟はいいかにゃ?」
「いやいやいやいや! 俺とアメリアさんは何も無いでしょ!?」
アメリアは掴んだ肩をクルッと回して向かい合うようにしてから今度は両の肩を掴んだ。
そして凄い剣幕で吼えたてる。
「ひどいにゃ! 旦那が嫁の女心を弄んだにゃ!?」
「旦那も嫁もないですよ! っていうか、会ったのも今日で2回目でしょ!?」
「愛は時間を超越するにゃ?」
「勝手に超えないでください!」
そんな不毛なやりとりをミネルバァは少し離れた所から呆れて見ていた。
主人としてはアメリアの暴走を止めた方がいいのはわかっているが、長年の付き合いでわかっている。
アメリアは言って聞くような従順なメイドでは無い事を。
しかし、この現状を放置するわけにもいかない。
打開策を考えているミネルバァを他所に、事態を悪化させる者が舞い戻ってきた。
「サト様、お湯が沸きました。さぁ、お部屋の方へ……何をされてるんですか?」
アメリアに両肩を掴まれて尋問をされている姿も、エレンには仲睦まじい男女の姿にしか見えなかった。
アメリアにしてもエレンにしてもそうだが、恋する者は時に思考が極端になるものである。
「サト様……此方の方は?」
「私は嫁にゃ!」
「違うでしょ! 奥にいらっしゃるアルヴォード女伯爵様のメイドさんです。ちょっと強引な方で……」
「強引……つまり、困ってらっしゃるんですね?」
エレンはそう言うと、アメリアの方に向かって歩いていく。
その瞳は暗く妖しい光を放っていた。
「お前……ヴァンパイア、いや少し人族の匂いがするにゃ。ダンピールにゃ?」
「あら? お鼻が良いんですね。猫さんかと思ったら犬さんでしたか? とにかく、早くその無礼な『お手』を引いてくださいませんか?」
2人の視線が交錯する。
いや、交錯というほど生易しいものではない。
2人の視線はぶつかり合い、その場の空気を重苦しくさせるように互いに異様な気配を漂わせていた。
殺気という名の気配を。
アメリアの握るサトの肩が肉の締まり、ギュッという音を立てる。
爪こそ出ていないものの握力だけで肉に食い込んでいく。
「ア、アメリアさん……あ、あの、肩が……」
「逃がさないにゃ」
アメリアの眼はすでにネコ科の猛獣が獲物を見定めた時の眼になっている。
鋭く、そして大きく。
そこからは決して逃がさないという意思が伝わってきていた。
「私というものがありなにゃがら、女を連れ込むとは良い度胸にゃ? 覚悟はいいかにゃ?」
「いやいやいやいや! 俺とアメリアさんは何も無いでしょ!?」
アメリアは掴んだ肩をクルッと回して向かい合うようにしてから今度は両の肩を掴んだ。
そして凄い剣幕で吼えたてる。
「ひどいにゃ! 旦那が嫁の女心を弄んだにゃ!?」
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「愛は時間を超越するにゃ?」
「勝手に超えないでください!」
そんな不毛なやりとりをミネルバァは少し離れた所から呆れて見ていた。
主人としてはアメリアの暴走を止めた方がいいのはわかっているが、長年の付き合いでわかっている。
アメリアは言って聞くような従順なメイドでは無い事を。
しかし、この現状を放置するわけにもいかない。
打開策を考えているミネルバァを他所に、事態を悪化させる者が舞い戻ってきた。
「サト様、お湯が沸きました。さぁ、お部屋の方へ……何をされてるんですか?」
アメリアに両肩を掴まれて尋問をされている姿も、エレンには仲睦まじい男女の姿にしか見えなかった。
アメリアにしてもエレンにしてもそうだが、恋する者は時に思考が極端になるものである。
「サト様……此方の方は?」
「私は嫁にゃ!」
「違うでしょ! 奥にいらっしゃるアルヴォード女伯爵様のメイドさんです。ちょっと強引な方で……」
「強引……つまり、困ってらっしゃるんですね?」
エレンはそう言うと、アメリアの方に向かって歩いていく。
その瞳は暗く妖しい光を放っていた。
「お前……ヴァンパイア、いや少し人族の匂いがするにゃ。ダンピールにゃ?」
「あら? お鼻が良いんですね。猫さんかと思ったら犬さんでしたか? とにかく、早くその無礼な『お手』を引いてくださいませんか?」
2人の視線が交錯する。
いや、交錯というほど生易しいものではない。
2人の視線はぶつかり合い、その場の空気を重苦しくさせるように互いに異様な気配を漂わせていた。
殺気という名の気配を。
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