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第一章
新しい朝が来た
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今の時期、ブロディア王国の公都ハメルンは穏やかな気候が続いていた。
空は晴れ、心地よい風が街をゆっくり抜けていく。
そんな朝は誰にとっても起き難く、二度寝には最高の環境だ。
そして、サトにとってもそれは例外ではない。
目覚まし時計の金切り声に急かされることなく、サトは己が布団の温かさに身を委ねていた。
「起きてください。サト様、起きてください」
幸せな朝の微睡みの中、それに相応しい優しい声がサトの耳に届く。
だが、声は優しくとも内容は厳しい。
サトは頭まで布団を被って抵抗を試みる。
「まぁ、困りました。では、仕方ありませんね」
優しい声はそう言って撤退を始めたようだ。
サトはそう思いながら布団の砦に籠城を決め込んだ。
しかし、その砦に侵入する者がいる。
布団の囲いの一部を突破して、サトの身体を端に追いやってくる。
なんと強引な手法か。
サトは必死に押し返そうと抵抗を試みるが、あろう事か侵入者はサトの身体の上に覆い被さってきた。
柔らかな2つの感触がサトの胸に当たる。
一体なんだこれは?
サトは寝ぼけた頭で必死に考えるが、機能低下した脳は答えを導いてはくれなかった。
今度は顔に何か柔らかい毛のような者がフワリとかかる。
本来なら不快な筈だが、その毛からはとてもいい香りがするので、むしろ気持ちが和らいだ。
しかし、和らいだ気持ちもそこまでだった。
「起・き・て・く・だ・さ・い。サ・ト・様」
「っ! うわぁあああ!」
サトは耳を撫でるような声に素っ頓狂な声を上げた。
だが、反射的に起きようとした上体は起き上がらず、開いた眼には衝撃の映像が飛び込んできた。
「おはようございます。サト様」
サトの眼に半裸状態の絶世の美女、エレンが身体の上に跨っている姿が飛び込んできた。
自分の布団を頭まで被っているだけで、衣服を纏っておらず、その妖艶な美貌を遺憾無く発揮している姿は禁欲状態だったサトには刺激が強すぎた。
「エ、エレンさん! な、何をっ!?」
「はい。サト様が起きてくださらないので、私もご一緒しようかと。でも、朝の仕事で汚れた服を着てはお布団を汚してしまうので、脱いじゃいました」
「ぬ、脱いじゃいましたって……と、とにかく服を……」
サトは顔を逸らしたが、強烈な映像は脳裏に焼きついており、眼を閉じても瞼の裏に浮かんで来る。
更に言うなら柔らかな感触は未だにサトの身体に触れているのだ。
これは消えようがない。
「ですが、朝の御奉仕も必要かと……」
「い、いいです! っていうか、朝も昼も夜も奉仕はいいですから!」
そんな2人のやり取りの間をガチャっという音が割り込んできた。
「騒がしいのぅ。何をやって……」
サトの部屋の扉を開けたのはロンメルだった。
しかし、ロンメルは部屋には入らず、『すまん』の一言を残して再び扉を閉めた。
廊下からは遠ざかる足音だけが聞こえてくる。
「……御奉仕します?」
「しなくていい! っていうか、ロンメルさんも! 変な気を遣わないでください!」
サトの雄叫びと共に新しい朝がやってきたのだった。
空は晴れ、心地よい風が街をゆっくり抜けていく。
そんな朝は誰にとっても起き難く、二度寝には最高の環境だ。
そして、サトにとってもそれは例外ではない。
目覚まし時計の金切り声に急かされることなく、サトは己が布団の温かさに身を委ねていた。
「起きてください。サト様、起きてください」
幸せな朝の微睡みの中、それに相応しい優しい声がサトの耳に届く。
だが、声は優しくとも内容は厳しい。
サトは頭まで布団を被って抵抗を試みる。
「まぁ、困りました。では、仕方ありませんね」
優しい声はそう言って撤退を始めたようだ。
サトはそう思いながら布団の砦に籠城を決め込んだ。
しかし、その砦に侵入する者がいる。
布団の囲いの一部を突破して、サトの身体を端に追いやってくる。
なんと強引な手法か。
サトは必死に押し返そうと抵抗を試みるが、あろう事か侵入者はサトの身体の上に覆い被さってきた。
柔らかな2つの感触がサトの胸に当たる。
一体なんだこれは?
サトは寝ぼけた頭で必死に考えるが、機能低下した脳は答えを導いてはくれなかった。
今度は顔に何か柔らかい毛のような者がフワリとかかる。
本来なら不快な筈だが、その毛からはとてもいい香りがするので、むしろ気持ちが和らいだ。
しかし、和らいだ気持ちもそこまでだった。
「起・き・て・く・だ・さ・い。サ・ト・様」
「っ! うわぁあああ!」
サトは耳を撫でるような声に素っ頓狂な声を上げた。
だが、反射的に起きようとした上体は起き上がらず、開いた眼には衝撃の映像が飛び込んできた。
「おはようございます。サト様」
サトの眼に半裸状態の絶世の美女、エレンが身体の上に跨っている姿が飛び込んできた。
自分の布団を頭まで被っているだけで、衣服を纏っておらず、その妖艶な美貌を遺憾無く発揮している姿は禁欲状態だったサトには刺激が強すぎた。
「エ、エレンさん! な、何をっ!?」
「はい。サト様が起きてくださらないので、私もご一緒しようかと。でも、朝の仕事で汚れた服を着てはお布団を汚してしまうので、脱いじゃいました」
「ぬ、脱いじゃいましたって……と、とにかく服を……」
サトは顔を逸らしたが、強烈な映像は脳裏に焼きついており、眼を閉じても瞼の裏に浮かんで来る。
更に言うなら柔らかな感触は未だにサトの身体に触れているのだ。
これは消えようがない。
「ですが、朝の御奉仕も必要かと……」
「い、いいです! っていうか、朝も昼も夜も奉仕はいいですから!」
そんな2人のやり取りの間をガチャっという音が割り込んできた。
「騒がしいのぅ。何をやって……」
サトの部屋の扉を開けたのはロンメルだった。
しかし、ロンメルは部屋には入らず、『すまん』の一言を残して再び扉を閉めた。
廊下からは遠ざかる足音だけが聞こえてくる。
「……御奉仕します?」
「しなくていい! っていうか、ロンメルさんも! 変な気を遣わないでください!」
サトの雄叫びと共に新しい朝がやってきたのだった。
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