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第一章
御伽噺級
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カウンターの上に置かれた尖った石は尖った石としか表現が出来ない物だった。
少し曲がった円錐形で牙のようにも見えるが、特に硬いわけでもなく、所々が朽ちて穴が開いていた。
「なんじゃ? このボロボロの石は?」
「いやぁ、それが《ハメルンのダンジョン》の中層の宝箱から出てきたんだ。ただの石にしか見えないが、宝箱から出てきたもんだから捨てるのも惜しくてね。そこで鑑定を頼みにきたってわけだ」
「魔力が微妙に感じられるんだよねぇ。でも、それだけなんだ。年代物っぽいなら何かの祭器か呪具の可能性もあるけどねぇ」
「呪具はまずい。すぐに教会で浄化しないと俺達がヤバいぞ」
ブロディア王国では呪われた品の都市内への持込禁止となっている。
ダンジョンから出た物であれば持込みはできるが、すぐに鑑定を行い、呪具または判別不能であれば教会にいる高司祭に浄化の魔法をかけてもらわねばならないと法律で決まっている。
ただし、浄化にはお布施が必要となる。
「呪具でも浄化してもらえば聖具として使える場合もあるからな。呪具でも構わないんだが、教会に持込むと高い鑑定料とられるからな。浄化のお布施と合わせると結構痛いんだが、ここなら割安で鑑定してもらえるだろ?」
「というわけで、お願いねぇ」
「頼む」
「調子のいい奴らじゃのぅ。まぁ、ええわい。サト、まずはお前さんが鑑定してみるがええ。儂は隣で見ておるからな」
ロンメルはサトの前に石を置いた。
ジュリアン達はロンメルが鑑定しない事に少し不安そうな顔をしたが、隣で見ているなら大丈夫だろうと任せる事にした。
サトが目の前の石を見ると、脳裏に言葉が浮かんでくる。
ハメルンの魔笛(呪具)
かつて、ハメルンを恐怖に陥れた魔人が持っていた笛。魔力を込めて吹くと魔物を呼び寄せる事ができる。吹く強さによっては魔王すら呼び寄せることができる古代の秘宝。相場3000万ルーク。
「あかぁあああああああああん!」
サトは絶叫し、ロンメルの腕を引っ張って店の奥に走ったいった。
「な、なんだ!? どうした!?」
「なになになになになに!?」
「何事だっ!」
突然のことに驚きを隠せない3人を放置してサトとロンメルは店の奥にある倉庫の一室に入った。
鬼気迫るサトの迫力に圧されながらもロンメルはサトに問いかけた。
「な、なんじゃ? サト、どうしたんじゃ?」
「ダメです! ダメです! あれはダメです! ヤバいブツですよ! やば過ぎですよ! ロンメルさん! 早いとこなんとかしないと危険ですよ!」
「お、お、落ち着かんか! それと年寄りの胸ぐらを掴んで揺さぶるのはやめい!」
慌てるサトをロンメルはなんとか宥めて、鑑定結果を尋ねる。
サトは恐怖に怯えながらも包み隠さず鑑定結果の全て伝えた。
「な、なにぃ! ハメルンの魔笛じゃと!? あの御伽噺の笛が実在するというのかっ!」
「御伽噺とか知りませんけど、とにかくヤバいブツですよ! 魔王とかってあり得ないでしょ!」
「むむむ……これはマズイぞい。まさか、1発目からこんな大物が来るとは……どうやって奴等に説明するかのぅ……」
サトの鑑定能力は対象物を見れば見るほど正確に鑑定できる能力である。
しかし、この能力をサトが持っている事は秘密であり、当然だが鑑定能力でわかったと伝えるわけにはいかない。
能力で知り得た結果をそれっぽい言葉で説明し、相手を納得させないといけないのだ。
昨日の酒場ではサトがほろ酔いながらもそれっぽく伝えていたから良かったが、今回は別である。
「御伽噺級の古代の秘宝となると、適当な説明では納得せんじゃろうな。何か根拠のようなものが無いとのぅ」
サトとロンメルが頭を抱えていると、倉庫の外からジュリアンの声がする。
「おーい、急にどうしたんだ? 何かわかったのか?」
「「ヤ、ヤバいなぁ……」」
サトとロンメルは互いに顔を見合わせて冷汗を流した。
少し曲がった円錐形で牙のようにも見えるが、特に硬いわけでもなく、所々が朽ちて穴が開いていた。
「なんじゃ? このボロボロの石は?」
「いやぁ、それが《ハメルンのダンジョン》の中層の宝箱から出てきたんだ。ただの石にしか見えないが、宝箱から出てきたもんだから捨てるのも惜しくてね。そこで鑑定を頼みにきたってわけだ」
「魔力が微妙に感じられるんだよねぇ。でも、それだけなんだ。年代物っぽいなら何かの祭器か呪具の可能性もあるけどねぇ」
「呪具はまずい。すぐに教会で浄化しないと俺達がヤバいぞ」
ブロディア王国では呪われた品の都市内への持込禁止となっている。
ダンジョンから出た物であれば持込みはできるが、すぐに鑑定を行い、呪具または判別不能であれば教会にいる高司祭に浄化の魔法をかけてもらわねばならないと法律で決まっている。
ただし、浄化にはお布施が必要となる。
「呪具でも浄化してもらえば聖具として使える場合もあるからな。呪具でも構わないんだが、教会に持込むと高い鑑定料とられるからな。浄化のお布施と合わせると結構痛いんだが、ここなら割安で鑑定してもらえるだろ?」
「というわけで、お願いねぇ」
「頼む」
「調子のいい奴らじゃのぅ。まぁ、ええわい。サト、まずはお前さんが鑑定してみるがええ。儂は隣で見ておるからな」
ロンメルはサトの前に石を置いた。
ジュリアン達はロンメルが鑑定しない事に少し不安そうな顔をしたが、隣で見ているなら大丈夫だろうと任せる事にした。
サトが目の前の石を見ると、脳裏に言葉が浮かんでくる。
ハメルンの魔笛(呪具)
かつて、ハメルンを恐怖に陥れた魔人が持っていた笛。魔力を込めて吹くと魔物を呼び寄せる事ができる。吹く強さによっては魔王すら呼び寄せることができる古代の秘宝。相場3000万ルーク。
「あかぁあああああああああん!」
サトは絶叫し、ロンメルの腕を引っ張って店の奥に走ったいった。
「な、なんだ!? どうした!?」
「なになになになになに!?」
「何事だっ!」
突然のことに驚きを隠せない3人を放置してサトとロンメルは店の奥にある倉庫の一室に入った。
鬼気迫るサトの迫力に圧されながらもロンメルはサトに問いかけた。
「な、なんじゃ? サト、どうしたんじゃ?」
「ダメです! ダメです! あれはダメです! ヤバいブツですよ! やば過ぎですよ! ロンメルさん! 早いとこなんとかしないと危険ですよ!」
「お、お、落ち着かんか! それと年寄りの胸ぐらを掴んで揺さぶるのはやめい!」
慌てるサトをロンメルはなんとか宥めて、鑑定結果を尋ねる。
サトは恐怖に怯えながらも包み隠さず鑑定結果の全て伝えた。
「な、なにぃ! ハメルンの魔笛じゃと!? あの御伽噺の笛が実在するというのかっ!」
「御伽噺とか知りませんけど、とにかくヤバいブツですよ! 魔王とかってあり得ないでしょ!」
「むむむ……これはマズイぞい。まさか、1発目からこんな大物が来るとは……どうやって奴等に説明するかのぅ……」
サトの鑑定能力は対象物を見れば見るほど正確に鑑定できる能力である。
しかし、この能力をサトが持っている事は秘密であり、当然だが鑑定能力でわかったと伝えるわけにはいかない。
能力で知り得た結果をそれっぽい言葉で説明し、相手を納得させないといけないのだ。
昨日の酒場ではサトがほろ酔いながらもそれっぽく伝えていたから良かったが、今回は別である。
「御伽噺級の古代の秘宝となると、適当な説明では納得せんじゃろうな。何か根拠のようなものが無いとのぅ」
サトとロンメルが頭を抱えていると、倉庫の外からジュリアンの声がする。
「おーい、急にどうしたんだ? 何かわかったのか?」
「「ヤ、ヤバいなぁ……」」
サトとロンメルは互いに顔を見合わせて冷汗を流した。
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