18 / 155
第一章
3人組との邂逅
しおりを挟む
ロンメルの店は閑古鳥が鳴いていた。
開店してから約2時間が経過するが、まだ客は1人も来ていない。
そんな状況でもロンメルは焦った様子もなく、のんびりとお茶を飲み、サトはソワソワしながら掃除を繰り返していた。
「これこれ、サト。そんなにせかせか動かんでええぞ。こっちが落ち着かんわい」
「で、ですが、朝から1人もお客さん来てないじゃないですか? 大丈夫なんでしょうか? まさか昨日の事が原因で……」
「気にし過ぎじゃよ。ウチはこれがいつも通りなんじゃ。中央通りの店でもひっきりなしに客が来る事などないわい」
現代日本に生きてきたサトにとって、開店から2時間経っても客が来ないのは死活問題に近かった。
しかし、ここは異世界である。
いくら大都市である公都ハメルンでも裕福なのは貴族か大商人だけで、他の市民達はそれほど余裕がある生活をしているわけではない。
気軽にショッピングを楽しむ事などあり得ないのだ。
「それにウチはハンター相手の商売がメインじゃからな。ハンターの大半は外に出ておる時間じゃから、来なくて当たり前じゃよ」
「じゃあ、帰ってくる時間に合わせて店を開ければいいんじゃないんですか? その分、深夜まで開けておくとか」
「朝方にダンジョンに篭っておる奴らが帰ってくる事もあるからの。それと深夜なんぞ開けておったら、酔ったハンター達に店中荒らされるわい」
この辺りも現代日本との違いである。
この世界には警察はおらず、騎士団が治安を守っているが、広大な領地に対してその数は少ない。
結果として夜間などは特に治安が悪くなるのだ。
「まぁ、朝早くから開けて昼過ぎに閉める店もあるがの。ウチは他と一緒じゃよ。おっ、客が来たようじゃぞ」
「えっ?」
ロンメルの言葉にサトは扉の方を向くと、そこには3人組の男が立っていた。
「よぉ、爺さん。元気だったかい?」
「お久しぶりで~す。あれ? そっちの人は見た事ないなぁ」
「むっ? 誰だ?」
3人組の男達はロンメルに挨拶しながらカウンター前にやってきた。
「お前さん達も元気そうで何よりじゃ。隣におるのはサト。ウチで働くことになった男じゃ。まぁ、よろしくの」
「よ、よろしくお願いします」
「そういうことか。俺の名前はジュリアン。凄腕のハンターだ。よろしく!」
ジュリアンは目と鼻をマスクで隠していたが、口調は穏やかで陰険な印象はない。
「僕はヘンリー。魔法使いのハンターだよ。よろしくね」
ヘンリーは小柄で細身の体躯に童顔、更に口調が軽いためか子供っぽい印象を持った。
「……オーバンだ」
オーバンは寡黙な筋肉質の大男で、背負った大剣が似合う、まさにハンターという印象だった。
「こいつらは物好きなウチの常連じゃ。よく顔を合わせるじゃろう。それで、今日は何の用じゃ?」
「おお、そうだった。実はよくわからん物を見つけちまってな。爺さんの知恵を借りようと思ってよ」
そう言うと、ジュリアンは荷物からある物を取り出してカウンターに置いた。
それは尖った石のような物体だった。
開店してから約2時間が経過するが、まだ客は1人も来ていない。
そんな状況でもロンメルは焦った様子もなく、のんびりとお茶を飲み、サトはソワソワしながら掃除を繰り返していた。
「これこれ、サト。そんなにせかせか動かんでええぞ。こっちが落ち着かんわい」
「で、ですが、朝から1人もお客さん来てないじゃないですか? 大丈夫なんでしょうか? まさか昨日の事が原因で……」
「気にし過ぎじゃよ。ウチはこれがいつも通りなんじゃ。中央通りの店でもひっきりなしに客が来る事などないわい」
現代日本に生きてきたサトにとって、開店から2時間経っても客が来ないのは死活問題に近かった。
しかし、ここは異世界である。
いくら大都市である公都ハメルンでも裕福なのは貴族か大商人だけで、他の市民達はそれほど余裕がある生活をしているわけではない。
気軽にショッピングを楽しむ事などあり得ないのだ。
「それにウチはハンター相手の商売がメインじゃからな。ハンターの大半は外に出ておる時間じゃから、来なくて当たり前じゃよ」
「じゃあ、帰ってくる時間に合わせて店を開ければいいんじゃないんですか? その分、深夜まで開けておくとか」
「朝方にダンジョンに篭っておる奴らが帰ってくる事もあるからの。それと深夜なんぞ開けておったら、酔ったハンター達に店中荒らされるわい」
この辺りも現代日本との違いである。
この世界には警察はおらず、騎士団が治安を守っているが、広大な領地に対してその数は少ない。
結果として夜間などは特に治安が悪くなるのだ。
「まぁ、朝早くから開けて昼過ぎに閉める店もあるがの。ウチは他と一緒じゃよ。おっ、客が来たようじゃぞ」
「えっ?」
ロンメルの言葉にサトは扉の方を向くと、そこには3人組の男が立っていた。
「よぉ、爺さん。元気だったかい?」
「お久しぶりで~す。あれ? そっちの人は見た事ないなぁ」
「むっ? 誰だ?」
3人組の男達はロンメルに挨拶しながらカウンター前にやってきた。
「お前さん達も元気そうで何よりじゃ。隣におるのはサト。ウチで働くことになった男じゃ。まぁ、よろしくの」
「よ、よろしくお願いします」
「そういうことか。俺の名前はジュリアン。凄腕のハンターだ。よろしく!」
ジュリアンは目と鼻をマスクで隠していたが、口調は穏やかで陰険な印象はない。
「僕はヘンリー。魔法使いのハンターだよ。よろしくね」
ヘンリーは小柄で細身の体躯に童顔、更に口調が軽いためか子供っぽい印象を持った。
「……オーバンだ」
オーバンは寡黙な筋肉質の大男で、背負った大剣が似合う、まさにハンターという印象だった。
「こいつらは物好きなウチの常連じゃ。よく顔を合わせるじゃろう。それで、今日は何の用じゃ?」
「おお、そうだった。実はよくわからん物を見つけちまってな。爺さんの知恵を借りようと思ってよ」
そう言うと、ジュリアンは荷物からある物を取り出してカウンターに置いた。
それは尖った石のような物体だった。
0
お気に入りに追加
262
あなたにおすすめの小説
嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜
𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。
だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。
「もっと早く癒せよ! このグズが!」
「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」
「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」
また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、
「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」
「チッ。あの能無しのせいで……」
頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。
もう我慢ならない!
聖女さんは、とうとう怒った。
【完結】拾ったおじさんが何やら普通ではありませんでした…
三園 七詩
ファンタジー
カノンは祖母と食堂を切り盛りする普通の女の子…そんなカノンがいつものように店を閉めようとすると…物音が…そこには倒れている人が…拾った人はおじさんだった…それもかなりのイケおじだった!
次の話(グレイ視点)にて完結になります。
お読みいただきありがとうございました。
無詠唱魔法が強いなんて誰が決めた! ~詠唱魔法を極めた俺は、無自覚に勘違い王子を追い詰める~
ノ木瀬 優
ファンタジー
詠唱魔法に強いこだわりを持つクロは無詠唱魔法を一切覚えずに、同郷のマリアと国立魔導士養成学校に入学する。だが、そこにはめんどくさい勘違い王子がいて……。
勘違いと空回りを続ける馬鹿王子と、実は・・・なクロとマリア。彼らの学園生活が、今、始まる!
全11話(約4万6千字)で完結致しますので安心してお読みください。
学園生活が始まるのは1話からです。0話は題名の通り過去の話となっておりますので、さらっと読みたい方は、1話から読まれてもいいかも?です。
残酷な描写、肌色表現はR15の範囲に抑えたつもりです。
色々実験的な試みも行っておりますので、感想など頂けると助かります。
ぽっちゃり女子の異世界人生
猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。
最強主人公はイケメンでハーレム。
脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。
落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。
=主人公は男でも女でも顔が良い。
そして、ハンパなく強い。
そんな常識いりませんっ。
私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。
【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
チート転生~チートって本当にあるものですね~
水魔沙希
ファンタジー
死んでしまった片瀬彼方は、突然異世界に転生してしまう。しかも、赤ちゃん時代からやり直せと!?何げにステータスを見ていたら、何やら面白そうなユニークスキルがあった!!
そのスキルが、随分チートな事に気付くのは神の加護を得てからだった。
亀更新で気が向いたら、随時更新しようと思います。ご了承お願いいたします。
復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる