鑑定能力で恩を返す

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第一章

心得

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「ひゃ、100万ルーク……この一枚が……」

 サトは店に置いてある商品と見ながらその貨幣価値を考えた。
 サトは元の世界では輸入雑貨を取り扱う会社にいた。
 その仕事の経験から、おおよそではあるが10ルークの価値は日本円で10円の価値、等価であると思った。
 つまり、目の前にある硬貨は100万円の価値がある硬貨という事になる。
 日本においての最高紙幣は一万円であり、100万もする貨幣は世界的にも見られなかったので、サトは物珍しさから白金貨を見つめていた。

「白金貨はそう使う事もない硬貨じゃよ。ウチの店には100万単位の売買なんぞ滅多にないからのぅ。ある魔道具マジックアイテムを200万ほどで買い取った事もあるが、支払いは大金貨と金貨じゃったしな」

「確かに100万の白金貨を個人店で使おうと思ってもお釣りとか大変そうですしね」

「それと盗難の危険じゃな。一枚が奪われただけで大事じゃからのぅ。そういうリスクもあって白金貨は平民の間では使われる事はほとんどないわぃ」

 ロンメル曰く、白金貨は大店の商店同士の取引で使われる事が多いもので、個人経営のロンメルの店で使う事はないそうだ。
 
「ところで、お前さんは商売の経験はあるのかのぅ?」

「え、ええ、まぁ、輸入雑貨……他国から商品を買い付けて販売する仕事をしてましたから……」

「なんと? 国を跨ぐとはそれは凄いのぅ。なら、問題なかろう。明日からは実際に店を開けるからの。それで仕事を覚えておくれ。あとは、お前さんの得物を探してから隣の店で飯でも食べるか」

 ロンメルの言葉にサトは疑問を抱かずにいられなかった。
 
「得物とは何でしょうか? 狩りか何かするんですか?」

「違うぞ? 得物とはお前さんの武具じゃよ。店にある物なら好きに選んでいいからの」

 サトは驚愕した。
 目の前の老人が剣を片手ににこやかに説明してくれた内容が、思いもよらない事だったからだ。

「武具なんて……触った事もないですよ! 俺のいた世界じゃ銃刀法ってのがあって、不必要な武器は……」

「この世界では必要なんじゃよ。魔物や盗賊などの犯罪者から身を守るにはのぅ。心配せんでええ、お前さんの身体つきから剣に覚えのない事はわかるからのぅ。ある程度は身を守れるように訓練してやるわぃ。カッカッカッ!」

 老人がにこやかに笑う。
 サトはその笑みに若干の忌避感を抱いた。
 しかし、ロンメルの言葉に間違いはない事はわかっている。
 ここは現代日本ではない。
 法律が守ってくれるわけではない。
 人権が保障されているわけでもない。
 
 『弱肉強食』

 そんな異世界に自分はいるのだ。
 
 
 

 
 
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