9 / 155
第一章
留守番
しおりを挟む
公都ハメルンはブロティア王国第二の大都市であり、中央に聳えるシュタイエール公爵の城を中心とした楕円状の形をしている。
都市を囲む外壁には東西南北に門が存在しており、そこから真っ直ぐ城に向かって道が確保され、これが目抜き通りとなっている。
城に近い地域は貴族の屋敷が並ぶ貴族街とされており、城壁を隔てた外側に役所や大店の商店が立ち並ぶ中央街、そこから先が市民街と呼ばれている。
都市の周囲を外壁で囲んであるが、更に城と貴族街を城壁で囲んでいる事が重壁都市とも呼ばれている由縁である。
サトとロンメルは南門から馬車で入り、目抜き通りから少し外れた裏通りに入っていた。
「さて、着いたぞ。ここが儂の店『ロンメル商店』じゃ」
サトは馬車から降りて建物を見た。
二階建ての木造建築で奥行きは広いが、横幅は狭い。
中央に両開きの扉があり、その扉の上には店名を書いた看板があった。
ボーッと眺めるサトにロンメルが馬車から声をかける。
「裏通りの小さな店じゃ。ガッカリしたか?」
「あ、いや、そうじゃくて、何というかすごく趣があっていいですよ。正直、もっとボロいのを想像してたので」
「あまりボロいと裏通りとはいえ、景観を損ねると役所から小言を言われるんじゃよ。さて、儂は馬車屋に馬車を返して来るから、お前さんは先に入っといてくれ」
「馬車屋?」
「この馬車は借り物なんじゃよ。ほれ、これが鍵じゃ」
ロンメルはサトに鍵を渡すと、そのまま裏通りを進んでいった。
1人見知らぬ場所に置いて行かれたサトは急に不安になり、言われた通り店に入った。
窓を閉め切った室内は暗く、ほとんど何も見えなかったが、店の両端に棚があるのは分かった。
そして、しばらく室内を見回していると脳裏に言葉が浮かんできた。
「ロングソード? こっちはシミター? ああ、あそこに剣が陳列してあるんだな」
商品名が浮かんだ方を眼を凝らして見るとソードラックがあり、そこに幾つかの剣が並んでいるのがわかる。
「へぇ、この鑑定能力って見えなくてもわかるのか。便利な能力だな。それにしても剣なんて実物見るのは初めだよ。はぁ~、すごいな」
サトはソードラックに近づくと、物珍し気に陳列された剣を見回していく。
ロングソード、ブロードソード、レイピアなど様々な剣が置いてあった。
「これは凄いな。これなんか刃が厚くて……ファルシオンか。色んな剣があるん……」
「きゃああああああああ! 泥棒っ!」
珍しい形の剣を手に取っていたサトの耳に若い女性の悲鳴にも似た大声が聴こえてくる。
「ど、泥棒だって!?」
サトが異世界にも泥棒がいるのかと考えながら扉の方を向くと、何かを振りかざしながら近づいてくる人影があった。
都市を囲む外壁には東西南北に門が存在しており、そこから真っ直ぐ城に向かって道が確保され、これが目抜き通りとなっている。
城に近い地域は貴族の屋敷が並ぶ貴族街とされており、城壁を隔てた外側に役所や大店の商店が立ち並ぶ中央街、そこから先が市民街と呼ばれている。
都市の周囲を外壁で囲んであるが、更に城と貴族街を城壁で囲んでいる事が重壁都市とも呼ばれている由縁である。
サトとロンメルは南門から馬車で入り、目抜き通りから少し外れた裏通りに入っていた。
「さて、着いたぞ。ここが儂の店『ロンメル商店』じゃ」
サトは馬車から降りて建物を見た。
二階建ての木造建築で奥行きは広いが、横幅は狭い。
中央に両開きの扉があり、その扉の上には店名を書いた看板があった。
ボーッと眺めるサトにロンメルが馬車から声をかける。
「裏通りの小さな店じゃ。ガッカリしたか?」
「あ、いや、そうじゃくて、何というかすごく趣があっていいですよ。正直、もっとボロいのを想像してたので」
「あまりボロいと裏通りとはいえ、景観を損ねると役所から小言を言われるんじゃよ。さて、儂は馬車屋に馬車を返して来るから、お前さんは先に入っといてくれ」
「馬車屋?」
「この馬車は借り物なんじゃよ。ほれ、これが鍵じゃ」
ロンメルはサトに鍵を渡すと、そのまま裏通りを進んでいった。
1人見知らぬ場所に置いて行かれたサトは急に不安になり、言われた通り店に入った。
窓を閉め切った室内は暗く、ほとんど何も見えなかったが、店の両端に棚があるのは分かった。
そして、しばらく室内を見回していると脳裏に言葉が浮かんできた。
「ロングソード? こっちはシミター? ああ、あそこに剣が陳列してあるんだな」
商品名が浮かんだ方を眼を凝らして見るとソードラックがあり、そこに幾つかの剣が並んでいるのがわかる。
「へぇ、この鑑定能力って見えなくてもわかるのか。便利な能力だな。それにしても剣なんて実物見るのは初めだよ。はぁ~、すごいな」
サトはソードラックに近づくと、物珍し気に陳列された剣を見回していく。
ロングソード、ブロードソード、レイピアなど様々な剣が置いてあった。
「これは凄いな。これなんか刃が厚くて……ファルシオンか。色んな剣があるん……」
「きゃああああああああ! 泥棒っ!」
珍しい形の剣を手に取っていたサトの耳に若い女性の悲鳴にも似た大声が聴こえてくる。
「ど、泥棒だって!?」
サトが異世界にも泥棒がいるのかと考えながら扉の方を向くと、何かを振りかざしながら近づいてくる人影があった。
0
お気に入りに追加
262
あなたにおすすめの小説
嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜
𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。
だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。
「もっと早く癒せよ! このグズが!」
「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」
「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」
また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、
「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」
「チッ。あの能無しのせいで……」
頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。
もう我慢ならない!
聖女さんは、とうとう怒った。
【完結】拾ったおじさんが何やら普通ではありませんでした…
三園 七詩
ファンタジー
カノンは祖母と食堂を切り盛りする普通の女の子…そんなカノンがいつものように店を閉めようとすると…物音が…そこには倒れている人が…拾った人はおじさんだった…それもかなりのイケおじだった!
次の話(グレイ視点)にて完結になります。
お読みいただきありがとうございました。
外れスキル「トレース」が、修行をしたら壊れ性能になった~あれもこれもコピーで成り上がる~
うみ
ファンタジー
港で荷物の上げ下ろしをしてささやかに暮らしていたウィレムは、大商会のぼんくら息子に絡まれていた少女を救ったことで仕事を干され、街から出るしか道が無くなる。
魔の森で一人サバイバル生活をしながら、レベルとスキル熟練度を上げたウィレムだったが、外れスキル「トレース」がとんでもないスキルに変貌したのだった。
どんな動作でも記憶し、実行できるように進化したトレーススキルは、他のスキルの必殺技でさえ記憶し実行することができてしまうのだ。
三年の月日が経ち、修行を終えたウィレムのレベルは熟練冒険者を凌ぐほどになっていた。
街に戻り冒険者として名声を稼ぎながら、彼は仕事を首にされてから決意していたことを実行に移す。
それは、自分を追い出した奴らを見返し、街一番まで成り上がる――ということだった。
※なろうにも投稿してます。
※間違えた話を投稿してしまいました!
現在修正中です。
ぽっちゃり女子の異世界人生
猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。
最強主人公はイケメンでハーレム。
脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。
落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。
=主人公は男でも女でも顔が良い。
そして、ハンパなく強い。
そんな常識いりませんっ。
私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。
【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】
[完結]回復魔法しか使えない私が勇者パーティを追放されたが他の魔法を覚えたら最強魔法使いになりました
mikadozero
ファンタジー
3月19日 HOTランキング4位ありがとうございます。三月二十日HOTランキング2位ありがとうございます。
ーーーーーーーーーーーーー
エマは突然勇者パーティから「お前はパーティを抜けろ」と言われて追放されたエマは生きる希望を失う。
そんなところにある老人が助け舟を出す。
そのチャンスをエマは自分のものに変えようと努力をする。
努力をすると、結果がついてくるそう思い毎日を過ごしていた。
エマは一人前の冒険者になろうとしていたのだった。
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
転生した俺が神様になるまで
HR
ファンタジー
ゲーム廃人の佐藤裕は強盗に銃で撃たれて、異世界に転生!
・・・の前に神様とあって
「すべての職業になったら神になれるよ。」
と言われた佐藤裕改め、テル=ハングルはアルファ王国を支えるハングル家に転生して神様になる
っていう感じの作品です。
カクヨムと、小説家になろうでも連載しています。
面白いと思ったら
ブックマーク、感想、レビュー、評価をお願いします。
チート転生~チートって本当にあるものですね~
水魔沙希
ファンタジー
死んでしまった片瀬彼方は、突然異世界に転生してしまう。しかも、赤ちゃん時代からやり直せと!?何げにステータスを見ていたら、何やら面白そうなユニークスキルがあった!!
そのスキルが、随分チートな事に気付くのは神の加護を得てからだった。
亀更新で気が向いたら、随時更新しようと思います。ご了承お願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる