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第三章

ミノタウロスとバードマン②

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 下世話な趣味があるわけじゃないけど、堅物が服を着て歩いているようなハウデルの女性問題なんて、気にならない奴はこのツヴァイにはいないだろう。
 しかし、かなりデリケートな問題である事も事実だ。
 下手に誰かに聞かれて良からぬ噂を流されても困るな。
 まぁ、たまにはこんな日もあるって事で。

「俺の家に来ないか?」

 俺の提案にオルテガとハウデルが驚いたのは言うまでもない。
 なんせ俺から家に誘う事なんて今まで一度も無かったからな。

「珍しいな。お前の方から誘ってくるとは」

「内容が内容だからな。さぁ、行こう」

 俺とオルテガとハウデルという奇妙な取り合わせの3人は、周囲の好奇の目を掻い潜って俺の家に向かった。
 やたら上機嫌なオルテガと終始無言のハウデル。
 現役時代から同じチームで活躍した2人だけど、水と油の2人がよく付き合っていけるもんだ。
 ついでにこの辺りの話も聞けたらいいなぁ。

「おい、リョウ。今日は何を食わせてくれるんだ?」

「何で飯を出すのが決定事項なのか気になるところだけど……今日は酒に合うつまみを色々出す予定だ」

「おおおっ! 流石にわかってるな! こういう話に酒はつきものだからな!」

「お前は酒がメインだろ。話を聞く気がないなら俺は帰るぞ?」

 そう言いながらもハウデルが歩みを止める気配は無い。
 どうやら本当に困っているみたいだ。
 しかし、女絡みの問題って何だろ?
 そもそも俺は女性も絡む事自体、美人局以外では無かったからなぁ。
 学生時代に1ヶ月だけ付き合った彼女がいたけど、それ以降は誰とも付き合ってない。
 思えば寂しい学生時代だったなぁ……
 社会人になってからも他の人の仕事も押し付けられたり、食事に誘われたと思ったら金を払わされるだけだったり……

「リョウ? どうかしたのか?」

「……何でもない」

 寂しい過去に思わず目頭が熱くなった。
 涙が溢れなかったは俺が成長した証拠だと思いたい。
 くそ、楽しい思い出よりも嫌な思い出の方が鮮明に覚えてやがる。
 嫌な性分だよ、まったく!

「適当に座っててくれ。」

 滲む視界で家に辿り着いたので、オルテガとハウデルを椅子に座らせてから俺は台所に移動してきた。
 嫌な過去を思い出しからか俺まで気が滅入ってきた。
 こうなったら今日は盛大に飲んでやる!
 もう家中の酒を出してやるからな!

「今日は飲むぞ!」

「お、おお……どうした? こんなに酒を出すとはお前も何か……」

「もらおう」

 戸惑うオルテガを差し置いて、先にグラスを差し出したのはハウデルだった。
 ハウデルもとことん飲む気になったらしい。
 最初はとりあえず生ってわけでもないけど、高級エールからいくか。

「よし、飲むぞ!

「おう! では、乾杯プロージット!」

「めでたくはないがな」

 オルテガの音頭で乾杯し、全員が一気にエールを呷る。
 うん、美味い!
 さすがはリーディアさんが勧めてくれた店のエールだ。
 その辺の安酒場のエールとはものが違う。

「ぶはぁ! こいつは良いエールだ! リョウ、いい酒を持ってるじゃないか!」

「確かに良いエールだ。銅級冒険者がおいそれと買える物ではない。まさか、変な事に手を出していないだろうな?」

「してないよ! 何でこんな時まで衛兵隊長やってんだよ!」

「悪事を取り締まるのにこんな時もどんな時もない」

「それはとっても御立派ですこと!」

「その辺にしておけ。今日はそんな話をしに来たわけじゃあるまい? ハウデル。さっさとさっきの話の続きを言え」

 オルテガに促されて、ハウデルは一気にグラスを空にした。
 そして、しばらく熟考した後にようやく重たい口を開いたのだった。

「俺は殺されるかもしれん」

 ……重た過ぎるだろ?
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