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第三章
狐獣人とダークエルフ⑤
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「シエンナ。これは使えないの?」
「これって【魔女貝】のこと? これがどうかしたの?」
きょとんとした表情で【魔女貝】を見るシエンナ。
わかってないって事は、こいつに精力増進効果がある事を知らないようだ。
意外だな。
海に近い都市ならよく食べるだろうし、栄養があるくらいわかりそうなもんだけどね。
「こいつにも精力増進効果があるんだよ。俺の田舎じゃ、美味い以外でもそういった目的で食べる人もいるくらいだ」
「そうなの? それは知らなかった。度胸試し以外にも使えるんだね」
「度胸試し?」
「うん。獲れたばかりの魚を生で食べる事があるでしょ? 新鮮なら貝も食べられるんだけど、この【魔女貝】はたまに酷い毒性を持つ個体がいるんだよ。火を通せば大丈夫なんだけど、屈強な馬鹿達が度胸試しに生で食べる事があるのさ」
ノロウイルスか。
やっぱりこの世界にもあるんだなぁ。
あの苦しみは味わった事がある者にしかわからない!
上から下から出るわ出るわ……腹は絶えず痛いし、脱水で死にそうになるし飲んだらまた出るし……あれだけは二度と御免だ!
「【魔女貝】に精力増進効果があるなんて知らなかったよ。まぁ、毒があるからって普通の人は火を通してても食べようとしないし、よく食べていたのが元々屈強な人達だったからわからなかったのかもね」
「いや、もしかしたら漁師さんには知っている人はいたのかもよ?」
この【魔女貝】の量は一人暮らしのシエンナには多すぎる。
多分、持ってきた漁師はなんとなくだけど、この貝の効能がわかっていたんじゃないかな?
女性に持ってきたって事は媚薬効果と勘違いしてると思うけど。
「……ああ、そういう事か。だからこんなにたくさん持ってきたわけだね。本当に困った人だよ」
「まぁ、御礼の意味もあると思うけどね。可愛い女の子に下心が持つのは男の性でしょ。許してやってくれ」
「男の性……ね。君もそうなのかな?」
妖艶な視線に含みのある言い方をしてきたな。
でも、そんな安い挑発には乗らないぞ。
俺は元の世界で女性関係に苦労してきたし、この世界で子孫を残す気もない。
俺に下心は必要ない。
「俺には必要ないさ」
「へぇ、自信たっぷりだね。僕は嫌いじゃないよ」
どんな自信かは気になるけど、変な事言って変な解釈されても困る。
ここはさっさと話題を変えよう。
「ところで【魔女貝】に精力増進効果があるとして、どうやって精力剤にするんだ?」
「詳しい技術は秘密だけど、他の薬草と混ぜるんだよ。でも、僕もあんまり食べた事がないからどんな形にするか悩んでるんだ。どうかな? 実際に食べた方がどんな形にするかわかりやすいし、此処で一緒に食べない?」
食べるのか。
うーん、当たった事がある俺としては少し気が引けるけど、味自体は嫌いじゃなかったし、火を通せば大丈夫だろう。
「よし、俺が当たらないように作るよ。台所借りるね」
「うん、お願いね……他の娘達には悪いけど、もし効果があったらその時は早い者勝ちだよね?」
「ん? 何か言った?」
「ううん、別に! 楽しみに待ってるよ!」
少し頬を赤らめたシエンナに違和感を感じつつ、俺はシエンナの家の台所に向かった。
さて、何を作ろうかな?
「これって【魔女貝】のこと? これがどうかしたの?」
きょとんとした表情で【魔女貝】を見るシエンナ。
わかってないって事は、こいつに精力増進効果がある事を知らないようだ。
意外だな。
海に近い都市ならよく食べるだろうし、栄養があるくらいわかりそうなもんだけどね。
「こいつにも精力増進効果があるんだよ。俺の田舎じゃ、美味い以外でもそういった目的で食べる人もいるくらいだ」
「そうなの? それは知らなかった。度胸試し以外にも使えるんだね」
「度胸試し?」
「うん。獲れたばかりの魚を生で食べる事があるでしょ? 新鮮なら貝も食べられるんだけど、この【魔女貝】はたまに酷い毒性を持つ個体がいるんだよ。火を通せば大丈夫なんだけど、屈強な馬鹿達が度胸試しに生で食べる事があるのさ」
ノロウイルスか。
やっぱりこの世界にもあるんだなぁ。
あの苦しみは味わった事がある者にしかわからない!
上から下から出るわ出るわ……腹は絶えず痛いし、脱水で死にそうになるし飲んだらまた出るし……あれだけは二度と御免だ!
「【魔女貝】に精力増進効果があるなんて知らなかったよ。まぁ、毒があるからって普通の人は火を通してても食べようとしないし、よく食べていたのが元々屈強な人達だったからわからなかったのかもね」
「いや、もしかしたら漁師さんには知っている人はいたのかもよ?」
この【魔女貝】の量は一人暮らしのシエンナには多すぎる。
多分、持ってきた漁師はなんとなくだけど、この貝の効能がわかっていたんじゃないかな?
女性に持ってきたって事は媚薬効果と勘違いしてると思うけど。
「……ああ、そういう事か。だからこんなにたくさん持ってきたわけだね。本当に困った人だよ」
「まぁ、御礼の意味もあると思うけどね。可愛い女の子に下心が持つのは男の性でしょ。許してやってくれ」
「男の性……ね。君もそうなのかな?」
妖艶な視線に含みのある言い方をしてきたな。
でも、そんな安い挑発には乗らないぞ。
俺は元の世界で女性関係に苦労してきたし、この世界で子孫を残す気もない。
俺に下心は必要ない。
「俺には必要ないさ」
「へぇ、自信たっぷりだね。僕は嫌いじゃないよ」
どんな自信かは気になるけど、変な事言って変な解釈されても困る。
ここはさっさと話題を変えよう。
「ところで【魔女貝】に精力増進効果があるとして、どうやって精力剤にするんだ?」
「詳しい技術は秘密だけど、他の薬草と混ぜるんだよ。でも、僕もあんまり食べた事がないからどんな形にするか悩んでるんだ。どうかな? 実際に食べた方がどんな形にするかわかりやすいし、此処で一緒に食べない?」
食べるのか。
うーん、当たった事がある俺としては少し気が引けるけど、味自体は嫌いじゃなかったし、火を通せば大丈夫だろう。
「よし、俺が当たらないように作るよ。台所借りるね」
「うん、お願いね……他の娘達には悪いけど、もし効果があったらその時は早い者勝ちだよね?」
「ん? 何か言った?」
「ううん、別に! 楽しみに待ってるよ!」
少し頬を赤らめたシエンナに違和感を感じつつ、俺はシエンナの家の台所に向かった。
さて、何を作ろうかな?
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