76 / 103
第二章
討伐隊と超魔物⑧
しおりを挟む
刃を当てただけで首が落ちるなんて、めちゃくちゃ切れる剣じゃないか!
なんて危ないものを持たせるんだよ!
だけど、当のフォルニゲシュは俺の怒りや焦りを気にした様子もなく転がったズーの首を拾い上げて、じっと見つめていた。
「まぁ、こんなものか。やはり我には物足りんな」
なんか微妙に不満そうな顔してる。
……もういい。
ツッコんだところで、また絶対的強者の発言を聞かされるだけだろう。
今は料理に集中しよう。
でも、困ったなぁ。
次は身体の方を逆さ吊りにして血を抜かないといけないんだけど、どうするか。
「リョウ。手が止まっているようだが、どうかしたのか?」
「血抜きをしたいんだ。腐敗を防ぐために早く抜きたいんだけど」
「ほう、そういうものなのか? 我は料理などせんから詳しくはわからぬが、とにかく血を全て抜けばよいのだな?」
「ああ、そう……いっ!?」
フォルニゲシュが何かの魔法を唱えたのか、首のないズーの身体から大量の血液が宙に向かって流れ出始めた。
これは血抜きっていうか、ほとんどホラー映像だよ!
「羽もいらんのだろう? ついでに取っておいてやろう」
「あ、ありがとう……」
フォルニゲシュが器用に太い爬虫類のような指を鳴らすと、小さな竜巻が起こって一瞬でズーの羽を全て奪い去っていった。
魔法はチートだって改めて思い知らされるな。
さて、残ったのはよく見る鳥の肉だ。
大きさは全く違うけど、これなら前に習った解体技術で何とかなりそうだ。
内臓を取り出して、部位ごとに切り分けていく。
【裁断者の右腕】は本当にはよく切れる剣で、おかげで解体もあっという間に終わったよ。
解体が終われば、超魔物もただの美味そうな肉、あとはこれをどうやって食べるかだけど……
「焼鳥が食べたい」
美味そうな鶏肉を見ると、どうしても焼鳥が頭をよぎっちゃうんだよなぁ。
串に刺すのは面倒だから、タレで焼くだけにしてみるか。
先ずは火を起こさないとな。
「この辺で火を起こしてもいい?」
「うむ。ならば、我が地獄の炎を……」
「普通の火でお願いします」
シュンと拗ねたようなフォルニゲシュに火をつけてもらって、前に使った竈の石を【収納】から取り出して設置すれば準備完了だ。
「もも肉を適当な大きさに切って、皮面の方にフォークで穴を開けて、塩と胡椒、それと小麦粉をまぶしてフライパンで皮面から焼いていく」
この時焼きムラがないように少し押さえながら焼くのがコツだな。
皮がパリパリに焼けてきたら、今度は裏返しにして蓋をして蒸し焼きにする。
火の入りは【鑑定】で確認してるから最高の焼き加減を見逃さないで済むのが楽でいいね。
さて、いい感じに火が入ったら一旦火から離して、フライパンに出た余分な脂を捨てて、醤油代わりの黒墨樹の実と蜂蜜を満遍なくかけながら焼いていく。
ああ、この香りが堪らない!
惜しむらくは日本酒がない事だよなぁ。
旨みとコクを与えつつ、臭みを消す役割のある日本酒は和食には欠かせないものなんだけど、この国では米を食べる習慣すら珍しいくらいだ。
米から作る酒なんかあるわけない。
あとは醤油の代わりの黒墨樹の実みたいな代用品がある事を願うだけだ。
「むぅ、なんとも芳しき香り……これは食欲をかき立てられるな」
「フォルニゲシュの分もあるけど、一緒に食わないか?」
「それは僥倖。馳走になるぞ!」
飯は一人で食うよりみんなで食う方が美味いからね。
周りに倒れているみんなには悪いけど、フォルニゲシュがいる限りは起きないみたいだし、疲れてるだろうから寝かせておこう。
【鑑定】で見る限り、状態が悪い人はいないしね。
では、焼き上がった肉を皿に持って完成だ!
「ズーのはちみつ醤油照り焼きの完成だ!」
「ほお! これは見るからに素晴らしい! なんとも美味そうではないか! では、いただくぞ! ……美味い! なんという美味さだ! 甘くコクのある味とズーの肉が調和し、えも言われぬ美味さとなっている! これは美味い! 美味いぞ! お代わりだ!」
「は? いや、食うの早すぎだって! そんなに美味かったか? ……しょうがないな。俺のを先に食ってろよ。新しく作るから」
俺が手をつけていない自分の皿を差し出すと、フォルニゲシュは一心不乱に肉に齧り付いていた。
幸せそうな顔しやがって……だったら腹いっぱい食わせてやるよ!
「ほい! 次のが焼けたぞ! これはあえて塩だけで焼いてレモンを搾ってみた」
「おおおっ! これはさっきのと違って素材の味が最大限に生きておる! しかも、レモンでさっぱり食える分、しつこさがない! いくらでも食えそうだ!」
「次は醤油、砂糖に酢のチキン南蛮風だ! 自家製タルタルソースを付けて食べてみてくれ!」
「ぬはっ! なんとこれは酸味か! ただ酸っぱいだけでなく甘さもあり、この白いもっさりした濃いソースが合う! なんなのだ! この美味さは!」
結局、フォルニゲシュは3㎏くらいズーの肉を食べてから、満足そうに大地にゴロンと横になった。
「ふぅ、満足だ。リョウ、我は食事でこれ程の満足感を覚えた事はないぞ」
「それは良かったな。おかげで俺はまだ食ってないけどな」
「グハハハッ! 許せ許せ。汝の料理が美味すぎたのだ。拗ねるな。詫びとして龍酒を汝にやろう」
「龍酒?」
フォルニゲシュが何処からか取り出したのは、徳利のような陶器の入れ物だった。
コルクのような栓を抜くと、ふくよかで懐かしい香りが漂ってきた。
こ、この香りは……まさかっ!?
「の、飲んでいいか!?」
「お、おおお……構わぬぞ」
俺は徳利から透明な液体をしっかりと味わうように口の中に滑らせた。
コクのある旨味が口の中でゆっくりと広がっていく。
ついに……ついに見つけたぞ!
なんて危ないものを持たせるんだよ!
だけど、当のフォルニゲシュは俺の怒りや焦りを気にした様子もなく転がったズーの首を拾い上げて、じっと見つめていた。
「まぁ、こんなものか。やはり我には物足りんな」
なんか微妙に不満そうな顔してる。
……もういい。
ツッコんだところで、また絶対的強者の発言を聞かされるだけだろう。
今は料理に集中しよう。
でも、困ったなぁ。
次は身体の方を逆さ吊りにして血を抜かないといけないんだけど、どうするか。
「リョウ。手が止まっているようだが、どうかしたのか?」
「血抜きをしたいんだ。腐敗を防ぐために早く抜きたいんだけど」
「ほう、そういうものなのか? 我は料理などせんから詳しくはわからぬが、とにかく血を全て抜けばよいのだな?」
「ああ、そう……いっ!?」
フォルニゲシュが何かの魔法を唱えたのか、首のないズーの身体から大量の血液が宙に向かって流れ出始めた。
これは血抜きっていうか、ほとんどホラー映像だよ!
「羽もいらんのだろう? ついでに取っておいてやろう」
「あ、ありがとう……」
フォルニゲシュが器用に太い爬虫類のような指を鳴らすと、小さな竜巻が起こって一瞬でズーの羽を全て奪い去っていった。
魔法はチートだって改めて思い知らされるな。
さて、残ったのはよく見る鳥の肉だ。
大きさは全く違うけど、これなら前に習った解体技術で何とかなりそうだ。
内臓を取り出して、部位ごとに切り分けていく。
【裁断者の右腕】は本当にはよく切れる剣で、おかげで解体もあっという間に終わったよ。
解体が終われば、超魔物もただの美味そうな肉、あとはこれをどうやって食べるかだけど……
「焼鳥が食べたい」
美味そうな鶏肉を見ると、どうしても焼鳥が頭をよぎっちゃうんだよなぁ。
串に刺すのは面倒だから、タレで焼くだけにしてみるか。
先ずは火を起こさないとな。
「この辺で火を起こしてもいい?」
「うむ。ならば、我が地獄の炎を……」
「普通の火でお願いします」
シュンと拗ねたようなフォルニゲシュに火をつけてもらって、前に使った竈の石を【収納】から取り出して設置すれば準備完了だ。
「もも肉を適当な大きさに切って、皮面の方にフォークで穴を開けて、塩と胡椒、それと小麦粉をまぶしてフライパンで皮面から焼いていく」
この時焼きムラがないように少し押さえながら焼くのがコツだな。
皮がパリパリに焼けてきたら、今度は裏返しにして蓋をして蒸し焼きにする。
火の入りは【鑑定】で確認してるから最高の焼き加減を見逃さないで済むのが楽でいいね。
さて、いい感じに火が入ったら一旦火から離して、フライパンに出た余分な脂を捨てて、醤油代わりの黒墨樹の実と蜂蜜を満遍なくかけながら焼いていく。
ああ、この香りが堪らない!
惜しむらくは日本酒がない事だよなぁ。
旨みとコクを与えつつ、臭みを消す役割のある日本酒は和食には欠かせないものなんだけど、この国では米を食べる習慣すら珍しいくらいだ。
米から作る酒なんかあるわけない。
あとは醤油の代わりの黒墨樹の実みたいな代用品がある事を願うだけだ。
「むぅ、なんとも芳しき香り……これは食欲をかき立てられるな」
「フォルニゲシュの分もあるけど、一緒に食わないか?」
「それは僥倖。馳走になるぞ!」
飯は一人で食うよりみんなで食う方が美味いからね。
周りに倒れているみんなには悪いけど、フォルニゲシュがいる限りは起きないみたいだし、疲れてるだろうから寝かせておこう。
【鑑定】で見る限り、状態が悪い人はいないしね。
では、焼き上がった肉を皿に持って完成だ!
「ズーのはちみつ醤油照り焼きの完成だ!」
「ほお! これは見るからに素晴らしい! なんとも美味そうではないか! では、いただくぞ! ……美味い! なんという美味さだ! 甘くコクのある味とズーの肉が調和し、えも言われぬ美味さとなっている! これは美味い! 美味いぞ! お代わりだ!」
「は? いや、食うの早すぎだって! そんなに美味かったか? ……しょうがないな。俺のを先に食ってろよ。新しく作るから」
俺が手をつけていない自分の皿を差し出すと、フォルニゲシュは一心不乱に肉に齧り付いていた。
幸せそうな顔しやがって……だったら腹いっぱい食わせてやるよ!
「ほい! 次のが焼けたぞ! これはあえて塩だけで焼いてレモンを搾ってみた」
「おおおっ! これはさっきのと違って素材の味が最大限に生きておる! しかも、レモンでさっぱり食える分、しつこさがない! いくらでも食えそうだ!」
「次は醤油、砂糖に酢のチキン南蛮風だ! 自家製タルタルソースを付けて食べてみてくれ!」
「ぬはっ! なんとこれは酸味か! ただ酸っぱいだけでなく甘さもあり、この白いもっさりした濃いソースが合う! なんなのだ! この美味さは!」
結局、フォルニゲシュは3㎏くらいズーの肉を食べてから、満足そうに大地にゴロンと横になった。
「ふぅ、満足だ。リョウ、我は食事でこれ程の満足感を覚えた事はないぞ」
「それは良かったな。おかげで俺はまだ食ってないけどな」
「グハハハッ! 許せ許せ。汝の料理が美味すぎたのだ。拗ねるな。詫びとして龍酒を汝にやろう」
「龍酒?」
フォルニゲシュが何処からか取り出したのは、徳利のような陶器の入れ物だった。
コルクのような栓を抜くと、ふくよかで懐かしい香りが漂ってきた。
こ、この香りは……まさかっ!?
「の、飲んでいいか!?」
「お、おおお……構わぬぞ」
俺は徳利から透明な液体をしっかりと味わうように口の中に滑らせた。
コクのある旨味が口の中でゆっくりと広がっていく。
ついに……ついに見つけたぞ!
7
お気に入りに追加
463
あなたにおすすめの小説
幸子ばあさんの異世界ご飯
雨夜りょう
ファンタジー
「幸子さん、異世界に行ってはくれませんか」
伏見幸子、享年88歳。家族に見守られ天寿を全うしたはずだったのに、目の前の男は突然異世界に行けというではないか。
食文化を発展させてほしいと懇願され、幸子は異世界に行くことを決意する。
ボッチの少女は、精霊の加護をもらいました
星名 七緒
ファンタジー
身寄りのない少女が、異世界に飛ばされてしまいます。異世界でいろいろな人と出会い、料理を通して交流していくお話です。異世界で幸せを探して、がんばって生きていきます。
異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️
修学旅行に行くはずが異世界に着いた。〜三種のお買い物スキルで仲間と共に〜
長船凪
ファンタジー
修学旅行へ行く為に荷物を持って、バスの来る学校のグラウンドへ向かう途中、三人の高校生はコンビニに寄った。
コンビニから出た先は、見知らぬ場所、森の中だった。
ここから生き残る為、サバイバルと旅が始まる。
実際の所、そこは異世界だった。
勇者召喚の余波を受けて、異世界へ転移してしまった彼等は、お買い物スキルを得た。
奏が食品。コウタが金物。紗耶香が化粧品。という、三人種類の違うショップスキルを得た。
特殊なお買い物スキルを使い商品を仕入れ、料理を作り、現地の人達と交流し、商人や狩りなどをしながら、少しずつ、異世界に順応しつつ生きていく、三人の物語。
実は時間差クラス転移で、他のクラスメイトも勇者召喚により、異世界に転移していた。
主人公 高校2年 高遠 奏 呼び名 カナデっち。奏。
クラスメイトのギャル 水木 紗耶香 呼び名 サヤ。 紗耶香ちゃん。水木さん。
主人公の幼馴染 片桐 浩太 呼び名 コウタ コータ君
(なろうでも別名義で公開)
タイトル微妙に変更しました。
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!
八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。
『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。
魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。
しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も…
そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。
しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。
…はたして主人公の運命やいかに…
異世界でホワイトな飲食店経営を
視世陽木
ファンタジー
定食屋チェーン店で雇われ店長をしていた飯田譲治(イイダ ジョウジ)は、気がついたら真っ白な世界に立っていた。
彼の最後の記憶は、連勤に連勤を重ねてふらふらになりながら帰宅し、赤信号に気づかずに道路に飛び出し、トラックに轢かれて亡くなったというもの。
彼が置かれた状況を説明するためにスタンバイしていた女神様を思いっきり無視しながら、1人考察を進める譲治。
しまいには女神様を泣かせてしまい、十分な説明もないままに異世界に転移させられてしまった!
ブラック企業で酷使されながら、それでも料理が大好きでいつかは自分の店を開きたいと夢見ていた彼は、はたして異世界でどんな生活を送るのか!?
異世界物のテンプレと超ご都合主義を盛り沢山に、ちょいちょい社会風刺を入れながらお送りする異世界定食屋経営物語。はたしてジョージはホワイトな飲食店を経営できるのか!?
● 異世界テンプレと超ご都合主義で話が進むので、苦手な方や飽きてきた方には合わないかもしれません。
● かつて作者もブラック飲食店で店長をしていました。
● 基本的にはおふざけ多め、たまにシリアス。
● 残酷な描写や性的な描写はほとんどありませんが、後々死者は出ます。
異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい
ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。
強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。
ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる