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第二章

討伐隊と超魔物③

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 目を開けると、濛々舞い上がった土煙で何も見えなくなっていた。
 上の方から【ズー】の喚声が聞こえるから奴が生きているのは間違いないけど、それより、さっきの衝撃はなんだったんだ?
 物凄い音と光だったぞ?

「くそっ! あの怪物め! 魔物のくせに知恵を使って戦うやないか!」

 悪態を吐くゼルマの顔が歪んでる。
 その冷汗を浮かべた表情だけで、マズい状況だという事がわかるくらいだ。
 
「ゼルマ、何があったんだ!? みんなはどうなった!?」

「【ズー】は雷を操ることができるねん! そこまで広範囲やないけど、あいつは空からの攻撃でみんなが固まる様に誘導しよったんや!」

 か、雷魔法っ!?
 確か複合魔法とか言う超高等技術だって聞いた事があるぞ!
 【ズー】にはそんな力まであるのかよ!

「みんなは!? みんなは無事なのかっ!?」

「土煙でわからへんけど、多分、まだ死んでない、と思う……」

 思うだけかよっ!
 くそっ! この土煙が邪魔で何も見えない!
 ジョルダン達はどこだよっ!?
 そうだっ! 【鑑定】なら見えるはずだ!
 【鑑定】! みんな、何処に……いたっ! ウィンドウでみんなの名前が表示された! 全員、生きてるぞ!

 【ズー】は……いた。
 上空に待機しているみたいだ。
 あいつも視界の悪い中に突っ込むのは嫌なんだろう。
 でも、土煙が消えたらすぐに追撃してくるはずだ。
 そうなったら、ジョルダン達は終わり、今のうちに助けないと!

「ゼルマ! ここにいても始まらない! みんなが生きてるかもしれないなら、助けにいかないと!」

「あかんよ! お兄ちゃんが行ってもすぐにやられてまう! さっきの雷を見たやろ? 並の人間じゃ一発で黒焦げやで!」

 あああっ、もう! 【鑑定】のことが言えないから状況の説明ができない!
 今がみんなを助けるチャンスなのに!
 こうなったら、巨人族に効くアレをやるしかない!

「俺は……俺は自分の身可愛さに仲間を見捨てるような真似なんか出来ない! たとえ死んだとしても悔いはない! それが俺の生き様だ! 俺は行くぞ!」

「お、お兄ちゃん……そんなかっこいい事言われたら……止められへんやん。もう! しょうがない、お兄ちゃんやで!」

 よっしゃあ! 効いた!
 巨人族って漢気溢れる言葉に弱いんだよね!
 普段はこんな恥ずかしい台詞絶対に言わないけど今回だけは仕方ない!
 これでジョルダン達を助けに行けるぞ!

「行くよ!」

「うん!」

 俺とゼルマは立ち込める土煙の中に入って、ジョルダン達の元へと走り寄った。
 【鑑定】を頼りに到着すると、そこは思った以上に酷い状況だった。
 雷魔法の影響か、装備はボロボロになってしるし、火傷が酷い。
 他にも裂傷や打撲痕が所々に見えている。
 【ズー】のやつ、めっちゃくちゃしやがって!

「ジョルダン! 大丈夫かっ!?」

「なっ、何をやっているのだ!? リョウ! お前はさっさと……グッ!」

 俺の顔を見たジョルダンは怒りの表情を浮かべたが、それはすぐに苦悶へと変わった。
 鉄鎧の左肩は砕け散り、そこから見える緑色の鱗が裂けて、焦げた皮膚の奥からジワジワと血だか何だかわからない液体が溢れるように流れ出ている。
 リザードマンの鱗って相当硬いはずなのに、それをここまでするなんて信じられない。
 一気に背筋が寒くなったぞ。
 【千里眼】や【審判の矢】、【猪突猛進】の連中も傷だらけだ。
 重傷の人から回復魔法をかけているようだけど、回復役ヒーラーが足りてない。
 このままだと回復する前に土煙が晴れて【ズー】がまた襲ってくる。
 そうなったら……全滅だ。

「リョ、リョウ……早く逃げ……ろ」

 ジョルダンもそれがわかっているんだろう。
 血を流し、自慢の三叉矛を杖代わりにしながらも俺の前に立って逃げる時間を稼ごうとしてくれている。
 この……馬鹿野郎が!

「お前を見捨てられるわけないだろ!」

「か、感傷は捨てろ……お前を死なせるわけにはいかん。俺が奴の気を引いている間に、お、お前だけでも……」

 口から血を吐き、息も絶え絶え。
 それでもジョルダンは俺を守ろうとしている。
 感傷に浸ってるのはどっちだよ。
 それに、俺の生まれた国にはこんな言葉があるんだよ!

「お前を……同じ釜の飯を食ったお前達を見捨てて……明日から食べる飯が美味いわけないだろっ!」

「リョ、リョウ……」

「リョウさん……」

「お前……」

「……見直したぜ」

 いや、そんなに感動されても反応に困る……
 そんな事より、今は回復だ!
 今日のために回復薬ポーションをたくさん用意しておいてよかった!

「回復薬ならたくさん持ってきた! これで治療してくれ!」

 背嚢から出したように見せかけて【収納】から20個の回復薬を取り出して、地面に置いていった。
 すると、みんなは驚きの声を上げた。

「なっ!? リョ、リョウ! お前、壊れやすい回復薬をどうやってこんなに大量に持ってきたんだっ!?」

 驚くのも無理はない。
 回復薬の瓶は陶器製で壊れやすいから、普通は持っていてもせいぜい1人につき2個が限界で、普段は俺もそれに合わせてる。
 だけど、今回は命が懸かってるからな。
 細かい事は抜き無しだ!

「説明してる時間はない! とにかく使え! 奴はこの土煙が晴れるのを見計らって攻撃してくるはずだ! 土煙のある今が最後のチャンスだぞ!」

 俺の言葉に慌てて全員が回復薬を手に取って一気に呷った。
 いい飲みっぷりだ!

「こ、これは質の良い回復薬だな! 傷が完全に塞がったぞ!」

「これなら、まだまだやれます! リョウさん、ありがとうございます!」

「マジで助かったぜ! もう二度と同じ手はくわないぜ!」

「兄貴と呼ばせていただきます!」

 よしっ! みんな完全回復したみたいだ!
 これで仕切り直し! 第二ラウンドの始まりだ!
 ……ラッセル、兄貴はやめような?
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