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第二章
討伐隊⑨
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本日の野営地まで進んだ俺達は森林大鹿の分配について話し合った。
森林大鹿の素材は大きく分けて角、皮、肉、それに魔石の4つとなる。
皮や肉はともかく、角と魔石は四等分にはできないので、各チームがどれをもらうか入札していく事になった。
まぁ、簡単に言えばドラフト会議と同じだね。
この中で最も価値が高いのは魔石だ。
俺の【鑑定】によれば、このソフトボールくらいの魔石で金貨8枚だからね。
次に高いのが角で金貨5枚。
この森林大鹿の角は魔法の媒体となる杖に加工する事で、魔力を高める効果があって、煎じて飲むと魔力を回復する事も出来るため魔法使いに人気だ。
次は皮で金貨4枚。
軽くて丈夫な皮は、鞣すとかなり質の良い硬皮鎧が作れるので、中堅の冒険者なら絶対に欲しいだろう。
1番価値が低いのが肉だ。
1㎏当たり小銀貨5枚で、300㎏なら大金貨1枚と金貨5枚と一番高く思えるけど、普通に考えて300㎏の肉を全部運べるわけない。
せいぜい30㎏持ち帰ったとして、金貨1枚に銀貨5枚だから、一番安くなってしまうわけだ。
ウチは決まってるけど他のチームは何を選ぶかな?
ちょいと聞き耳をたててみるか。
ふむふむ、どうやらどのチームも魔石狙いのようだ。
【千里眼】だけは競合を避けて、角にしようかと考えているみたいだけどね。
さぁ、いよいよ素材ドラフトの始まりだ。
「では、第一入札。【千里眼】は角を希望します」
「【審判の矢】は魔石を希望する」
「チッ! 【猪突猛進】も魔石だ! ここは譲らないぜ!」
他の面々の予想通りの希望が出揃ったところで、我らがジョルダンが胸を張って前に躍り出た。
勇ましい姿にも見えるが口の端から溢れる涎のせいで食いしん坊にしか見えないのが残念だ。
「【未知数】は肉を希望する」
「に、肉かい? それは構わないけど、本当にいいの?」
仕切り役のマルコが戸惑いながら確認してきたが、ジョルダンは一点の曇りも無い眼で大きく頷いた。
ゼルマもミューさんも同様だ。
結局、【千里眼】は角を、【未知数】は肉を手に入れた。
魔石はコイントスにより【猪突猛進】の物となり、【審判の矢】が皮となった。
揉め事にならずに済んで良かったよ。
解体はゼルマを中心に、みんなでやる事で比較的短時間で済んだ。
そして各チームに分配され、俺の目の前に300㎏の肉が持ってこられた。
うん、想像していたけど300㎏の肉ってエグいわ。
俺1人でこれを消費しようと思ったら何年かかるか想像もつかないよ。
「おい! リョウ!」
「大体言いたい事はわかるけど。なんだよ? ジョルダン」
大量の肉を前に目を輝かせたジョルダンが、涎を撒き散らす勢いで話しかけてきた。
「明日には標的である【ズー】の目撃地域に到達するだろう。そうなれば凝った料理をしている暇はない。だから! 今日は思う存分、肉を食わせてくれ! 英気を養うのだ!」
「昨日までも養ってたと思うけどね。まぁ、言いたい事はわかるよ」
いつ敵が襲ってくるかもわからないところで、のんびりご飯食べるわけにはいかないからなぁ。
明日からは持ってきた保存食で済ます事になるだろう。
そう考えると今夜が最後の晩餐って事になるのか。
いや、その表現は縁起が悪いからやめておこう。
それより英気を養うのもいいが、団結を高めておくのも大事じゃないかな?
「わかった。肉は大量にあるし、今日は満足するまで食べてくれ。ただ、一つ提案があるんだけど、他の3チームも一緒に食わないか?」
「なに? それは何故だ? 無用の干渉は避けるように出立前に決めておいたはずだろ?」
「無用ならね。だけど、明日は一緒に生死をかけた戦いに挑むんだ。どうせ英気を養うなら全員の方が良くないか? その方が討伐成功の可能性も高くなる。ジョルダンだって、腹が減って力の出ない奴らに足を引っ張られたくはないだろ?」
この3日間一緒に行動していてわかったんだけど、俺達以外は食事に関してはあまり気を配っていなくて、いつも干肉や黒パンばかり食べていたんだ。
たまに果物を食べてはいたけど、満たされてはいなかったようで、時々俺達のチームの食事を羨ましそうに見ていたのを俺は知っている。
でも、さすがにあれだけで身体が保つとは思えない。
空腹で全力が出せなくて困るのは一緒に戦う俺達だし、だったら最後くらい大盤振る舞いしても良いんじゃないかと思った。
「別に無理にとは言わないし、嫌なら断ってもらえばいいさ。どうだろう?」
「しかし……大丈夫なのか? かなりの人数だぞ?」
確かに【千里眼】は男3、女2、【審判の矢】は男4、女1、【猪突猛進】は男4で構成されたチームだから、俺達を合わせると総勢18人となる。
全チームが参加した場合、俺は1人で18人分の食事を作らないといけなくなるからジョルダンも渋ってるんだろう。
だけど、人数が多くなるからと言って、誘ったり誘わなかったりしたら、それこそ問題になる。
やるなら全チームだ。
「大丈夫だよ。俺に考えもあるから任せとけ!」
「わかった。なら、声をかけてくる。頼んだぞ」
そう言ってジョルダンは他のチームの所へ向かった。
さて、俺も準備するぞ!
森林大鹿の素材は大きく分けて角、皮、肉、それに魔石の4つとなる。
皮や肉はともかく、角と魔石は四等分にはできないので、各チームがどれをもらうか入札していく事になった。
まぁ、簡単に言えばドラフト会議と同じだね。
この中で最も価値が高いのは魔石だ。
俺の【鑑定】によれば、このソフトボールくらいの魔石で金貨8枚だからね。
次に高いのが角で金貨5枚。
この森林大鹿の角は魔法の媒体となる杖に加工する事で、魔力を高める効果があって、煎じて飲むと魔力を回復する事も出来るため魔法使いに人気だ。
次は皮で金貨4枚。
軽くて丈夫な皮は、鞣すとかなり質の良い硬皮鎧が作れるので、中堅の冒険者なら絶対に欲しいだろう。
1番価値が低いのが肉だ。
1㎏当たり小銀貨5枚で、300㎏なら大金貨1枚と金貨5枚と一番高く思えるけど、普通に考えて300㎏の肉を全部運べるわけない。
せいぜい30㎏持ち帰ったとして、金貨1枚に銀貨5枚だから、一番安くなってしまうわけだ。
ウチは決まってるけど他のチームは何を選ぶかな?
ちょいと聞き耳をたててみるか。
ふむふむ、どうやらどのチームも魔石狙いのようだ。
【千里眼】だけは競合を避けて、角にしようかと考えているみたいだけどね。
さぁ、いよいよ素材ドラフトの始まりだ。
「では、第一入札。【千里眼】は角を希望します」
「【審判の矢】は魔石を希望する」
「チッ! 【猪突猛進】も魔石だ! ここは譲らないぜ!」
他の面々の予想通りの希望が出揃ったところで、我らがジョルダンが胸を張って前に躍り出た。
勇ましい姿にも見えるが口の端から溢れる涎のせいで食いしん坊にしか見えないのが残念だ。
「【未知数】は肉を希望する」
「に、肉かい? それは構わないけど、本当にいいの?」
仕切り役のマルコが戸惑いながら確認してきたが、ジョルダンは一点の曇りも無い眼で大きく頷いた。
ゼルマもミューさんも同様だ。
結局、【千里眼】は角を、【未知数】は肉を手に入れた。
魔石はコイントスにより【猪突猛進】の物となり、【審判の矢】が皮となった。
揉め事にならずに済んで良かったよ。
解体はゼルマを中心に、みんなでやる事で比較的短時間で済んだ。
そして各チームに分配され、俺の目の前に300㎏の肉が持ってこられた。
うん、想像していたけど300㎏の肉ってエグいわ。
俺1人でこれを消費しようと思ったら何年かかるか想像もつかないよ。
「おい! リョウ!」
「大体言いたい事はわかるけど。なんだよ? ジョルダン」
大量の肉を前に目を輝かせたジョルダンが、涎を撒き散らす勢いで話しかけてきた。
「明日には標的である【ズー】の目撃地域に到達するだろう。そうなれば凝った料理をしている暇はない。だから! 今日は思う存分、肉を食わせてくれ! 英気を養うのだ!」
「昨日までも養ってたと思うけどね。まぁ、言いたい事はわかるよ」
いつ敵が襲ってくるかもわからないところで、のんびりご飯食べるわけにはいかないからなぁ。
明日からは持ってきた保存食で済ます事になるだろう。
そう考えると今夜が最後の晩餐って事になるのか。
いや、その表現は縁起が悪いからやめておこう。
それより英気を養うのもいいが、団結を高めておくのも大事じゃないかな?
「わかった。肉は大量にあるし、今日は満足するまで食べてくれ。ただ、一つ提案があるんだけど、他の3チームも一緒に食わないか?」
「なに? それは何故だ? 無用の干渉は避けるように出立前に決めておいたはずだろ?」
「無用ならね。だけど、明日は一緒に生死をかけた戦いに挑むんだ。どうせ英気を養うなら全員の方が良くないか? その方が討伐成功の可能性も高くなる。ジョルダンだって、腹が減って力の出ない奴らに足を引っ張られたくはないだろ?」
この3日間一緒に行動していてわかったんだけど、俺達以外は食事に関してはあまり気を配っていなくて、いつも干肉や黒パンばかり食べていたんだ。
たまに果物を食べてはいたけど、満たされてはいなかったようで、時々俺達のチームの食事を羨ましそうに見ていたのを俺は知っている。
でも、さすがにあれだけで身体が保つとは思えない。
空腹で全力が出せなくて困るのは一緒に戦う俺達だし、だったら最後くらい大盤振る舞いしても良いんじゃないかと思った。
「別に無理にとは言わないし、嫌なら断ってもらえばいいさ。どうだろう?」
「しかし……大丈夫なのか? かなりの人数だぞ?」
確かに【千里眼】は男3、女2、【審判の矢】は男4、女1、【猪突猛進】は男4で構成されたチームだから、俺達を合わせると総勢18人となる。
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だけど、人数が多くなるからと言って、誘ったり誘わなかったりしたら、それこそ問題になる。
やるなら全チームだ。
「大丈夫だよ。俺に考えもあるから任せとけ!」
「わかった。なら、声をかけてくる。頼んだぞ」
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さて、俺も準備するぞ!
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