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第二章

討伐隊⑦

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 依頼の旅を続けること3日。
 超魔物【ズー】の討伐に向けて俺達は順調に旅を続けていた。
 いや、まるっきり順調と言うわけでもないな。
 今日の朝食はホットドッグにしたんだけど、ジョルダンもゼルマも予想に反してミューさんもめっちゃ食べるのだ。
 そして遂に持ってきていたパンが無くなり、肉の腸詰ヴルストも無くなってしまった。
 2日目の昨日も朝から肉で、夜も肉だったから肉もかなり心許なくなってきたし、他の食糧も予想以上に減りが早い。
 このペースだと食糧が足りなくなる可能性もある。
 何か打開策を考えないとまずいぞ。
 
「……ョウ? ……した……か?」

 一番手っ取り早いのは食事量を減らす事だろうけど、それは無理だ。
 ジョルダンが食事を我慢するなんて、おそらく死の間際ですらないだろう。
 ゼルマやミューさんは話せばわかってくれるだろうけど、俺の護衛として来てもらってるのに我慢させるわけにはいかないよなぁ。
 
「おに……ちゃ……? どう……たの?」

 つまり消費量を減らす事は絶対にないんだから、新たに確保するしかないわけだ。
 だけど、今は街道を進んでいるから食糧調達の見込みはない。
 途中に宿場町はあるだろうけど、そういう所の食糧って基本的に割高だからできる事なら買いたくない。
 だったら……

「リョウさん!」

「うわぁ! な、何ですか!? ミューさん、いきなり大声出して」

「いきなりじゃないですよ。さっきからジョルダンさんもゼルちゃんも呼んでたんですよ? 聞こえなかったんですか?」

 えっ? そうだったの?
 食糧の事を考えてて、全然聞こえてなかった。

「リョウ、大丈夫か?」

「ああ、悪い。それで何か用だったのか?」

「うむ。さっき連絡があってな。進行ルートを変える事になった」

 ジョルダンの話によると、さっきすれ違った行商人から、この先で盗賊の出現情報を聞いたそうだ。
 金級冒険者が4チームも集まっているので盗賊を撃退する事は簡単らしいんだけど、本来の目的である超魔物討伐があるので余計な戦闘はしたくないって事で、街道を避けて横の森を突っ切る事になったらしい。

「森の中にも魔物はいるが、倒せば食糧や素材が手に入る。倒しても衛兵隊に引き継がないと報奨金が手に入らない盗賊よりはマシという話になったわけだ」

「なるほどね。まぁ、それはこちらとしてもありがたいよ。なんせ、肉が心許なくなってきたからね」

 俺の言葉にジョルダンとゼルマが悲壮な顔をした。
 肉がないって事が余程ショックだったと見える。

「おい、ゼルマ。何が何でも今日は肉を捕らねばならんぞ?」

「わかっとるで! 肉が無いなんて最悪やからな! 絶対に大物仕留めてみせるで!」

 何の意気込みだ?
 その情熱は本来の標的である【ズー】に向けて欲しいものだ。
 そうして俺達は道なき森へと足を踏み入れた。
 道なきと言っても、密林というわけでも無いから、そこまで歩きにくいわけでもない。
 それに俺は普段から素材採取で慣れているから、森の中を歩く事は苦でも何でもないのだ。

「リョウさん。すごいですね。歩きにくくないんですか?」

「慣れてますから。森を歩くのにはコツがあるんですよ」

 ミューさんだけでなく、他の冒険者達も森の中の移動にはあまり慣れていないのか、少しペースが落ちている。
 ちょうどいい。
 このペースでなら素材採取する事も出来るだろう。
 とりあえず【鑑定】で周りを見てみるか。
 あっ、これはまずい。
 このまま進んだらぶつかるぞ。
 うーん、でも避けるのは惜しいよなぁ。
 仕方ない。
 森に慣れてるって事で誤魔化すか。

「ジョルダン。多分、この先に魔物がいるぞ」

「なに? 何も聞こえないが、どうしてわかるんだ?」

 周囲を警戒していたジョルダンは、自分より先に気づいだ俺を少し訝しんでいるようだな。
 でも、俺も森には慣れてるんだ。
 【鑑定】をバラさないための言い訳くらい考えてあるんだよ。

「ここに足跡がある。形からして森林鹿フォレストディアーだと思う。でも、警戒は怠らない方がいい。普通のより蹄が大きい。もしかしたら大物かもしれないぞ」

 【鑑定】によるとこの先にいるのは森林大鹿フォレストビックディアーという希少な進化個体らしい。
 この森の主かもしれないくらいの大物だ。
 何の警戒もなくぶつかったら、こちらが大打撃を食らう可能性もある相手だ。
 だが、今はそんな事に構っている暇はない!
 大きさからして採れる肉の量は300㎏は下らないだろう。
 それだけあれば、この旅の間の肉に関しての心配はなくなるんだ!
 絶対に逃さないわけにはいかないぞ!

「うーん……わかった。一応、【千里眼】の奴らに伝えてみよう。索敵はあいつらの得意分野だからな」

 ジョルダンはこの討伐隊で索敵を担う【千里眼】の冒険者達に伝えに行った。
 彼らも自分達より先に万年銅級の俺が気づくわけないと、高を括っていたが、しばらくして自分達も森林大鹿の存在に気づいたんだろう。
 唖然とし、信じられないものを見るような眼で俺を見てきた。
 やれやれ、困ったもんだよ。
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