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第一章

エルフと男の娘とカミさん③

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 なんか今、勝手にここで御飯を食べる流れにしてなかったか?
 さっき揚げ鶏食べたんですけど?

「リョウちゃんの御飯っ!? いいの!? 食べたい食べたい! 食べたーい!」

「私もなんかお腹空いてきちゃってるから、まだ入るかも」

「じゃあ、満場一致って事で御飯にしよう。リョウ、いつものやつを4人分頼むよ」

 いや、完全に俺を置いてけぼりにして話を進めてるやん。
 作るの俺なんですけど?
 俺の意見は? 
 俺の意見はどうなったの?

「生憎だけど、食材がなくて……」

「ああ、大丈夫。僕が色々持ってきてるから、必要なものは何でもあると思うよ」

 この野郎、何でも持ってるわけじゃなくて、神の力で何でも瞬時に取り寄せられるだけだろ。
 でも、下手に話を膨らませてヴァイオレットとカイに不審感を持たれても困る。
 ここは話を合わせるしかないか。

「そ、そうだったな。じゃ、じゃあ、ごろ芋と先角赤芹さきづのあかせり楕円葱だえんねぎ、あとは……アハト牛ってある?」

「アハト牛? 珍しいね、オムライスに牛がいるのかい?」

「ちょっと変わったのを作ろうかと思って。無いのなら別に……」

「変わったオムライス!? あるよ! アハト牛あるよ! ちょっと待ってね! ほらっ! これでどうだいっ!?」

 すぐ出した。
 たくさんのごろ芋、先角赤芹、楕円葱、アハト牛はご丁寧に切り分けられている。
 これは肩ロースとモモかな?
 おっ! 良いすね肉があるじゃないか!
 今日はこいつにするか。

「じゃあ、作るからしばらく待ってて」

「うん! 楽しみにしてるよ。それまで、お姉さん達、しばらくリョウの話でもして盛り上が……」

「俺の話はするなよ。作らねえぞ?」

「……るのは無しにして、色々情報交換しない?」

「そ、そうしましょう! 御飯食べれなくなるの嫌だし」

「わ、私も……なんかすごくお腹空いてるから、御飯抜きは辛いかも」

 なんて食い意地の張った奴等だ。
 まぁ、静かに料理させてもらえるのはありがたい。
 さて、先ずはすね肉に胡椒ピッパリを振って、赤ワインに漬け込んでおいて、その間にじゃがいものようなごろ芋と、人参のような先角赤芹、玉ねぎみたいな楕円葱を一口大に切っていく。
 フライパンに油を引いて、赤ワインに漬け込んだすね肉を焼き色をつける程度に焼いて取り出したら、同じフライパンで切った野菜類を炒めていく。
 あぁ、楽しいなぁ。
 こうやって穏やかに料理が出来る時間は本当に楽しくて心が安らぐよ。

「ところで『ヴァイオレット』って、エルフ色名しきめいだよね? 優れたエルフにしか与えられない名前なんだっけ?」

「大した事じゃないですよ。ただ、私がハイエルフの血を継いでるってだけですから」

 色名? なんだ?
 ヴァイオレットって、なんか良家の娘とかだったのか?
 おっと! 野菜が焦げるところだった!
 鍋に入れたお湯に自家製ブイヨンを溶かして、さっきのすね肉と野菜を入れて煮込んでいく。
 ここでひと工夫!
 このままただ煮込むのは時間がかかる。
 なので、鍋に向かって【結界けっかい】の魔法をかける。
 これにより蒸気が逃げ場を失って、ただの鍋が圧力鍋となるのだ。
 ただし、鍋が高圧で損壊しないように、調圧弁代わりに少し【結界】に穴を開けておかないと駄目だよ!
 さてさて、これを煮込んでる間に次の工程を進めて行くとしよう。

「えっ? あんたは男なの!? うそでしょ!? めっちゃ可愛いじゃん!」

「好きで可愛く生まれたわけじゃないの! きっと神様の気まぐれかなんかで、可愛く生まれちゃっただけなの!」

「えぇ、僕はそんな気まぐれじゃないよ」

 うそつけ!
 流行りにのって、俺を異世界転移させたくせに!
 フライパンでライスにケチャップの代用品である赤唐柿のソースを加えて炒め、ケチャップライスを作っておく。
 卵を溶いて、ここにチーズを加えてよく混ぜたら準備完了だ。
 鍋の方は【鑑定】……うん、だいぶ柔らかくなってきたみたいだ。
 なら一度蓋を開けて、アクを取ってから赤ワイン、バター、赤唐柿のソースを加えて更に煮込む。
 時々かき混ぜながら、じっくりコトコト煮込んでいくとしよう。

「ところで、二人はリョウが好きなの?」

「ちょ、直球で聞くのね。そりゃ、好きだけど……めっちゃ好きだけど」

「優しいよね。それに包容力もあって、漢気もある……やっぱり、新しい扉を開いてもいいのかもしれないなぁ」

 何の話をしてるんだか。
 フライパンにバターを溶かして、卵とチーズを合わせたものを薄く焼いていく。
 チーズが溶けて卵が半熟になったら、深皿に盛ったケチャップライスの上にふわりと掛ける。
 
「おや? 今日は卵が丸まってないみたいだけど?」

「いきなりキッチンに来るなよ。今日はいつもとちょっと違うって言ったろ? これから仕上げだよ」

 コトコト煮込んだ鍋の蓋を開ける。
 うーん、この匂いが堪らない!

「なに? めっちゃ良い匂いするんだけど!? これがオムライスなの!?」

「濃厚で芳醇な香り、嗅いでるだけでお腹がもっと空いてくる感じ! うぅ、早く食べたいよぉ!」

 匂いだけでも好評なのようだ。
 なら、お味の方もとくと味わってもらうとしよう。
 オムライスに鍋でじっくり煮込んだものをトロリとかけていく。

「こ、これは……今までの見たことのないオムライスだ!」

「チーズインオムライスのビーフシチューがけの完成だ!」

 初めて作ってみたけど、なかなかの出来だ。
 カイじゃないけど、めっちゃ腹減ってきたぞ!
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