42 / 103
第一章
エルフと男の娘とカミさん②
しおりを挟む
倒れた2人の顔色は悪い。
もしかして、さっきのお互いの攻撃がやっぱり当たってたんじゃ……
「違うよ。2人は君のおかげで怪我一つ負ってない。倒れたのは僕のせいだよ」
焦る俺に話しかけてきたカミさんの声は、相変わらずのんびりしたものだった。
それが余計に俺を焦らせた。
「僕のせいって何だよ!? 2人に何かしたのか!?」
「ううん。何もしてないよ。ただ、僕がここにいるからだよ」
「なんだって!? どういう意味だ!」
変わらないのんびりした口調に俺の語尾もキツくなるが、カミさんは変わらずゆっくりとした口調で淡々と答えるだけだった。
「僕はこれでも神の端くれだ。だから、下界の生物とは存在する次元が違うんだよ」
「存在する次元が違う? ど、どういう事だよ!?」
「うーん、そうだなぁ。わかりやすく言えば、僕が近くにいるだけで、人々は畏怖してしまうんだよ。ほら、威光に平伏すってあるじゃない? 僕の場合は、その威光が強すぎて、精神的に耐えれなくなった二人は倒れてしまったってわけさ」
い、威光だけで人を倒すって……な、なんてやつだ。
いや、神なんだから当たり前か?
それに前に六神の長で、大神とか言ってたし……ん? 待てよ?
「じゃあ、俺は何で倒れないんだ?」
「ああ、君は特別だよ。君が望まなかったから戦闘能力は一切与えてなかったけど、そのままだとこの世界じゃ生きていけないからね。君の身体を強化だけはしてるんだよ」
「それは知ってるよ。実年齢より若くしてもらってるし、体力とか筋力とかも……もしかして、他にも何かしてるのか?」
「もちろん! 君の存在自体も底上げしてるよ。君の存在領域は下神に匹敵するくらいまで上げてるんだ。だから並大抵の事では君の存在は揺るがないよ」
なに、しれっと神の領域に踏み込ませてくれちゃってんだよ!
アホなのか!?
「下神級くらいなら、人もそこまで畏怖しないから大丈夫だよ。現に誰も気づかなかったでしょ?」
「そういう問題じゃない! 俺はのんびりと生きたかっただけなのに……」
「だからだよ。君は前世の経験から孤独を望んだけど、人間としての生活には人と人との関わりは必要不可欠だ。だから、神格化したのさ。大抵の者が君との接触を無意識に避けるようにね」
「でも、結構人がわらわら寄ってくるぞ? アホなやつに絡まれたりもしたし」
「下神級の君に近づけるのは相当な実力者か、汚れない心を持つ者か、信仰心の欠片もない者なのさ。絡まれたのなら、そいつはどうしようもない奴だったってだけ」
確かに名前は忘れたけど、俺に絡んできたのは碌でもないどうしようもない奴等ばかりだったな。
でも、あいつらいつの間にかいなくなってたんだよなぁ。
「それより、この子達は倒れたままでいいの?」
「そ、そうだった! よし、帰れ!」
「えぇえええ!? な、なんで僕が帰らないといけないの!?」
「だって、カミさんがいるから二人は倒れたんだろ? だから帰ってくれ。それと、しばらくウチに来ちゃダメだよ。また、人が倒れたら困るからね!」
「ま、待って待って! それは困る! オムライスが食べられなくなっちゃうよ! わかった! 僕が下神級まで存在を薄めるよ。それならいいでしょ?」
存在を薄めるってのがよくわからないけど、一応神様だし、流石にこれ以上無碍にするのは気が引けるな。
まぁ、他の人に迷惑かけないならいいか。
「じゃあ、その存在を薄めるってのやって。それと、帰らないんなら二人に紹介しないといけない。だから、君は僕の知り合いの高位の魔法使いだってする。それでいいかい?」
「僕はオムライスが食べられるなら何でもいいよ。いざもなったら記憶も消せるしね。ふぅ、良かった。オムライスが食べられないなら、この世界が滅んだ方がいいくらいだよ」
恐るべし、オムライスへの執念。
サラッと『記憶を消す』とか『世界が滅んだ』とか物騒な事言ってるし、そこまで食べたいのか?
ここはご機嫌をとっておいた方がいいかも。
「うん、存在を薄めたよ。これでこの二人なら気を失うことはないだろう。それじゃあ、二人を回復させるね」
カミさんの眼がキラッと光ったかと思ったら、二人を淡い光が包み込み、吸収されるように消えていった。
「うぅぅ……」
「あれ……? 私、どうして?」
「二人とも、目が覚めたか!?」
ゆっくり身体を起こす二人の顔には、さっきまでの具合の悪そうな感じはなかった。
ただ今の状況が把握できなくて、戸惑っているようだ。
いきなり神がやって来て、その余波で倒れたなんて言っても信用しないだろうし、どう誤魔化すべきかな。
「やぁ、二人とも大丈夫かい? ごめんよ。まさか、リョウ以外に人がいるなんて思わなくてさ」
ば、ばかっ!? まだどうやって誤魔化すか考えてないのに、勝手に二人に声をかけるなよ!
「貴方は?」
「僕はリョウの古い知り合いでカミルって言います。今日は久しぶりにリョウに会いに来たんだけど、扉が開いてて、中を見たら君達がリョウに剣を突きつけていたから、【眠りの弾丸】を打っちゃったんだ」
「【眠りの弾丸】即効性の睡眠魔法ですね。どうりで急に意識がなくなったわけです」
「リョウに聞いたら二人ともご友人だそうで、本当に申し訳ない」
「ううん、リョウちゃんに剣を向けてたのは確かだし、仕方ないよ。気にしないでください」
「そうですね。私達も冷静じゃなかったし、逆に良かったのかもしれません」
すごい説得力! 納得はやっ!
カミさん、やるじゃないか。
「お詫びと言ってはなんですが、リョウがご飯を振舞ってくれるそうです。お二人も一緒にどうぞ」
おい……なんか余計なことまで言ってない?
もしかして、さっきのお互いの攻撃がやっぱり当たってたんじゃ……
「違うよ。2人は君のおかげで怪我一つ負ってない。倒れたのは僕のせいだよ」
焦る俺に話しかけてきたカミさんの声は、相変わらずのんびりしたものだった。
それが余計に俺を焦らせた。
「僕のせいって何だよ!? 2人に何かしたのか!?」
「ううん。何もしてないよ。ただ、僕がここにいるからだよ」
「なんだって!? どういう意味だ!」
変わらないのんびりした口調に俺の語尾もキツくなるが、カミさんは変わらずゆっくりとした口調で淡々と答えるだけだった。
「僕はこれでも神の端くれだ。だから、下界の生物とは存在する次元が違うんだよ」
「存在する次元が違う? ど、どういう事だよ!?」
「うーん、そうだなぁ。わかりやすく言えば、僕が近くにいるだけで、人々は畏怖してしまうんだよ。ほら、威光に平伏すってあるじゃない? 僕の場合は、その威光が強すぎて、精神的に耐えれなくなった二人は倒れてしまったってわけさ」
い、威光だけで人を倒すって……な、なんてやつだ。
いや、神なんだから当たり前か?
それに前に六神の長で、大神とか言ってたし……ん? 待てよ?
「じゃあ、俺は何で倒れないんだ?」
「ああ、君は特別だよ。君が望まなかったから戦闘能力は一切与えてなかったけど、そのままだとこの世界じゃ生きていけないからね。君の身体を強化だけはしてるんだよ」
「それは知ってるよ。実年齢より若くしてもらってるし、体力とか筋力とかも……もしかして、他にも何かしてるのか?」
「もちろん! 君の存在自体も底上げしてるよ。君の存在領域は下神に匹敵するくらいまで上げてるんだ。だから並大抵の事では君の存在は揺るがないよ」
なに、しれっと神の領域に踏み込ませてくれちゃってんだよ!
アホなのか!?
「下神級くらいなら、人もそこまで畏怖しないから大丈夫だよ。現に誰も気づかなかったでしょ?」
「そういう問題じゃない! 俺はのんびりと生きたかっただけなのに……」
「だからだよ。君は前世の経験から孤独を望んだけど、人間としての生活には人と人との関わりは必要不可欠だ。だから、神格化したのさ。大抵の者が君との接触を無意識に避けるようにね」
「でも、結構人がわらわら寄ってくるぞ? アホなやつに絡まれたりもしたし」
「下神級の君に近づけるのは相当な実力者か、汚れない心を持つ者か、信仰心の欠片もない者なのさ。絡まれたのなら、そいつはどうしようもない奴だったってだけ」
確かに名前は忘れたけど、俺に絡んできたのは碌でもないどうしようもない奴等ばかりだったな。
でも、あいつらいつの間にかいなくなってたんだよなぁ。
「それより、この子達は倒れたままでいいの?」
「そ、そうだった! よし、帰れ!」
「えぇえええ!? な、なんで僕が帰らないといけないの!?」
「だって、カミさんがいるから二人は倒れたんだろ? だから帰ってくれ。それと、しばらくウチに来ちゃダメだよ。また、人が倒れたら困るからね!」
「ま、待って待って! それは困る! オムライスが食べられなくなっちゃうよ! わかった! 僕が下神級まで存在を薄めるよ。それならいいでしょ?」
存在を薄めるってのがよくわからないけど、一応神様だし、流石にこれ以上無碍にするのは気が引けるな。
まぁ、他の人に迷惑かけないならいいか。
「じゃあ、その存在を薄めるってのやって。それと、帰らないんなら二人に紹介しないといけない。だから、君は僕の知り合いの高位の魔法使いだってする。それでいいかい?」
「僕はオムライスが食べられるなら何でもいいよ。いざもなったら記憶も消せるしね。ふぅ、良かった。オムライスが食べられないなら、この世界が滅んだ方がいいくらいだよ」
恐るべし、オムライスへの執念。
サラッと『記憶を消す』とか『世界が滅んだ』とか物騒な事言ってるし、そこまで食べたいのか?
ここはご機嫌をとっておいた方がいいかも。
「うん、存在を薄めたよ。これでこの二人なら気を失うことはないだろう。それじゃあ、二人を回復させるね」
カミさんの眼がキラッと光ったかと思ったら、二人を淡い光が包み込み、吸収されるように消えていった。
「うぅぅ……」
「あれ……? 私、どうして?」
「二人とも、目が覚めたか!?」
ゆっくり身体を起こす二人の顔には、さっきまでの具合の悪そうな感じはなかった。
ただ今の状況が把握できなくて、戸惑っているようだ。
いきなり神がやって来て、その余波で倒れたなんて言っても信用しないだろうし、どう誤魔化すべきかな。
「やぁ、二人とも大丈夫かい? ごめんよ。まさか、リョウ以外に人がいるなんて思わなくてさ」
ば、ばかっ!? まだどうやって誤魔化すか考えてないのに、勝手に二人に声をかけるなよ!
「貴方は?」
「僕はリョウの古い知り合いでカミルって言います。今日は久しぶりにリョウに会いに来たんだけど、扉が開いてて、中を見たら君達がリョウに剣を突きつけていたから、【眠りの弾丸】を打っちゃったんだ」
「【眠りの弾丸】即効性の睡眠魔法ですね。どうりで急に意識がなくなったわけです」
「リョウに聞いたら二人ともご友人だそうで、本当に申し訳ない」
「ううん、リョウちゃんに剣を向けてたのは確かだし、仕方ないよ。気にしないでください」
「そうですね。私達も冷静じゃなかったし、逆に良かったのかもしれません」
すごい説得力! 納得はやっ!
カミさん、やるじゃないか。
「お詫びと言ってはなんですが、リョウがご飯を振舞ってくれるそうです。お二人も一緒にどうぞ」
おい……なんか余計なことまで言ってない?
7
お気に入りに追加
457
あなたにおすすめの小説
幸子ばあさんの異世界ご飯
雨夜りょう
ファンタジー
「幸子さん、異世界に行ってはくれませんか」
伏見幸子、享年88歳。家族に見守られ天寿を全うしたはずだったのに、目の前の男は突然異世界に行けというではないか。
食文化を発展させてほしいと懇願され、幸子は異世界に行くことを決意する。
小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします
藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です
2024年6月中旬に第一巻が発売されます
2024年6月16日出荷、19日販売となります
発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」
中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。
数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。
また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています
この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています
戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています
そんな世界の田舎で、男の子は産まれました
男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました
男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます
そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります
絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて……
この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです
各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます
そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます
カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております
家ごと異世界ライフ
ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!
きのまま錬金!1から錬金術士めざします!
ワイムムワイ
ファンタジー
森の中。瀕死の状態で転生し目覚めた男は、両親を亡くし親戚もいない少女に命を救われた。そして、今度はその少女を助けるために男が立ち上がる。
これはそんな話。
※[小説家になろう]で書いてた物をこちらにも投稿してみました。現在、[小説家になろう]と同時に投稿をしています。いいなと思われたら、お気に入り等してくれると嬉しくなるので良ければお願いします~。
※※2021/2/01 頑張って表紙を作ったので追加しました!それに伴いタイトルの【生活】部分無くしました。
STATUS
項目 / 低☆☆☆☆☆<★★★★★高
日常系 /★★★☆☆ |コメディ /★★☆☆☆
戦闘 /★★☆☆☆ |ハーレム /★★☆☆☆
ほっこり /★★☆☆☆ | えぐみ /★★☆☆☆
しぶみ /★★☆☆☆
世界設定 /有or無
魔力 /有 | 使い魔/有
魔法 /無 | 亜人 /有
魔道具/有 | 魔獣 /有
機械 /無 |ドラゴン/有
戦争 /有 | 勇者 /無
宇宙人/無 | 魔王 /無
主人公設定
異世界転生 | 弱い
なぜかモテる | 人の話が聞けます
※これはあくまでも10/23の時のつもりであり、途中で話が変わる事や読んでみたら話が違うじゃないか!等もありえるので参考程度に。
この話の中では、錬金術師ではなく錬金術士という事にして話を進めています。
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた
甘党羊
ファンタジー
唐突に異世界に飛ばされてしまった主人公。
降り立った場所は周囲に生物の居ない不思議な森の中、訳がわからない状況で自身の能力などを確認していく。
森の中で引きこもりながら自身の持っていた能力と、周囲の環境を上手く利用してどんどん成長していく。
その中で試した能力により出会った最愛のわんこと共に、周囲に他の人間が居ない自分の住みやすい地を求めてボヤきながら異世界を旅していく物語。
協力関係となった者とバカをやったり、敵には情け容赦なく立ち回ったり、飯や甘い物に並々ならぬ情熱を見せたりしながら、ゆっくり進んでいきます。
異世界ソロ暮らし 田舎の家ごと山奥に転生したので、自由気ままなスローライフ始めました。
長尾 隆生
ファンタジー
【書籍情報】書籍2巻発売中ですのでよろしくお願いします。
女神様の手違いにより現世の輪廻転生から外され異世界に転生させられた田中拓海。
お詫びに貰った生産型スキル『緑の手』と『野菜の種』で異世界スローライフを目指したが、お腹が空いて、なにげなく食べた『種』の力によって女神様も予想しなかった力を知らずに手に入れてしまう。
のんびりスローライフを目指していた拓海だったが、『その地には居るはずがない魔物』に襲われた少女を助けた事でその計画の歯車は狂っていく。
ドワーフ、エルフ、獣人、人間族……そして竜族。
拓海は立ちはだかるその壁を拳一つでぶち壊し、理想のスローライフを目指すのだった。
中二心溢れる剣と魔法の世界で、徒手空拳のみで戦う男の成り上がりファンタジー開幕。
旧題:チートの種~知らない間に異世界最強になってスローライフ~
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!
父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
その他、多数投稿しています!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる