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第一章
元気な人間娘②
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心配してくれた事には感謝するけど、大きなお世話というものもある。
人には誰だって触れられたくない過去があるんだよ、娘さん。
「とにかく、俺はさっさと終わらせて帰りたいんだ。いいから、放っておいてくれ」
「でも……じゃあ、手伝ってあげる!」
彼女はそう言うと、荷物を地面に下ろして土を手で掘り返し始めた。
いや、そんな事をされたら逆に困るんだけど。
「別に手伝わなくていい。知ってると思うけど、ローハッツ採取の報酬は安いんだぞ? 労力に見合う報酬は……」
「じゃあ、何で君はやってるのさ?」
彼女がその大きな瞳でジッと俺を見つめた。
真っ直ぐで綺麗な眼だ。
純粋という言葉がふと頭に浮かぶ。
「報酬は安い、労力に合わないって言うなら、何で君はこの仕事を受けたの?」
「別に……関係ないだろ」
一瞬、言葉に詰まった。
まさか、馴染みのギルド職員に泣きつかれて断りきれなかったとは言えないからなぁ。
自分でもお人好しが過ぎると思う。
それに涙を見せられると、どうしても弱い。
何度もそれで騙されたってのに、本当、自分が情けないよ。
「ふふふっ、君は優しいんだね。きっと、困ってる人がいたから放っておけなかったんだろ? そういうの嫌いじゃないよ」
「別に優しくない。ただ、使い勝手がいいだけさ」
我ながら情けない事だ。
利用されているとわかっていて、利用されてるんだから。
もしかしたら、ミューさんも……
いかん、精神がやばい方向にいってる。
これはさっさと帰った方がいいな。
「とにかく貴女には関係ない事だ。手伝いはいいから、早く帰ってくれ」
「はいはい。じゃあ、もうちょっと手伝ったら帰るよ」
そう生返事をした彼女だったが、結局俺が掘るのを止めるまで止めず、最後まで手伝ってくれた。
やれやれ、報酬の山分けは面倒なんだけどなぁ。
「ちょっと、って言ってなかったか?」
「私にはこれで『ちょっと』なんだよ。見解の相違ってやつだね」
よく言うよ。
顔も服も土まみれ、額にも薄っすら汗が滲んでるじゃないか。
でも、手伝ってくれたのは事実だ。
「30㎏は採れた。報酬は山分けでいいな? だから、銀貨1枚と小銀貨5枚で……」
「いらないよ」
ギルドまで同行させるのも悪いと思って、先払いで金を渡そうとすると、彼女はそれを手で制した。
どういうつもりだ?
「いらないって、どういう事だ?」
「そのまんまの意味だよ。別に報酬はいらないよ。私が受けた依頼じゃないし、勝手に手伝っただけなんだからさ。じゃ、私はもう帰るね」
そう言いながら身体の汚れを簡単に払い落とし、彼女は荷物を拾いあげた。
マジで帰る気か?
逆のパターンなら何度も経験したことがあるが、手伝っておいて報酬を受け取らないなんて初めてだ。
こんな時はどうすればいいんだ?
「じゃあね。また、何処かで見かけたら声かけてよ」
「えっ!? な、なんだ!?」
彼女が別れを告げた瞬間、彼女の身体は森に溶け込むように消え、跡形もなくなっていた。
まるで最初からそこに誰もいなかったかのように。
残されたのは俺とローハッツの実が入った30㎏の袋だけ。
「一体、何だったんだ? あの子はいったい……」
俺は混乱した頭を整理しようと必死に思考を巡らせた。
彼女が消えた事にも驚いたが、俺が知らない魔法や能力があるのかもしれない。
彼女がカミさんのような超次元の存在ではなく、人間である事も感覚的にわかった。
ただ、何者だったのかはさっぱりわからない。
彼女はローハッツの実の依頼や冒険者に詳しかったし、彼女自身も冒険者である可能性は高い。
でも、俺はあんな可愛い冒険者がいるとは聞いたことがなかった。
はっきり言って、あの娘はかなり可愛いと思う。
もし、ツヴァイの冒険者ギルドに所属していたら噂にならないわけがないけど、少なくとも俺は聞いたことがない。
別の街のギルドの所属の線もあるけど、こんな辺鄙なローハッツしかないような所に、わざわざ別の街の冒険者が来るとは思えない。
となると、彼女は何者だったんだ?
深まる謎を解き明かせず、俺は悶々としながらも、とりあえず帰る事にした。
「ギルドに戻ったら……聞いてみるか」
他人と極力関わりたくない俺とは思えない独り言に、俺自身が一番驚いた。
本当にどういう風の吹き回しなんだがな。
でも、気になっているのも事実だ。
何故か気になるあの娘、俺は顔を思い出しながら、街へと向かった。
人には誰だって触れられたくない過去があるんだよ、娘さん。
「とにかく、俺はさっさと終わらせて帰りたいんだ。いいから、放っておいてくれ」
「でも……じゃあ、手伝ってあげる!」
彼女はそう言うと、荷物を地面に下ろして土を手で掘り返し始めた。
いや、そんな事をされたら逆に困るんだけど。
「別に手伝わなくていい。知ってると思うけど、ローハッツ採取の報酬は安いんだぞ? 労力に見合う報酬は……」
「じゃあ、何で君はやってるのさ?」
彼女がその大きな瞳でジッと俺を見つめた。
真っ直ぐで綺麗な眼だ。
純粋という言葉がふと頭に浮かぶ。
「報酬は安い、労力に合わないって言うなら、何で君はこの仕事を受けたの?」
「別に……関係ないだろ」
一瞬、言葉に詰まった。
まさか、馴染みのギルド職員に泣きつかれて断りきれなかったとは言えないからなぁ。
自分でもお人好しが過ぎると思う。
それに涙を見せられると、どうしても弱い。
何度もそれで騙されたってのに、本当、自分が情けないよ。
「ふふふっ、君は優しいんだね。きっと、困ってる人がいたから放っておけなかったんだろ? そういうの嫌いじゃないよ」
「別に優しくない。ただ、使い勝手がいいだけさ」
我ながら情けない事だ。
利用されているとわかっていて、利用されてるんだから。
もしかしたら、ミューさんも……
いかん、精神がやばい方向にいってる。
これはさっさと帰った方がいいな。
「とにかく貴女には関係ない事だ。手伝いはいいから、早く帰ってくれ」
「はいはい。じゃあ、もうちょっと手伝ったら帰るよ」
そう生返事をした彼女だったが、結局俺が掘るのを止めるまで止めず、最後まで手伝ってくれた。
やれやれ、報酬の山分けは面倒なんだけどなぁ。
「ちょっと、って言ってなかったか?」
「私にはこれで『ちょっと』なんだよ。見解の相違ってやつだね」
よく言うよ。
顔も服も土まみれ、額にも薄っすら汗が滲んでるじゃないか。
でも、手伝ってくれたのは事実だ。
「30㎏は採れた。報酬は山分けでいいな? だから、銀貨1枚と小銀貨5枚で……」
「いらないよ」
ギルドまで同行させるのも悪いと思って、先払いで金を渡そうとすると、彼女はそれを手で制した。
どういうつもりだ?
「いらないって、どういう事だ?」
「そのまんまの意味だよ。別に報酬はいらないよ。私が受けた依頼じゃないし、勝手に手伝っただけなんだからさ。じゃ、私はもう帰るね」
そう言いながら身体の汚れを簡単に払い落とし、彼女は荷物を拾いあげた。
マジで帰る気か?
逆のパターンなら何度も経験したことがあるが、手伝っておいて報酬を受け取らないなんて初めてだ。
こんな時はどうすればいいんだ?
「じゃあね。また、何処かで見かけたら声かけてよ」
「えっ!? な、なんだ!?」
彼女が別れを告げた瞬間、彼女の身体は森に溶け込むように消え、跡形もなくなっていた。
まるで最初からそこに誰もいなかったかのように。
残されたのは俺とローハッツの実が入った30㎏の袋だけ。
「一体、何だったんだ? あの子はいったい……」
俺は混乱した頭を整理しようと必死に思考を巡らせた。
彼女が消えた事にも驚いたが、俺が知らない魔法や能力があるのかもしれない。
彼女がカミさんのような超次元の存在ではなく、人間である事も感覚的にわかった。
ただ、何者だったのかはさっぱりわからない。
彼女はローハッツの実の依頼や冒険者に詳しかったし、彼女自身も冒険者である可能性は高い。
でも、俺はあんな可愛い冒険者がいるとは聞いたことがなかった。
はっきり言って、あの娘はかなり可愛いと思う。
もし、ツヴァイの冒険者ギルドに所属していたら噂にならないわけがないけど、少なくとも俺は聞いたことがない。
別の街のギルドの所属の線もあるけど、こんな辺鄙なローハッツしかないような所に、わざわざ別の街の冒険者が来るとは思えない。
となると、彼女は何者だったんだ?
深まる謎を解き明かせず、俺は悶々としながらも、とりあえず帰る事にした。
「ギルドに戻ったら……聞いてみるか」
他人と極力関わりたくない俺とは思えない独り言に、俺自身が一番驚いた。
本当にどういう風の吹き回しなんだがな。
でも、気になっているのも事実だ。
何故か気になるあの娘、俺は顔を思い出しながら、街へと向かった。
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