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第一章

元気な人間娘①

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 今日も今日とて素材採取。
 今日の依頼はローハッツって豆の採取という、極めて平凡かつ地味なものだ。
 本来はこんな1キロで、小銀貨1枚なんて安い依頼は受けないんだけど、断りきれなくて受けてしまった。
 ローハッツは酒場なんかでよく出る乾き物の定番で、採取自体もそこまで難しくないから、それこそ新人冒険者の仕事の定番でもあった。
 ところが、最近の新人は採取依頼に全く興味がないらしく、ローハッツ採取の依頼は滞ったまま、長い間ギルドの掲示板に貼りっぱなしになっていたそうだ。
 そして、ついに在庫が無くなってきた酒場の店主達が冒険者ギルドに猛烈に催促してきたそうだ。
 ギルドも新人達に声をかけてはみたそうだが、受ける人が見つからない。
 それで最終的に俺のところにお鉢が回ってきたというわけだ。
 
「まぁ、ローハッツは日本でいう落花生みたいなもんだし、俺も好きなんだけどね。ただ食べ過ぎちゃうから、自分ではあんまり受けたくなかったんだよなぁ」

 それに報酬も安いし、俺も断ろうかと思ってたんだけど、ミューさんに

『お願いします! 頼れるのは、もうリョウさんだけなんですぅ!』

 って、泣きつかれてしまい、断りきれなかったってわけだ。
 今も泣きすがるミューさんの顔がありありと思い出される。
 そして、周りの人達の白い目も……俺は何もしてないっての!
 
「はぁ……それにしても面倒だなぁ。最低20㎏で最高100㎏までだっけ? 20㎏で銀貨2枚だし、1日の稼ぎにはなるな。100㎏でも【収納】を使えば楽に運べるだろうけどやめとこう」

 ローハッツは落花生と同じように、地中に実をつけるから、採取のためには掘り返す必要がある。
 芋みたいに引っこ抜ければいいんだけど、実のなっている部分は千切れやすくて、無理に引っ張ると千切れて、実は地中に残ってしまう。
 だから、採取するには土ごと掘り起こさないと駄目なんだけど、これを20㎏分やるのは、はっきり言って手間だ。
 地面を掘り返す能力なんて無いし、手作業となると結構な重労働だ。
 もし、定期的にこの依頼をする事になったら、カミさんに頼んで、簡単に掘り返せる能力でも貰わないといけないなぁ。

「はぁ……愚痴っても仕方ないか。目的地に着いたし……よしっ! やるか!」

 ローハッツの群生地帯に到着した俺は、やる気を奮い立たせて、地面を掘り返し始めた。
 硬いとも柔らかいとも言えない地面をローハッツの実ごと掘り返す。
 なんて地味な作業だ。
 富と名声を夢見る冒険者が誰もやりたがらないのもわからないでもない。
 ほとんど農民と変わらない仕事だからな。
 それにしても、ずっと屈んでいると腰が痛くなりそうだ。
 もちろん、カミさんがくれた身体機能のおかげで、腰痛なんかにはならないけど、思わず腰を叩いてしまうのは、元アラフォーだったからだろう。
 しかし、生きていく上で、肉体とイメージに差があるってのも良くない気がする。
 この仕事が終わったら、一回自分の能力を再確認しておく必要があるな。
 
「よし、そうと決まればさっさと終わらせちゃおう」

「あれ? 君一人なの?」

 腰を叩きながら作業を続けていると、不意に後ろから声をかけられた。
 いかん、ローハッツ堀りに集中しすぎて気配に気づかなかった。
 
「ねぇ? 大丈夫?」

 俺が答えなかったのを心配したのか、相手が覗き込むように俺の顔を見た。
 茶色いショートボブで可愛らしい顔をした細身の人間種の女の子。
 見た感じは冒険者だけど、こんなところに何の用だ?
 この辺りにはローハッツしかないぞ。
 もしかして、後から同じ依頼を受けた冒険者か?

「むぅ……ねぇ! 大丈夫って、聞いてるんだよ! 返事くらいしてよ! イジワル!」

「ぬおっ! あ、ああ……悪い。大丈夫ってのが、何に対するものかわからなくてな。とりあえず、大丈夫だと思う」

 鼻が付きそうな程に顔を近づけてくるから、思わず顔を逸らしてしまった。
 なんか前にも似たような事があったような気がする。
 パーソナルスペースって知らないのか?

「こんなところに一人でいたら、心配するに決まってるでしょ!? 君は新人? いくらローハッツの採取でも一人は危ないよ。この辺りには魔物はいなくても、野生の動物はいるんだからね!」

 知ってる。
 でも、ちゃんと周期環境を確認してるから問題ないです。

「いい? 早く独り立ちしたいのはわかるけど、焦っちゃ駄目なの。最初はちゃんとチームを組んでやらないと、出来る依頼もできなくなっちゃうんだよ」

「チームは面倒だから嫌なんだ」

 確かに、多種多様なメンバーが揃うチームなら受けられる依頼は増えるだろう。
 だけど、良いことばかりじゃない。
 報酬は分配となるから、個人の収入は減るし、連携だのコミュニケーションだのと気遣いが増える。
 また、裏切りもあるかもしれない。
 あんな思いは二度と御免だ。
 あの絶望を味わうくらいなら、孤独だろうと1人の方がいい。
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