食うために軍人になりました。

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第六章

方面軍作戦会議室

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「これはどういう事ですかっ!?」

 東方方面軍の作戦会議室内に珍しいアリシアの大声が響いた。
 クールなイメージがあるアリシアの激昂した姿に列席している方面軍の幹部達は驚きを隠せない様子だ。
 それにしても、何もそこまで声を荒げなくてもいいと思うけどな。

「ヴォ、ヴォルガング少佐はこの作戦に不満があると言うのかな?」

「失礼ながら。とても良識ある作戦案とは思えません」

「私も同意見です」

 この場を取り仕切ってる東方方面軍の少将に堂々と反論したアリシアに同調したのはファンティーヌだ。
 こっちもいつもの口調と違って少し語気が荒い。
 やれやれ、少し釘を刺しておくか。

「少佐も中尉も少し落ち着け」

「ですが、中佐! 倉庫区画の火災被害が予想より大きくなり、避難や消火ために多くの人員が必要という事はわかります。しかし、だからと言ってシュナイデン中佐を小隊から外して単独行動させるというのは私には納得いきません!」

「そうですよぉ! だいたい東方方面軍からもっと人を出すべきですよぉ!」

「東方方面軍3万の内、現在サザントールに駐留しているのが2万。なのに出しているのは警備隊の5000だけっていうのはおかしいと思われませんか?」

 諌めたつもりがアリシアに続いてファンティーヌとイリアまでが異議を唱え始めてしまった。
 そう、アリシア達が怒っているのは俺の配置についてだった。
 小隊で行動する筈だったのに、急な作戦変更で俺だけ単独行動の指示が下ったのだ。
 俺としてはいつも単独行動だったし、別に構わなかったんだけど、この指令を聞いたアリシア達とクラリス達が大激怒。
 クラリス達は軍属ではないから作戦会議室に入れなかったが、他の4人が乗り込んで猛抗議したのだ。

「だ、だが……中央の情報が正しいとして万が一フェンドラが大軍で攻めてきたらどうする?」

「そうだっ! 分散させた兵力を各個撃破されたら目も当てられん! 予備兵力は必要なのだ!」

「では、その各個撃破の危険がある中で中佐を単独行動させる理由をお聞きしたい!」

「そうですよぉ! 自分達は安全なところで固まっておいて、援軍に危険な任務を押し付けるんですかぁ!?」

「武の道に反します! 作戦の再考を願います!」

 さすがの幹部連中もみんなの勢いに飲まれてるのか歯切れが悪い回答ばかりで、あからさまに狼狽している。
 帝国最強の方面軍の幹部としてはもう少し威厳を持ってほしいもんだ。
 それにしても気になる人が1人いる。
 座って腕を組んだまま何も喋らないクリスティーヌだ。
 こういう時はクリスティーヌが一番毒を吐きそうなんだけど、何故か会議に乗り込んで座ってから黙ったままだ。
 怒っていないわけではない。
 めっちゃ不機嫌な顔をしているからな。

「い、いい加減にしないか! ここは東方方面軍なんだぞ!? お前達帝都の軍人が出しゃばるでない!」

 おいおい。
 しびれを切らしたのか何だか知らないけど、その言い草はないんじゃないか?
 ここは俺が……

「そうですわよね。出しゃばられたら困りますものね」

 クリスティーヌがやっと口を開いたかと思ったら……なんだろう、急に寒気がする。 
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