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第五章
収束
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子爵が担架で運ばれていった。
覚悟の上で戦ってるんだし、負傷する事も当たり前、恨みなんてもっての外だ。
ただ、それでも世話になった人が全身穴だらけになって運ばれている姿を見ると、気分が逆立ってしまう。
俺もまだまだ修行が足りないな。
よし! 気持ちを切り替えよう!
相手の分析もしないといけないしな。
特にあの子爵の身体を貫いた光は一体なんだったのか。
指が光った瞬間には貫かれていたさ、このままだと次は俺が穴だらけにされて運ばれる羽目になる。
「器用な女がいたものだな。あんな魔法の使い方は初めて見た」
「ん? ロビンはあの魔道士が何をしたのかわかるのか?」
「まぁな」
マジか?
俺の眼には捉えられなかったあの光の正体をロビンの眼は捉えていたのか。
獣人の感覚は人間より遥かに優れているらしいけど……なんか悔しいな。
「あの女がやったのは魔力の収束だ。魔力を指先の一点に収束させて圧縮し、威力と貫通力を飛躍的に向上させたものを超高速で撃ち出したんだ。斧男はそれに貫かれた」
「魔力そのものを撃ち出すなんて可能なのか? そんな事聞いた事もないぞ?」
「魔力の収束など簡単には出来ん。宮廷魔道士級でも無理だろうな。俺も肉眼で見なければ信じられない超高等技術。魔力操作を極めていると言ってもいいだろう。甘く見ない方がいい」
さっきのを見て甘く見る奴がいたらそいつは戦士失格だ。
斧術の達人である子爵を一方的に倒したんだ相手に油断なんかできるわけがない。
……ところで、さっきから気になってるんだけど何でロビンがこんなに親切なんだ?
俺の考えるこいつなら『なんだ? 今のが何なのかわからないのか? これだから貴族のボンボンは……せいぜい無様な姿を晒すがいい!』とか言いそうなんだけど……
「何か言いたそうな顔だな」
うっ……また顔に出てたか。
これだけは直らんな、
「いや別に……色々教えてくれて助かる」
「……これは詫びだ」
「詫び?」
「俺をお前を腐った貴族だと罵った。しかし、お前は違った。勇敢なる戦士、勇者だった。勇者には敬意を示さねばならんからな」
だから態度が変わったってわけか。
潔いというか切替が早いというか、まぁネチネチ粘着されるよりは百倍マシだけど。
「それで勝算はあるのか?」
「わからん」
「対策は?」
「それもわからん」
「真面目に考えろ! お前は俺に勝った男なんだぞ! 次の試合であっさり負けるなど許さんからな!」
「何でだよ! お前には関係ないだろ! 負ける時は負けるわい!」
「お前を倒すのは俺だ! 他の者に負けるなど許さん! 死んでも勝て!」
「アホか! 死んだら元も子もないだろ! だいたいお前とは二度と戦わんからなっ!」
「なんだとっ! この臆病者が! 今、この場でその性根を叩き直してくれるわ!」
「やるってのか!? 上等だ! この野郎!」
ロビンが俺の胸ぐら掴んできたので俺も掴み返す。
今度はボコボコにしてやる!
「何やってんだい! このガキどもが!」
怒声と共に頭を叩かれた。
っていうか拳で殴られた。
っていうか……
「痛ってぇええええてえええええ!!」
「ぐぉおおおお! い、いきなり何をするか! この……っ! うっ…………」
ロビンが相手を見たまま固まっている。
視線の先にいたのはオリオール様、ローゼンハイム様、そしてなんでテラーズ?
覚悟の上で戦ってるんだし、負傷する事も当たり前、恨みなんてもっての外だ。
ただ、それでも世話になった人が全身穴だらけになって運ばれている姿を見ると、気分が逆立ってしまう。
俺もまだまだ修行が足りないな。
よし! 気持ちを切り替えよう!
相手の分析もしないといけないしな。
特にあの子爵の身体を貫いた光は一体なんだったのか。
指が光った瞬間には貫かれていたさ、このままだと次は俺が穴だらけにされて運ばれる羽目になる。
「器用な女がいたものだな。あんな魔法の使い方は初めて見た」
「ん? ロビンはあの魔道士が何をしたのかわかるのか?」
「まぁな」
マジか?
俺の眼には捉えられなかったあの光の正体をロビンの眼は捉えていたのか。
獣人の感覚は人間より遥かに優れているらしいけど……なんか悔しいな。
「あの女がやったのは魔力の収束だ。魔力を指先の一点に収束させて圧縮し、威力と貫通力を飛躍的に向上させたものを超高速で撃ち出したんだ。斧男はそれに貫かれた」
「魔力そのものを撃ち出すなんて可能なのか? そんな事聞いた事もないぞ?」
「魔力の収束など簡単には出来ん。宮廷魔道士級でも無理だろうな。俺も肉眼で見なければ信じられない超高等技術。魔力操作を極めていると言ってもいいだろう。甘く見ない方がいい」
さっきのを見て甘く見る奴がいたらそいつは戦士失格だ。
斧術の達人である子爵を一方的に倒したんだ相手に油断なんかできるわけがない。
……ところで、さっきから気になってるんだけど何でロビンがこんなに親切なんだ?
俺の考えるこいつなら『なんだ? 今のが何なのかわからないのか? これだから貴族のボンボンは……せいぜい無様な姿を晒すがいい!』とか言いそうなんだけど……
「何か言いたそうな顔だな」
うっ……また顔に出てたか。
これだけは直らんな、
「いや別に……色々教えてくれて助かる」
「……これは詫びだ」
「詫び?」
「俺をお前を腐った貴族だと罵った。しかし、お前は違った。勇敢なる戦士、勇者だった。勇者には敬意を示さねばならんからな」
だから態度が変わったってわけか。
潔いというか切替が早いというか、まぁネチネチ粘着されるよりは百倍マシだけど。
「それで勝算はあるのか?」
「わからん」
「対策は?」
「それもわからん」
「真面目に考えろ! お前は俺に勝った男なんだぞ! 次の試合であっさり負けるなど許さんからな!」
「何でだよ! お前には関係ないだろ! 負ける時は負けるわい!」
「お前を倒すのは俺だ! 他の者に負けるなど許さん! 死んでも勝て!」
「アホか! 死んだら元も子もないだろ! だいたいお前とは二度と戦わんからなっ!」
「なんだとっ! この臆病者が! 今、この場でその性根を叩き直してくれるわ!」
「やるってのか!? 上等だ! この野郎!」
ロビンが俺の胸ぐら掴んできたので俺も掴み返す。
今度はボコボコにしてやる!
「何やってんだい! このガキどもが!」
怒声と共に頭を叩かれた。
っていうか拳で殴られた。
っていうか……
「痛ってぇええええてえええええ!!」
「ぐぉおおおお! い、いきなり何をするか! この……っ! うっ…………」
ロビンが相手を見たまま固まっている。
視線の先にいたのはオリオール様、ローゼンハイム様、そしてなんでテラーズ?
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