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第五章
逃げるわけない
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先ずはメイドを人質にとる。
そうなりゃ男は手出し出来なくなる。
そして、男が殺されるのを見てメイドは恐怖に怯え、俺の言うことを素直に聞くようになる。
メイドからお宝の在処を聞き出して、俺はメイドとこの屋敷を安全に逃げ出す。
その間にメイドは俺に惚れ、結婚。
その後、俺達はお宝を元に商売を始め、俺は一躍大富豪となる!
完璧な計画だ。
俺にしかできない最高の未来が待っているんだ!
「こいつ、なんか薄笑い浮かべて気持ち悪いわ。クロード、誰だかわかった?」
「ザード……でしたよね? えーと、ああ、ありましたよ。ザード上等兵、元ライエル領軍の兵士ですね」
男が書類をめくりながら俺の経歴を話した。
あいつが俺の名前なんか呼ぶから、素性がバレたじゃないか!
本当に使えない奴め!
足を引っ張ってばかりで、俺が殺してやりたいくらいだ!
「ライエル領軍? それって旦那様の御友人のカール様の元領兵ってこと? 流石に殺すのはマズいんじゃない?」
「いえ、ライエル領軍と言っても今ではなく先代ですよ。ダニート・フォン・ライエルが当主の時に領地の村で略奪暴行を繰り返したそうです」
「おい! そこの使用人! 人聞の悪いことを言うな! 俺は上官の命令に従っただけだ! それなのに査問にかけられて、軍を追放させられたんだ! あんなの不当判決だ!」
「あなたは必要以上に村人を傷つけ、時には命令以外でも金品を巻き上げていたそうですね? それで追放だけとはむしろ甘いくらいです」
「ふざけるな! 俺は軍人として昼夜を問わずに村を守ってやってるんだぞ! その俺に感謝して女や金を差し出すのは当然じゃないか! それがわからないクズにはそれ相応の仕置きをしてやっただけだ! それのどこが悪い! 俺は間違ってない!」
そうさ! 俺は正しいんだ!
間違ってるのは俺以外の無能な奴等だ!
この男もこのメイドもなにもわかっていない!
俺を最高司令官にすれば、すぐに共和国も連邦も王国だって支配できる!
俺なら出来るんだ!
「……クロード。私は下がらせてもらうわ」
メイドが俺を迂回して男の背後へと移動した。
どうやら怖気ついたようだな。
当然だ。
俺に逆らえばどうなるかわかったんだろう。
まだ見所がある方だ。
仕方ない、愛人くらいにはしてやるか。
「クラリス、よろしいのですか?」
「ええ。だって……私だったらすぐに殺しちゃうから!」
な……何を言っているんだ?
すぐ殺しちゃう?
で、で、出来るわけない!
お、俺が本気を出せばこんな奴等一瞬で殺せるんだぞ!
な、なのに……なんでこんなに震えるんだ!?
「やれやれ。仕方ありませんね。旦那様は好まれないと思いますが、私も少し腹が立ちましたし、少し昔を思い出してみましょう」
「ひっ! ち、近づくな! 近づいたら殺すぞ? お、お前もメイドも……お。お前らの主人だって殺すぞ!?」
「そうですか。あなたはそこまで言うのですね……クラリス、気が変わりました。前菜かサラダで終わらそうかと思いましたが、今日はフルコースにしましょう」
「久しぶりのフルコースね。でも、それが相応しい……ううん、それ以外にはないわ」
「では、ザード元上等兵。準備はよろしいですか?」
「う、うわぁああぁあああああ!」
悪魔の風体をし、天使の笑顔を浮かべた男が近づいてくるのを見て、俺は逃げ出した!
違う!
これは戦略的撤退だ!
俺は逃げたんじゃない!
逃げるわけがない!
だから、俺の肩を掴んだその手を離してくれぇえええええええ!
そうなりゃ男は手出し出来なくなる。
そして、男が殺されるのを見てメイドは恐怖に怯え、俺の言うことを素直に聞くようになる。
メイドからお宝の在処を聞き出して、俺はメイドとこの屋敷を安全に逃げ出す。
その間にメイドは俺に惚れ、結婚。
その後、俺達はお宝を元に商売を始め、俺は一躍大富豪となる!
完璧な計画だ。
俺にしかできない最高の未来が待っているんだ!
「こいつ、なんか薄笑い浮かべて気持ち悪いわ。クロード、誰だかわかった?」
「ザード……でしたよね? えーと、ああ、ありましたよ。ザード上等兵、元ライエル領軍の兵士ですね」
男が書類をめくりながら俺の経歴を話した。
あいつが俺の名前なんか呼ぶから、素性がバレたじゃないか!
本当に使えない奴め!
足を引っ張ってばかりで、俺が殺してやりたいくらいだ!
「ライエル領軍? それって旦那様の御友人のカール様の元領兵ってこと? 流石に殺すのはマズいんじゃない?」
「いえ、ライエル領軍と言っても今ではなく先代ですよ。ダニート・フォン・ライエルが当主の時に領地の村で略奪暴行を繰り返したそうです」
「おい! そこの使用人! 人聞の悪いことを言うな! 俺は上官の命令に従っただけだ! それなのに査問にかけられて、軍を追放させられたんだ! あんなの不当判決だ!」
「あなたは必要以上に村人を傷つけ、時には命令以外でも金品を巻き上げていたそうですね? それで追放だけとはむしろ甘いくらいです」
「ふざけるな! 俺は軍人として昼夜を問わずに村を守ってやってるんだぞ! その俺に感謝して女や金を差し出すのは当然じゃないか! それがわからないクズにはそれ相応の仕置きをしてやっただけだ! それのどこが悪い! 俺は間違ってない!」
そうさ! 俺は正しいんだ!
間違ってるのは俺以外の無能な奴等だ!
この男もこのメイドもなにもわかっていない!
俺を最高司令官にすれば、すぐに共和国も連邦も王国だって支配できる!
俺なら出来るんだ!
「……クロード。私は下がらせてもらうわ」
メイドが俺を迂回して男の背後へと移動した。
どうやら怖気ついたようだな。
当然だ。
俺に逆らえばどうなるかわかったんだろう。
まだ見所がある方だ。
仕方ない、愛人くらいにはしてやるか。
「クラリス、よろしいのですか?」
「ええ。だって……私だったらすぐに殺しちゃうから!」
な……何を言っているんだ?
すぐ殺しちゃう?
で、で、出来るわけない!
お、俺が本気を出せばこんな奴等一瞬で殺せるんだぞ!
な、なのに……なんでこんなに震えるんだ!?
「やれやれ。仕方ありませんね。旦那様は好まれないと思いますが、私も少し腹が立ちましたし、少し昔を思い出してみましょう」
「ひっ! ち、近づくな! 近づいたら殺すぞ? お、お前もメイドも……お。お前らの主人だって殺すぞ!?」
「そうですか。あなたはそこまで言うのですね……クラリス、気が変わりました。前菜かサラダで終わらそうかと思いましたが、今日はフルコースにしましょう」
「久しぶりのフルコースね。でも、それが相応しい……ううん、それ以外にはないわ」
「では、ザード元上等兵。準備はよろしいですか?」
「う、うわぁああぁあああああ!」
悪魔の風体をし、天使の笑顔を浮かべた男が近づいてくるのを見て、俺は逃げ出した!
違う!
これは戦略的撤退だ!
俺は逃げたんじゃない!
逃げるわけがない!
だから、俺の肩を掴んだその手を離してくれぇえええええええ!
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