食うために軍人になりました。

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第五章

要注意人物

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「リクト・フォン・シュナイデン中佐。ウォーレイク元帥府へ着任しました。よろしくお願いします」

 着任の挨拶を2年前と相変わらない優しい顔で受け入れてくれたのは、帝国に4人しかいない元帥の1人、ジークフリード・フォン・ウォーレイク閣下だ。
 閣下にお会いするのは2年ぶりだけど、全く変わっておられないようだ。

「シュナイデン中佐。2年間の高等士官学校お疲れ様でした。見違えるほどに成長されていて、少し驚いてしまいましたよ」

「ありがとうございます。閣下や陛下の御力になれるよう全力で任務にあたる所存です」

「それは心強いですね。ですが、差し当たって今のところ重要な任務はありません。明後日から開催される四勲章競合戦に全力で挑んでください」

 四勲章競合戦もいよいよ明後日か。
 ヴォルガング少佐やリンテール中尉と戦えるのは正直楽しみでもある。
 南方や北方で鍛えられたんだから、きっと強くなってるんだろうな。

「今回の競合戦では顔見知りも多く参加されていますが、一切の手心は不要です。命を奪ってはいけませんが、甘い考えだけは禁物ですよ。特にレオン・テーニセン、ゴットフリード・フォン・バランディン、ヴィクトール・コクトー、フィンリー・フォン・オリオールの4名の実力は折り紙付きです。決して油断しないように」

 競合戦への参加が決まってからは嫌というほど聞いた名前だな。
 バランディンって人は前回の競合戦であのローゼンハイム閣下を倒した人だし、他の人達も同格と考えたら油断なんてする暇ないな。

「全力で戦い抜く事を誓います!」

「お願いします。それともう一点。少し気になる人物がいるのでそちらへの警戒も怠らないようにしてください」

「気になる人物……ですか?」
 
「はい。今回の参加者について不審な点があったので、調べてみたのですが唯一詳細がわからなかった人物がいるのです」

 詳細がわからない?
 そんな事があり得るのか?
 参加者は全員が各方面軍司令官の推薦で選ばれている。
 だから得体の知れない人物が参加する事は不可能なはずだ。

「調べた者の力量不足や怠慢という事は?」

「ありません。確かな実力のところにお願いしていますし、公的私的はもちろん、少々グレーな手段も使って調べていますが、全て同じ結果が出ています」
 
 ウォーレイク閣下がそこまで言われるなら、やっぱりその人物自体が怪しいって事になるか。
 にわかに信じられない話だけどな。
 
「その人物とは誰ですか?」

「西方方面軍司令官からの推薦のグレーテ・グルントマンです」









 
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