食うために軍人になりました。

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第四章

2年の始まり

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「したがって、帝国は王国からの独立を成し得たが、独立したばかりの小国に対して他国の対応は……」

 あぁ……頭がボーッとしてくる。
 別に嫌いな話じゃないんだけど、こうも講義ばかりだと頭の回転が鈍くなるというかなんというか……とにかくまともに働いてない気がする。

「……そこで国の四方を英雄に守らせた事が、今の四辺境伯の始まり……聞いているのか? シュナイデン少佐?」

「はい、聞いております。教官殿」

 実際ちゃんと聞いてはいた。 
 だが、身体から自然と気が抜けていくような感覚は俺にはどうする事もできない。
 別にサボりたいわけじゃないんだけど、どうしても身が入らないのだ。

「シュナイデン少佐。退屈な話かもしれんが、建国の歴史を学ぶことは大事な事だ。過去の事例から新たな発見に繋がることもあるのだぞ」

「それは理解しているのでありますが、もう2週間も座学ばかりで……小官は少し気が滅入っているのであります」

 他の上官だったら怒られそうな発言だが、ヴォルガング教官は苦い顔をするだけだった。
 なんせ俺は朝から夕方まで高等士官学校で講義、仮屋敷に帰ってからは貴族の生活を学ぶための生活を送っている。
 作法だのなんだのと堅苦しい事ばかりで気の休まる暇もないのだ。
 それを哀れに思ったのか、教官は多少の弱音は聞き逃してくれるようになっていた。

「少々疲れが見えるな。しかし、努力しているのは貴官だけではないのだぞ。あの4人も今は壮絶な修行を繰り返していると聞く」

「あの4人? ヴォルガング少佐達の事でありますか?」

「そうだ。南方方面軍に配属となり、あのローゼンハイム閣下から直々の指導を受けているのだ。アリシアとイリアは魔剣使い、クリスティーヌとファンティーヌは古代魔法使いとして日夜訓練に明け暮れているそうだ」

 なんて羨ましい話だ。
 是非俺もそっちに混ぜてもらいたいものだ。
 それにローゼンハイム閣下は一度は手合わせ願いたい御仁でもある。
 なんとか南方にいく手段はないものか……

「貴官は2年間ここでしっかり学んでもらうからな。何処にも行かせんぞ」

「うっ……」

「本当に顔に出やすい男だな。そんな羨ましそうな顔して考えていれば誰にでもわかるぞ? あの娘達も頑張っているのだから、君もその頑張りに応えてみてはどうか? それに浮ついていると足元をすくわれかねんぞ?」

「それはどういう事でしょうか?」

「ローゼンハイム閣下の指導によって、あの娘達が飛躍的に強くなる可能性があるという事だ。贔屓目無しにしてもそれぐらいの潜在能力があると私は見ている」

 確かにあの4人は強いと思う。
 優秀な師匠に鍛えられたら化ける可能性はある……か。

「帰ってきた時にあの娘達をがっかりさせないでもらいたい。貴官にはこの一年は知識と教養を身につけてもらうが、残り一年は完全な実践戦闘訓練を行う。私やウルリッヒだけでなく、魔物や軍隊を相手にも戦ってもらうからな」

「ほ、本当でありますかっ!?」

「戦術、戦略など大規模戦闘に向けた訓練を実践形式で行うつもりだ。はっきり言って個人にここまでするのは異例中の異例。期待に添えるよう励む事だ」

 おおおおっ! 
 ちょっとやる気出てきたかも!
 よし、一年はなんとか堪えよう!
 あとの一年は思いっきり暴れてやる!
 それに少佐達が帰ってきた時に落胆されるのも嫌だしね。
 この2年間、鍛えまくってやるぞ!
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